バイサイクル
シノ
第1話
K県K市中央区。
今年の春から大学1年生になる一人の女の子がいた。黒いボブヘアーのどこにでもいそうな女子大生の服装で体型は凛としている。そのためか顔だけを見れば可もなく不可もなくといったような印象を与えるが全体のスタイルを見てみれば美しいと感じるような容姿をしている。
これと言った凹凸があるわけでも登坂でも下り坂でもないようななんでもない平坦をママチャリのペダルを踏みながら進んでいる。大学に近づくと様々な通学の手段で登校する同校の学生が増えたようにも感じる。感じるのではなく事実として増えているのでは?と考えてもみたけれどK市の中央区はK県の県庁所在地でもあり、政令指定都市でもあるためか元々の交通量も多くそうと決められるわけでもない。思慮分別のないこと考えていると校門まで数メートル地点まで来ていた。校内に入り自転車から降り駐輪場に自転車を停めて鍵をかける。二重ロックを学校側から強制されているわけでもないのだけれども、高校生になる際に入学祝として親から買ってもらったものだ。大切にしなくていい理由なんてないと2つ目のロックを掛ける。駐輪場には、自分と同じようなママチャリも停めてあればクロスバイクもありロードバイクもありマウンテンバイクもある。かといってそれらの自転車自分には一切の関係はない。興味もない。そう思ってもみたけれどこれまでの人生で一度もそれらの自転車には跨った経験はなくスピード感や身体にかかる負担の量も未知数だ。訂正する。少しだけ興味はある。しかし興味の有無が物欲に直結するとは限らない。欲しくないわけではないがわざわざお金をかけてまで欲しいと思えるほど魅力的には見えなかった。
校舎に向かってキャンパス内を数分歩く。地方とはいえ流石は私立の大学、それなりに敷地は広くいくつもの建物がある。今日授業を受ける講義室のある校舎の名前は第3棟に這入る。建物の名前の詳しい由来は知らないがそのままの意味で3番目に建てられた建物だからだと思う。エレベーターに乗り4階と書いてあるボタンを押す。「4階です」という音声が流れドアが開く。講義室まで歩き這入る。ICチップが埋め込まれた学生証を翳す。どうやらこれでこの授業は出席したことになるらしい。ドラマやアニメで見る点呼や用紙を提出するわけではなく時代の変化を感じる。90分間の講義を受ける。
バイサイクル シノ @yorip
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