第147話 わし 今後の国家戦略

   〜〜〜マルクス王国北部の村〜〜〜


アルバート「マルス様、国境までもう少しの所です」


わし「うむ…ここからは影部隊と合流して越境する」


アルバート「やはり越境するんですね、正規ルートでは無く」


わし「ま…お忍びじゃしな、主要都市に行く訳でも無いし、新型ペスト騒ぎも落ち着いて監視も緩いみたいじゃ」


「マルス様」


アルバート「何者!!」


わし「安心せい、影部隊のタオじゃ、まだまだじゃな、コタロウやアリアは気配を察知してたぞ」


アルバート「しょ…精進します、しかし足音すらしないとは…」


わし「地下足袋って奴じゃな足音もしないからな」


アルバート「なるほど…」


タオ「マルス様、情報局からアガラス連邦の情報がある程度入りました」


わし「ほう…詳しく見せろ」


タオ「こちらです」


ガサガサ…


わし「…………。」


わし「ふーーーむ…………。」


わし「…………なるほどね………。」


アルバート「どうなんですか?」


わし「普通に勝てるな、今はまだ厳しいがGDP差が5倍ほどあるしな」


アルバート「なんで分かるんですか?」


わし「輸出入を見るのじゃ、ここは誤魔化せんからな」


アルバート「確かに国と国との貿易ですからね」


わし「あと貨幣制度も旧態依然じゃし、軍事的技術も若干優勢かもな、それに覇権国家は大弱点がある」


アルバート「大弱点ですか?」


わし「圧倒的な工業力と軍事力を持ったなら、お前はどうする?」


アルバート「やはり世界を征服しますかね」


わし「まぁそうじゃな、アガラス連邦は有限の金貨や銀貨じゃから、もっと儲けたいとなる、そうなると確実に自由貿易を推進する関税も軍事力で脅して撤廃させるな、そうすれば圧倒的な工業力でボロ儲け出来るからな」


アルバート「どんどん成長しそうですが」


わし「そこでマルクス王国も自由貿易に加盟する」


アルバート「マルクス王国はアガラス連邦より、さらに工業力を付けて勝つんですね」


わし「半分正解じゃな」


アルバート「半分…?」


わし「自由貿易には加盟するが、自由貿易はしない」


アルバート「い…意味が分かりませんが…」


わし「要は裏切るのじゃ、自由貿易しますと言って関税ガン上げして鎖国する、国内に投資しまくってガンガン工業力や軍事力を伸ばす、相手の良い技術は自由貿易で盗みまくる、高い技術を持った企業の誘致もするが、必ず一般企業を装った国営企業が絡む条件にする、それで我が国の工業製品や軍事力にアドバンテージが付いたら、おら買えや!!自由貿易だろ!!ってやるのよ」


アルバート「鬼ですね…」


わし「それにアチラは植民地政策で国土も広いからな、軍事力は分散されてるから、いくらでも叩ける、工場地帯を中心に叩いて供給力を落とせば…」


アルバート「マルクス王国の輸入品に頼らざる得ない状況が…」


わし「直接攻撃は出来ないがな、これをヤマト国にやらせる…」


アルバート「悪魔ですね…」


わし「我が国の工業地帯がやられたら元も子もない無いからな、だから国土防衛の為に今は空軍に力を入れてる、ゆくゆくはシーレーン強化の為に海軍に力を入れて行くがな」


アルバート「凄い国家戦略ですね…」


わし「まぁ普通じゃな」


当たり前じゃ…歴史を知ってるからな…


第一次世界大戦前は覇権国のイギリスが自由貿易を推進したが裏切ったドイツが同じ事をして、急速に力を付けた…ま…結局は戦争で負けたけど


現在では覇権国のアメリカが自由貿易を推進してたが、中国はもっとエゲツなく同じ事をして急速に力を付けた、そりゃ相対的に軍事のパワーバランスが崩れた今…ロシアがウクライナに侵攻したりする


戦争の原因は資源と国家安全保障じゃ、要因は軍事バランスで成り立ってるからな


わし「タオよ仲良く自由貿易しようぜ!!ってアガラス連邦に打診じゃな、ぶっちゃけ断られても問題無いし」


向こうの軍事技術は盗みたいがな…


タオ「分かりました…しかし自由貿易が締結した場合は同盟国のヤマト国にはどう説明します?」


わし「わしが今言った事をそのまま伝えるのじゃ、工業地帯をヤマト国に攻撃させるって所だけ伏せろ」


タオ「了解しました」


わし「では越境するか」


ビクトリア「アリア様はどうしましょうか?」


わし「雪山に行くしな… 絶対なんか問題起こしそうだし、このまま置いてきぼりが良いだろう」


ビクトリア「意地でも付いてきそうですが…」


わし「ふーむ…レガシイ大帝国に捕まっても困るな」


タオ「ご安心を…」


     ピュィィィイイイ!!!


「お呼びですか…」


ビクトリア「本当に神出鬼没ですね」


タオ「部下のサイです、アリア様が到着なされたら、王都に帰る様に説得させます」


サイ「お任せ下さい」


わし「アイツはバカだけどめちゃくちゃ強いぞ、大丈夫か?」


タオ「サイは影部隊でもカゼハヤ様に次ぐ実力者です」


わし「ほーーーーん…じゃあ任せた」


タオ「では、偽の国民証を渡します、北の街道を抜けて西側の川沿いからレガシイ大帝国に入って行きます」


わし「ふむふむ、しかし…よく出来るなこの国民証」


タオ「マルクス王国の印刷技術は世界一ですから」


アガラス連邦が紙幣を作り出したら、せっせと偽札作りをするか(笑)偽札は紙幣の信用を根底から崩すからな、なんてったって原価が数十円だから(爆)


タオ「では行きましょう」


わし「うむ…」


次回に続く…

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超一流経営者が超弱小国家に異世界転生!?チートも無いけど最強経営者なので無敵です トラキチ @torakichi222

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