ジジィ

バブみ道日丿宮組

お題:運命のジジィ 制限時間:15分

ジジィ

 運命のジジィに会えるという噂を耳にしたのは、学校の休憩時間。クラスメイトたちが話してるのを聞き耳を立てた結果得られた情報だった。

 なんでも深夜2時くらいに砂嵐(チャンネル対応外)を見ると、未来を教えてくれる通称『運命のジジィ』が表示されるというものだ。

 今の時刻は、深夜3時。

 ざーざーざーとテレビが部屋にノイズを発してる。

「……」

 かれこれ1時間は砂嵐を見続けてる。

 そのくらい見てると、噂が本当なのかどうか怪しくなってくる。

 噂は噂。所詮その程度のものしかないのか。皆騙されてるって話じゃないのか。

 リモコンに手を伸ばし、思考を続ける。

 ここまできたなら、発見するまで見たほうがいいのかよくないのか。

 判断力もだいぶ下がってきたような気もする。

 でも……。

「……」

 会えるなら会いたい。

 こんな私であっても、未来の自分というのはとても気になる。

 その未来をたどるというのであれば、対策のしようもあるし、挽回のチャンスだってあるだろう。

 つまり、知ると知らないでは差が大いにあるということだ。

 それができるんであれば、友だちの1人でもできたんじゃないかと思うが、できないものはできないんだ。

 自分が可愛くも、美しもないのはわかってる。

 休憩時間に何度も目を向けられる異端さも理解してる。

 だからこそ、変化が欲しかった。

 その変化がジジィからもらえるというのは、なんだかきな臭い気がするが、迷ってはいられない。

 高校生活も残り1年。

 彼氏の1人や2人作りたい。

「……はぁ」

 諦めるか。

 所詮他人様は他人様。私は私ということかもしれない。

 テレビを消すと、ベッドに寝っ転がる。

 無駄な時間を過ごしたのかもしれない。

 勉強の1つや2つ、あるいは本でも読めばよかったかもしれない。

 明日も早いし、寝よう。


 そうして、私は現実を知った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ジジィ バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る