壊れること、泣く事
手足の再生が終わったところで声がかけられた。
「すげーな、直系の治癒能力って言うのは」
猛も足を引きずってくる。胸からも血を流してた。隣に座るのをみて私は彼の胸を舐めた。それごとに傷が塞がっていく。
「風刃、先に自分の傷を治せ。俺はもつ」
私は自分の傷をいっきに治すと彼の体に手を当てて頭の天辺から足先まで傷ついてるのをやっぱりいっきに治した。
「舐める必要はないんだ。すげー感じたのに」
「あれは無意識でよそ事考えてたから」
「風鈴のことか。お前が遠吠えをあげたとき悲鳴そのものだったから死んだとは思ったよ。それよりもお前が心配だった。人型になって足引きちぎられながらも操は守ったんだな」
「別に猛の為じゃないし、あんな連中にやられるくらいなら死んだほうがまし」
「嘘でもいいから俺のためっていえ、風鈴が死んで神経がこわれるんじゃないかと思った。連中のいいようにされて身も心もぼろぼろじゃないかと思った。
でもお前意外と冷静だ死んだ風鈴に治癒かけてるくらいですんだ。でもそれって正常じゃない。一度壊れちまえ」
そういうと猛はのしかかってきた。逆らうに逆らえない力、疲労もあいまって私は猛に蹂躙された。
「ひどい、風鈴の死んだ場所でやっと自分の身を守りぬいた場所で猛が私を滅茶苦茶にするなんて…」
「別れたいなら別れてやる。でも今は泣けよ。犯されたことに死んだことに襲われたことにお前は涙一つながしちゃいないじゃないか」
その言葉を聞いて私の涙は溢れ出した。何に泣いてるのかわからない。ただただ大声を出して泣いた。泣き疲れてきて声も涙も枯れると猛が唇を合わせてくる。二度目は自然に受け入れた。さっき抵抗したのが嘘のようにただ静かに。
「帰るか。服がないな」
「私はある」
そう言うと上着のチャックを閉めスカートをはく。
「ちゃっかりしてるな。」『上に乗れ』
猛が獣化していう。わたしは上に乗りしがみついた。狼が朝日が昇りかける中駈けて行く私を乗せて。
「日が昇っても帰ってこなかったら探しに行こうと話してた所よ」
「ごめんなさい。少しその」
「おれが抱いて泣かして、抱いた」
ママが睨みつける。はっきしいってきょわい。
「うちの女系を抱く意味はは承知してて?」
「してるつもりだよ。できてたら責任は取る。そうじゃなくてもいずれは…」
「狼刃は?いいの彼で」
私は戸惑った。一年半を振り返ってみる。嫌い?好き?無理やりの初体験。その後の優しさ。彼の態度は何?せっかく上手くやっていけると思ったのに私の見込み違いだった?別れた方がいい?
涙がまた溢れ出した。いやだ人前で泣くのはらしくない。なのに止まらない。猛が口付けしてくる。親の前なのに!抵抗するが抑え込まれる。こんな無理やりでも相手に反応しそうになる。半年間受け入れてきたせいだ。
「涙はやんだろう」
びくんと反応する私。本当だ。今抵抗しようとするほーへ集中して。母親の手が伸びる。顔をなでられてやさしく笑う母が居る。
「多少、乱暴みたいだけど狼刃には丁度いいわね。女に戻ってる。ただの恋する少女に…好きな人と一緒になりたいからと兄たちよりも強くなって見せた貴方が、いずれ統括者にならないからと覚悟を決めてそれでも割り切れなくて荒れてた貴方が
ここにはいない。貴方の涙なんてみたの何年ぶりかしら」
「ママ…猛」
私は交互に顔をみやる。私だけわけわからない感情の渦に流されてた。ただ母が猛の存在を認めたことにより私の選択肢は無くなった。たった一ヶ月の間に婚姻と婚約者発表が行われ落ち着くのに3ヶ月ほどかかった。
再び私の部屋で私は自分の戸惑いを正直に話す。すると猛はため息ついて
「俺でもあの数を相手にするのは命がけだった。だからかなり興奮もしてた。一番はあの状況でも泣かないお前が居た。心を許しかけた俺に乱暴されればさすがに泣くだろうとは想像がついた。
お前には泣くことが必要だと思ったんだよ。後のは俺の欲だ。他の男にとられるのは我慢できなかったし、お前は泣いて弱ってた。今度は逆に落ち着かせる必要があった。家の前で泣き出したのはお前が受け入れたくない乱暴な男を受け入れちまったからだ。
なんで受け入れたか解らずに涙のスイッチが入ったんだよ。風鈴が死んで身を犠牲にしてまで守った身をあっさり蹂躙された後だったからな。口付け一つで涙を止められる自信はあった。お前は気付いてないみたいだが完全に惚れられてるのわかってたしな。
お前俺を舐めたろう。始めてのことでわからないかもしれないがあれは求愛の証だ。なまじ治癒能力があるせいでわかってなかったみたいだけど、おれは気付いてた。
だから無理やりでも最悪はおきないと思ってたよ」
「私はいつから…」
「誕生日の日だよ自分から求めたろーが、おれはその日を待ってたから忘れない」
私は生き物の急所である首筋の脈動を舐めあげる。甘んじて受れていた猛が逆に私を舐め上げてくる。ゾクゾクッとしたものが背筋を走る
そのまま深い口付けを交わす。猛の手か服にかかっても何も言わずに口付けに夢中になっていた。
遠吠えの聞こえる日 御等野亜紀 @tamana1971
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