第11話 ご期待レベル

 ダラララララララララ。


 ドラムロールが終わると同時にブリーフィングルームに入ってきたのは、三人の外人だった。


 たった三人か、誰もがそう感じるところだが、早くからマグロと戦い続けているアメリカのマグロハンター事情は、極めて厳しい状態にある。


 マグロ大リーグの序列十位の者たちだけでも、現状はこうだ。


 第十位ハンター 死亡


 第九位ハンター 死亡


 第八位ハンター 死亡


 第六位ハンター マグロには高度な知能があるため保護し、我々と同じ権利を認めるべきだとして戦闘拒否


 第五位ハンター マグロとセックスして死亡


 第四位ハンター マグロ酔いを人口的に起こすドラッグを売買して逮捕、そのあとマグロとセックスして死亡


 第二位ハンター 芸能活動に夢中、そのあとマグロとセックスして死亡



 差し引いて稼働できるのが三名だったということらしい。


 しかしその三名の名は言わずともわかっている。


 まず、向かって右側にいる若い男性はマグロ大リーグ序列七位のアンドリューWW.K。


 特技は……



 ***


「いいのかい、あいつらの自己紹介を聞いてやらなくて」


 ブリーフィングルームを抜け出して風にあたっていた私のもとへ銀次が来て言った。


「……あまり意味がないから」


「それだけ、多くの死を目にしてきたってことか」


「そうね……」


 そう答えたが、理由はもう一つあった。


 アメリカ勢の一人に”あの男”がいたからだった。


──マグロ大リーグ序列一位のあの男が。


 現在、世界で唯一”戦略級のクロマグロ”を討伐したマグロハンター。


 そして、私の父を喰ったマグロを殺した男。


 恨むのは筋違いだというのはわかっている。ただ、奴の自信に満ちてこちらを見下すような傲慢な笑みを見るたびに吐き気がするだけだ。


 そう思う私の感情を察してか、銀次は申し訳無さそうな顔を浮かべて言った。


「……すまんが、伊賀村が呼んでる」


「……わかった、今行く」



 ***


「マグロに対するジャペェーンの認識は、間違っていまス」


「……ああ、そのつまり」


 私が再びブリーフィングルームへと戻ると、”一位のあいつ”が伊賀村司令官に詰め寄っているところだった。


「マグロの強さのセパレートは、なんでしたカ?」


「ええ、あの、我が国の定めではマグロはその驚異に応じて全部で六つの段階に分類される。”戦略級”、”戦術級”、”どちらかというと戦術級だと思う”、”わからない”、”あまり戦術級ではない”、”まったく戦術級ではない”」


「オーウ、ナンセンス極まりシコッティです(*´・ω・)(・ω・`*)ネー。さすがYUTORI教育を三百年続けた日本ネ。世界標準でわぁ、こう言いマース」


 一位の奴は高い鼻をさらに高くして、教えてやる感を満載でこう言った。


「”マグロご期待レベル”。マグロの強さを表現するのにはこれで充分デース」


「マグロご期待レベル……だと?」


「SOWでーす。あなた方が戦略級と呼ぶマグロは”ご期待レベル5”、戦術級が4、小型の一番よわっちいのは1デース。これが世界標準。アンダスタン?」


 HAHAHAHAとアメリカ勢が腰に手を当てて白い歯を見せながら笑う。


 世界標準というかアメリカ基準だろとは誰もが思ったが、それ以上に日本の基準がグダグダだったのであんまり逆らえない雰囲気だった。


 そして一位の奴はこちらの反応を楽しむように眺めると、こう言った。


「……まあ、作戦では我々の邪魔はしないでクダスワァイ、我々を巣の上まで運んでくれれば充分なので、ジャペーン勢はHENTAI担当でヨロシクジャミロクワイ」


 HAHAHAHAHAHA。


 これが異国の暴。体格に優るアングロサクスンを前に皆萎縮してしまっている。


 伊賀村が悔しそうにこう言った。


「阿部寛がここにいてくれたなら……阿部寛さえここに……!」


 そんな中、私の目はしっかりとあるものを捉えていた。


「全員、寝ている……」


 伊賀村とアメリカの奴以外全員白目を剥いて寝ていた。

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世界マグロ大戦NELL 安川某 @hakubishin

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