連れ帰れず

「風鈴ちゃんが家出したらしいの。あさから帰ってこないって」

「今度はなにやらかしたのよ風鈴は」

「獣型で生活している獣人の話をしたらどうしてなのか一度聞いてみたいって独り言のようにそんなこと言っていたらしいわ。冗談だろうと思ってたけど」


「まずいわね。連中は夜になると動き出す。殺されかねない」

「山は三つある手分けして探すしかないか。俺昇り山行く、狼刃、双子山頼む」

「お兄ちゃん二人を貸してママ。猿山をお願い」


「気をつけなさい。獣化してる連中は弱くはないわ。戦う前に知らせて。連れてきたらお仕置きじゃすまない。一族にさらすからそのままうちへ運びなさい」

「ママ!そこまでしなくとも。まだ13歳よ」

「何度も危険を冒してるわ。今度は直系が直接動くのよ。その重大さを知らせねばならないの」


「とにかく日が暮れちまう。そんな話は後だ風鈴を探すぞ」

お兄ちゃん達と猛と私は急ぎ山に向った。


中腹まで来る風鈴の匂いがする。やっと捕まえた。遠吠えをする。ここにいると。

日は沈んだ急がないとこの山に獣化した獣人たちがいないことを祈った。が、運がない。きっちり現れた。私は上着とスカートを脱ぎ獣型化する。


戦闘が始まった。ほとんどは雑魚。一発で首を食いちぎってく。殺しの経験は始めてだったが手加減してては風鈴を守れない。それでも時々離される。その間に聞こえる悲鳴。風鈴!慌てて戻って食いつく連中を殺していく。思ったより数が多い。


途中から風鈴が人間なのがばれた。獣化してる連中には犯す対象にもならない食い物だ。殺される。できる限り離れない様に戦おうとすると不利になる引きずり込まれる。中央で足四本をやられ急所をはずして体中食いつかれる。それが一匹の鳴き声とともに皆四散した。


あれがボスか。私は人型に戻った。連中は交尾しかできない。犯されるぐらいなら死んだほうがましだ。足を食いちぎられる。動けない私はただ歯を食いしばって耐えた。傷をつけては『獣化しろ!』と命令してくる。ごめんだった。


遠吠えが聞こえた。あれは猛の声。間に合うか、殺されるか。ボスはとりあえず邪魔者を消しに言ったみたいだ。今のうちに風鈴を避難さ・せ・・・・私は悲鳴に近い遠吠えをあげた。手も足も引きちぎられ首から大量の血を流す。とにかく治癒をかけるどうにか助かって……


その行動を止めたのは長兄だった。次兄が足と手を拾ってくる。食い尽くされほとんど骨だけで…

「狼刃、冷静になれ。もう死んでる。生きてたとしても手足無くして生きるのは過酷だ。死んでよかったんだよ。この子は、生きて帰れば仲間にさらされる」


「兄貴、風鈴連れて先に帰ってて。私もこのままじゃ動けない回復して帰るから」

「早まるなよ」

「未来の統括者よ。簡単には死ねない」

形だけ笑って見せて治癒に入る。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る