第6話 Soupir d'amour 恋の溜息⑦

 「今日のダンスレッスン、とっても楽しかったわ!」

「そうか、それはよかったよ」

「フローレンスのお見本と教え方が本当に分かりやすかったわ!ねぇお兄様、またフローレンスに来てもらって教えてもらいたいわ!」

「まぁフローレンスの体調にもよるが、週に一回フローレンスにダンスレッスンをお願いするつもりだ」

「嬉しい!またフローレンスに会えるのね!」


さてさて日も沈み夜も始めた頃合いです。

燭台の灯りが揺らめく中、ウィリアム様とシャルロット様は少し遅めのディナーに舌つづみを打っておりました。今夜のメインディッシュはたくさん運動されたシャルロット様のために、と料理長が腕を振るってサーロインステーキの炭火焼きという超ボリューミーなメニューとなっておりました。シャルロット様はお腹が空かれていたのかモリモリとお肉を口に運ばれております。


「あぁ。アルベール公を亡くされて以来塞ぎ込まれて体調を崩していたが、最近は少しずつ元気になってきたようだからな」

「三年前だったかしら?アルベールおじ様が急に倒れられてそのまま…だったものね」

「突然の出来事だったからな」

「本当…ビックリしたもの。でも元気になってよかったわ!本当、フローレンスは昔と全然変わってなくて…優しくて美しくて素敵だったわ!あんなお姉さまが居たらよかったのに!」

「おや、私だけじゃ不満かいシャル」

「そんなことはないわ!でも、フローレンスみたいな優しいお姉さまが居たらよかったのになぁって思っただけよ」

「そうだなぁ…思い出すよ、まだフローレンスが独身だったころのことを。彼女は社交界の華と謳われて、本当に皆の高嶺の花で憧れの的だったなぁ。華やかで優雅で…今ももちろん美しいが本当に輝く様に美しかったなぁ」」


重めのしっとりとした赤ワインの香しい香りを味わいながらウィリアム様は当時のことを思い出しているのか、少し遠くを見つめるようにお顔を上げておりました。シャルロット様も、見たことはないけれどいつかの麗しいフローレンスの華やかな姿を想像してほわーんと微笑まれております。


「見てみたかったわぁ」

「お前はまだ小さくて社交界デビューしてなかったもんな。いい機会だ、フローレンスからたくさん所作を学ぶといいよ」

「えぇそうね。フローレンスみたいな素敵な女性になりたいわ」

「そう思っていらっしゃるならちゃんと勉強してくださいね」

「ヴィー!」

「もう少し姫様には優雅さと言うものを身に着けていただきたいですね」

「うぅ…言い返したいけれど…全くを持ってその通りだわ」

「おや、何でもかんでも噛みつかなくなって来たのは少し成長されましたね」

「だって悔しいけれど本当のことなんだもの…っ!」


ヴィンセントは腕を組みながらシャルロット様の背後からいつものように上から見下ろす様に毒を吐きましたが、シャルロット様は珍しくキャンキャンと泣き騒ぐ子犬のようにはならず、眉毛を八の字にしながらぐっとヴィンセントの言葉を噛みしめておりました。


「…まぁそう言う風に思われるようになったということは、姫様少しは大人になられたということですね」

「でもなんか腹立つわ…」

「はらわたが煮えくり返ろうとも耐えて笑顔を見せるのが大人ですよ、姫様」

「大人って難しいのね」

「いつもまでも無邪気なままで居られないんですよ」

「そう言われると大人になんかなりたくないわ」

「あははは。まぁ色々と折り合いをつけて生きていくのが人生だよシャル」

「そう言うものなのね」

「あぁ。さて…とじゃあそろそろ私は仕事に戻るよ。ごちそうさま」

「もう行かれるの…?」

「今日の会議の報告をヴィンセントから聞かないといけないからな。私の分のデザートはシャル、食べていいぞ。じゃあごちそうさま」


グイッと最後にワインで喉を潤し、ウィリアム様はヴィンセントを伴って食堂を出て行かれました。ご挨拶もそこそこ、シャルロット様は寂しそうな瞳で足早に出て行かれるお二人の背中を見送っております。

後ろに控えていたばあややセシルをはじめとする使用人たちもサッと一例をしてウィリアム様とヴィンセントをお見送りしております。


「…ねぇ、ヴィーなんか顔色悪くなかった?」

「そうですか?まぁいつも悪そうですが…」

「まぁ確かにそうなんだけど…」

「お疲れが溜まっていらっしゃるんでしょうかね?遅くまで執務長官室の灯りが付いておりますから」

「ふーん…」

「シャルロット様、お待たせいたしました!本日のデザートでございます」

「わぁ❤今日はモンブランなのね!」

「はい!栗のモンブランと芋のモンブランの二種類をご用意しております」

「嬉しい!早速いただくわっ!!」


給仕係のメイドが手際よくシャルロット様の前に黄色いお芋のモンブランと、少し茶色がかった栗の一口サイズの可愛らしいモンブランが盛られたお皿を置かれました。ウィリアム様が召し上がらないとのことだったので、モンブランは2個ずつお皿に盛りつけられております。

先ほどまでしんみりとされておりましたが、焼き立てのモンブランの香りを嗅いでご機嫌が直ったのか、いただきます~!と上機嫌のシャルロット様が召し上がろうとされましたが、ふと手が止まって何やら考えているのか、お皿をじっと見ております。


「…ねぇばあや」

「はい、なんでしょう」

「あのね…」


シャルロット様は後ろに控えていたばあやを近くに呼び、耳元で何やらこしょこしょ話しはじめました。しばらくするとばあやはハッと驚いた顔で、宝石のように美しく輝く瞳をキラキラさせながらニコニコ微笑んでいるシャルロット様のお顔を見上げました。


「おやまぁ…姫様…」

「ねぇどうかしら?!」

「よろしいんじゃないでしょうか」

「じゃあさっそく行動に移さなければだわ!」

「そうですわね!」


シャルロット様はもう一度キチンと椅子に座り直し、紅茶を飲んで喉を潤しました。ばあやは給仕係のメイドを呼び、何やら少し話すとすぐに食堂を足早に出て行きました。

すると傍で控えていたセバスチャンがシャルロット様に近寄りこそっと話しかけられました。


「シャルロット様、このセバスチャンもお手伝いいたしましょう」

「ありがとうセバスチャン!じゃあ…あのね…」


シャルロット様はセバスチャンにもそっと耳打ちをして何やら話されました。こしょこしょお話を聞いていたセバスチャンは眉を少し上げて驚いたような反応をしましたが、すぐに穏やかで優しい笑みを口元に浮かべながら承知いたしましたと告げるとお辞儀をしてスッと後ろに控えました。

シャルロット様はもう一口紅茶を飲まれると、お皿に乗っているモンブランをお口に運び満面の笑みを浮かべます。最上級の上機嫌でごちそう様でしたと告げて勢いよく席を立たれます。

そして鼻歌交じりの駆け足でセバスチャンを伴ってご自分のお部屋へと戻って行かれたのでした。


・・・・・・・・


 それからさらに夜が深くなり、ビロードのような夜の闇が空を覆いつくしております。

人通りのない薄暗い廊下を通り抜けてウィリアム様に会議の報告を終えたヴィンセントが執務官室に戻り部屋の灯りを点けると、部屋の中央に置かれている白い応接用のソファーにドカッとなだれ込むように座りました。

そしてしばらくそのまま動かずにジッと突っ伏しておりますと、コンコンコンと優しくドアをノックする音が聞こえてきました。

すぐに身を整えて返事をすると、そこには執事のセバスチャンが立っておりました。


「夜分に失礼いたします、ヴィンセント様。お届け物がございます」

「届け物…?いったい何ですか…?」


セバスチャンは一礼をして静かに部屋に入ると、後ろ手に持っていたモノをスッとヴィンセントに差し出しました。訝し気に眉をひそめながらヴィンセントはセバスチャンの手に持っているものを凝視しました。セバスチャンは手に持っていた訝し気なモノ―――…それは小さなバスケットでした。


「…え?」

「こちらはシャルロット様からヴィンセント様に、とのことです」

「姫様から…?」


怪訝そうな顔のままセバスチャンからバスケットを受け取ります。ほのかに甘い香りのするバスケットの中身を空けると、そこにはまだ少し温かい小さいいくつかのマフィンとと小さな水筒が入っておりました。


「…これは?」

「シャルロット様がヴィンセント様のお夜食に、と先ほど作られたマフィンです」

「…」

「パティシエのポール、それにシャンティと私も同席しておりましたから大丈夫ですよ」

「じゃあ一応食べられるモノですね…」

「はい。僭越ながらワタクシめが毒見をさせていただいております」

「…余計なお気遣いを…」

「とんでもございません。毒に対する耐性はついておりますから心配ご無用です。…それでは私は失礼いたします。お休みなさいませ」

「ありがとうございます」


どこか少し口元が穏やかに小さく微笑むヴィンセントの顔を見ながら、セバスチャンもにっこりと微笑むと一礼をして執務長官室から足早に出て行きました。

パタン…っと完全にドアが閉まりセバスチャンの足音がだいぶ遠くなったのを聞き届けてヴィンセントはバスケットを片手にデスクに向かい、サッと少し硬めの革張りの椅子に着席しました。

そしてバスケットを開き、中から赤いギンガムチェックのランチョンマットを引っ張り出してデスクの上にマフィンを置き、水筒の蓋を開けて中の紅茶を蓋のカップに注ぎます。

保温が効いている水筒だからでしょうか、暖かい紅茶からはほんのりと湯気が立ち上がります。

綺麗な形とはほど遠くいびつで大小様々なマフィンを手に取りヴィンセントは一口齧ると目を大きく見開き口元を押さえて急いで紅茶を流し込みます。


「甘…」


おそらくはちみつをたーっぷり入れたのでしょうか、ヴィンセントが普段は絶対口にしないような甘い味にヴィンセントは思わずむせ込みました。

しかし頭の片隅でシャルロット様が自分のために一生懸命調理場でセバスチャンやばあや、パティシエのポールを冷や冷やさせながら作ったのだろうと想像していると自然と笑みが込み上げてきたのか、珍しく穏やかに微笑むとまたマフィンに齧り付きます。


「まぁ…疲れているから糖分取らないとダメですからね」


そう小さく独り言をつぶやくとヴィンセントは書類をもう片方の手でパラパラと捲りはじめ、マフィンを齧りながら残りの仕事を片付けて始めたのでした。


・・・・・・・・


 「姫様…起きてください、もう7時半ですよ」

「う~ん…」


さて翌日の朝のことです。

柔らかな光がレースのカーテンの隙間から差し込み、白いリネンで統一されたシャルロット様のベッドに一筋の光の線を描いております。

フローラルな甘い香りを焚き込んだお布団にくるまれ、シャルロット様はまだ夢うつつの中自分の名前を呼ぶ声に反応してゆっくりと瞳を開きます。


「やっと起きた。ほら、朝ですよ。早く起きてください」

「…ヴィー?」


まだ少しぼんやりとした頭ゆっくりと目を醒まして一番に瞳に入って来たのは、自分のベッドに腕組みをして腰掛けていたヴィンセントの姿でした。いつものように溜息をつきながら呆れたような顔でシャルロット様を見ておりました。


「おはようございます」

「…おはよう…」

「相変わらず本当に全然起きないですね。何度声掛けて思いっきり揺すった事か」

「…何よ朝っぱらから」

「今日は陛下と一緒に郊外のに乗馬のレッスンの所へ行かれるんでしょう?早く準備しないと遅刻されますよ」

「あ…っそうだったわ!今日は久々にお兄様と乗馬のレッスンだったわ!!」

「ハイハイ、さっさと準備してください」

「はぁい…」

「…」


シャルロット様に聞こえないくらいの小さな声でヴィンセントは全く…と呟き、呆れたような溜息を一つはぁ…っと大きく吐きました。

シャルロット様はベッドから勢いよく上半身を起こすと辺りをキョロキョロと見渡し、いつもと何やら違うのを何やら感じられました。


「あら?セシルは?」

「セシルは体調不良のためお休みをいただいています」

「え?」

「ちょっと熱があるようです」

「大丈夫かしら」

「微熱の様ですが大事を取って…とのことだそうですよ。最近注意力も散漫しているのでちょっと休んで落ち着いてもらった方が良いでしょう」

「…そうね」

「そんな訳で、姫様の世話はしばらくの間ばあやとサヴィーナがいたします。でもまだ二人とも朝っぱらから調理場で魚を咥えて逃げ回っているノア様を追っかけまわしています。…ったく、主人に似て人騒がせですね」


ヴィンセントはまたシャルロット様をチラッと横目で見ると呆れたように冷たく溜息を放ちました。


「…ちょっとヴィーどういう意味よ」

「その言葉の通りですよ。それよりも早いところ着替えて朝食を召し上がってください。陛下はもうすでにご準備が済んでおります」

「えっ!お兄様早いわ…!」

「誰かさんと違ってお寝坊さんじゃないからですよ」」

「んもぅ!朝から毒吐くわね!」

「夜遅くに超甘いもの食べて頭が冴えわたっているんだから仕方ないでしょ」

「…!」


ヴィンセントの一言を耳にしたシャルロット様はいそいそとベッドから這い出ると、嬉しくてニンマリとしたお顔で、相変わらずベッドの端に座ってこちらを見下ろしていたままのヴィンセントに飛びつかんくらいの勢いで近づけております。

ですがヴィンセントは相変わらずいつものシレッとした顔でそんなシャルロット様を見返しておりました。


「お気遣いいただきありがとうございました。でも、私甘い物苦手なんで今後はお気持ちだけで結構です」

「ねぇヴィー、美味しかった?」

「…焼き加減や生地のしっとり感はよかったです」

「味は?」

「もう少し甘さ控えめの方が良いかと」

「甘い方が美味しいわよ!」

「…そんなこと言っていると樽みたいな体系になりますよ」

「ならないわよ!今なっていないもの」

「そう言っていられるのも今の内ですよ」

「そう言うヴィーこそお酒いっぱい飲みまくっていたりご飯食べなかったりって不摂生ばっかりだからガリガリじゃない!」

「私はちゃんと適度に必要な栄養のみ取り、適度に運動しています。それに私のこの体系は細マッチョって言うんですよ」

「え~、嘘よぉ」

「ご覧になります?」


だんだんとお互い顔がくっつきそうなくらいの至近距離まで近づいておりましたが、ヴィンセントは制服の詰襟の部分に指を掛け、制服を脱ぐ振りをしました。

え…っとたじろいだシャルロット様が少しずつ後ろに引いて行くと、ヴィンセントはニヤリと少し意地悪な微笑みを向けるとギシ…ッとベッドを軋ませシャルロット様の方に身を乗り出し攻めて行きます。


「朝っぱらから何してんだお前たち…」

「お兄様!」

「朝からシャルの部屋が騒がしいと思ったら…」


コンコンコンっとノックをしながらウィリアム様は呆れたお顔を覗かせると、そのままシャルロット様のお部屋に入って来られました。


「姫様がなかなか起きられないから起こしに来たんですよ。ばあややメイド達は忙しくてこちらにまで手が回らないようでしたので」

「そうか…ってお前が着替えさせるのか?」

「まさか。とりあえず起こしに来ただけですよ」


ヴィンセントはふぅ…っと鼻から溜息のように息を吐きながらウィリアム様に答えると、ゆっくりとベッドから立ち上がりドアの方へと向かって行きます。


「朝っぱらから貴方方に付き合っていられるほど私、暇じゃないんです。まったく…今日姫様を起こしに来たのは昨晩の御礼ですよ」

「ヴィー!」

「早い所朝の準備終わらせてくださいね。あ、ばあやが来ましたね。じゃあ私はこれで」


パタパタと足音がする廊下をチラッと覗き込み、ばあやが一生懸命走りながらこちらに向かってくるのが見えてきたのを確認すると、ヴィンセントは銀糸の髪をフワッと揺らしながらシャルロット様の部屋をあとにしました。


「?シャル、昨日ヴィンセントに何かしたのか?」


ヴィンセントの背中を見送ると、ウィリアム様もシャルロット様のベッドの端に座りました。そして優しくシャルロット様をベッドから引っ張り出してご自分の膝の上に向い合せになるように膝に乗せて、愛らしいお顔を覗き込みながらギュッと抱きしめております。


「…秘密」

「え?」


シャルロット様はウィリアム様の首に腕を回して抱きつき返すと、ウィリアム様の耳元でそう小さく囁きました。驚いたウィリアム様がシャルロット様のお顔をパッと見返しますが、何やら含んだような笑顔でシャルロット様はにっこりと微笑み返します。


「シャルにも秘密くらいあるわ、お兄様!」

「おや…。まぁ変な事じゃななかったらそれでいいが…」

「もちろん変な事じゃないわ!安心して!」

「そうか?でもなんだか寂しいなぁ」

「うふふ…ごめんなさい。でもよく言うでしょ?素敵なレディーには秘密を纏っているって」

「うーん…ちょっと違うかなぁ」

「そう?」

「あぁ」

「…ま、いいわ!それよりもお兄様、そろそろシャルお着替えしたいんだけど」

「あ、すまんすまん」

「すぐに行くからお兄様待っててね」

「あぁ」


ウィリアム様はシャルロット様を抱きしめていた腕をパッと離してシャルロット様を解放すると、素直にスッとベッドから立ち上がりました。そして軽やかに片手を上げて返事をしてシャルロット様の部屋から出て行かれました。


「おや姫様…っ!なにやら甘い話ですか?」

「ばあや!違うわよぉ、昨日ヴィーへのお菓子のお話!お兄様には秘密なの」

「おや?」

「だってヴィーにだけあげたなんて言ったら、お兄様拗ねちゃうでしょ?」

「あ~、確かに陛下拗ねますねぇ」

「でしょ?だから秘密なの」

「まあ秘密とお伝え申し上げちゃいますと、それはそれで陛下もまた逆に拗ねちゃいますけどね」

「そうねぇ…でもどうせヴィーから言うでしょ?」

「まぁ確かに」


ばあやは温かいタオルをシャルロット様に手渡しチャチャっと洗面を終わらさせると、素早く着替えの準備をし終えます。甘い香りのする保湿のクリームを塗ったばっかりのシャルロット様がすぐにばあやの近くに寄ってきて、着せ替え人形の如くばあやのされるがままでおりました。


「あの二人の仲はツーツーですもの!だからわざわざ私から言わなくても良いのよ!…それにしてもお菓子作りって面白いのね!なんだかハマッちゃいそう!」

「おや!」

「今度、お爺ちゃまのところに行くでしょ?せっかくだから秘伝のレシピも教えていただこうと思ってるの」

「ロベール様もお菓子作りにハマっていらっしゃると仰っておりましたものね」

「そうなの!前お爺ちゃまが造られたタルト美味しかったし、色々教えていただこうと思って!」

「それは喜ばれますわねぇ!」」

「お爺ちゃまに教えてもらってもっとお菓子作り上手になって、ヴィーにぎゃふんと言わせてやるんだから!」

「姫様がこんなに女の子らしいことをされるようになるなんて…ばあやは嬉しくって嬉しくって…」

「昨晩はばあやにも手伝ってもらったものね。皆の力を借りなくても出来るようになりたいわ!」

「素晴らしい心掛けです、姫様!!」


キュッとビスチェのリボンを強く結びおえると、ばあやは手早くドレスを準備してテキパキとシャルロット様に着せて行きます。

本日は少し強めのピンクのドレスを持ってきましたが、イマイチ気分じゃないのかうーんっとシャルロット様は首をひねられます。ばあやはまた違うドレスをクローゼットから引っ張ってきますが、どれもイマイチなようでシャルロット様はなんだか浮かない顔をされております。

お二人がああでもないこうでもない…とギャーギャー騒いでおりますと、シャルロット様がなかなかお部屋から出て来ずに、ずーっとお見送りのために車寄せで待っていたヴィンセントのシビレを切らした怒りを込めた足音が廊下に響き渡って、激しくシャルロット様のお部屋のドアを叩く音がお城に響き渡ったのでした。

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ローザタニア王国物語 〜A FAIRY TALE〜 月城美伶 @chi1002

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