解説
〈UFOに関する資料〉
✕✕市では半年前から「革命軍」というカルト団体の存在が確認されている。その団体が掲げる目標は「正気な人間の救済」。彼らは、この世に適合出来ている、いわゆる“普通の人”こそ狂人であり、その狂人が正気な人間を苦しめている、として、近隣の精神病院を襲撃し患者に武器を持たせた上で解放するという行為を繰り返している他、“救済キャンプ”と名付けた休憩所のようなものを不定期に設置し匿名の希望者に無償での安楽死を提供している。通称“UFO”。主に民間ではそう呼ばれる。✕✕県警はこれを取り締まろうと警備を強化しているが、未だ解決には至っていない。
〈✕✕県警察 捜査メモ〉
岐路根氏は愛着障害であっただろうと診断されている。これは幼少期に受けた虐待に由来すると推察されるが、本人はそれに関する一切の記憶を無くしている。全検査IQは高く大企業に就職するも、人間関係を適切に築くことが出来ず職場を退職。しばらく職が無い状態が続き、上京していたものの貯金が尽きて実家に戻り引きこもる日々を過ごす。その後発症した二次障害から精神病院に入院することが決まるが、幻覚症状に苛まれ逃走、捜査が行われたものの行方が分かっていない。
〈✕✕新聞より〉
行方不明となっていた岐路根氏が先日、✕✕市✕✕沖で見つかった。第一発見者は岐路根氏の友人であった。死体は頭部が著しく損傷しており、耳と一部の脳は未だ見つかっていない。
〈✕✕病院 心療内科〉
担当:✕✕
患者番号:✕✕✕✕✕✕
患者名:岐路根蜂助
生まれながらの感覚過敏で、特に聴覚が著しく過敏であった。加えて発達障害の傾向も見られ、言語性IQは著しく高いものの動作性IQとの差が広く、理解はすれど行動に移せないタイプで、彼の母親はこれに耐えきれず岐路根を虐待、岐路根は愛着障害を発症し、人と適切な関係を築くことが困難になる。本人はこれを気にしており、人と関係を築こうとした経験が何度も見られる。しかしそのどれもが失敗に終わり、挫折経験が積もった岐路根は、その孤独さと惨めさから自殺願望を持つようになる。これがこの病院に入院することになった経緯だと推定される。
ミミヒモ海月記(カイゲツキ) メメ宮 景斗 @keito_mememiya
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