火事

バブみ道日丿宮組

お題:苦し紛れの火事 制限時間:15分

火事

 覚醒とは誰しもが持ってる強さ。それを発揮できるかどうかで生死の結果が大いに異なる。

「……お兄ちゃん」

 世間一般ではそれを火事場のクソ力という。

 あの時……火事になった家に取り残された時ーー胸に大きな穴が空いてるのにも関わらず、家から私を救い出してくれた。

 私はその後すぐ気を失ったからお兄ちゃんがどうなったかわからない。私は燃えてる家の外で一人だけ眠ってたという。

「……」

 私はお兄ちゃんがいなくなった新しい家で一人暮らしてる。お父さんもお母さんは即死だったらしい。柱の下敷きで原型をとどめてなかったと医者はいってた。

 多大な保険が両親にかかってことから無理心中をしようとしたんじゃないかと囁かれてる。そのために、兄は金を持って逃げたとメディアは報じてる。

 保険は私とお兄ちゃんで半分。メディアが報じてるのには無理がある。莫大であっても、あの瀕死だった兄が逃げられるはずがない。

 幽霊を見たのだと精神科医が何度も口を酸っぱくして言ってくる。薬も増えた。火事……火事のせいで私は全てを失った。

 でも、また火事になったらお兄ちゃんがどこから助けてきてくれる。そんな気がしてならない。

「……掃除しよ」

 家にはお兄ちゃんの部屋もある。

 お母さん、お父さんの部屋もあるけど……こっちは戻ってこない。ただの私のわがままで作ってもらった。

 しらないおじさん、しらないおじさんがいろんな話を持ってくるけど、私は首を縦に振らない。家族は4人。それ以外は信じない。

 だから、メディアも、精神科医も、あの時火事で助けてくれた救急隊員の人の言葉は信じない。

 お兄ちゃんは逃げたんじゃない。何か理由があって私のもとから離れたんだって、そう思ってるの。

 そうしなきゃ……そうしなきゃ……もう私もあの時燃えてしまえばよかったという闇に包まれそうになる。

 明るい火事、暗い火事。

 そんなものはないのに……私は火事を望んでしまう。


 だから、隣の家が燃えてるのを黙ってみてる。

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火事 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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