第100話 プロローグ

 恋愛は、好きになった方が負け。


 誰が言ったのか知らないし興味もない。

 ただ一つ思うことがあるとすれば、僕は負けた気なんてしていない。

 なんなら好きになった僕の方が得だ。だって、好きな人に毎日会うことが出来るのだから。


「す、しゅきです!……あ」


 肝心な所で噛んでしまった沖矢さんは唖然とし、思わず口を手で塞ぐ。

 とはいえ、そんなことで笑うような僕ではない。沖矢さんが伝えたいことが今更分からないような男じゃない。

 最初から手紙が果たし状じゃないことくらい分かってた。でも、もし違った時。自分一人で盛り上がっていた自分が恥ずかしく思えてしまうから必死に目を逸らしていたんだ。


 でも今、こうして沖矢さんが勇気を出して僕を呼び出し、気持ちを伝えてきた。

 なら今度は、僕が勇気を出す番だろう。


「い、今のはナシで……!」

「沖矢さん」

「ひ、ひゃい……!」


 やり直しを切り出そうとして僕に名前を呼ばれた沖矢さんは、噛んだことが余程恥ずかしいのか、両手で顔を覆い隠す。

 そんな彼女に向かって僕は言葉を紡ぐ。


「僕も沖矢さんのことが好きです」

「……へっ?!」


 僕の言葉を聞いて、顔を隠していた両手を下ろし、僕を見る沖矢さん。

 変に言葉を飾る必要は無い。必要なことを、簡潔に、素直に伝えるだけでいいんだ。



「だから僕と、付き合ってください」


「はい……っ!」



 秋の晴天。長かった僕と彼女の恋愛のプロローグがやっと終わった。

 そして僕は、込み上げてくる言葉に出来ないほどの嬉しさを胸にこう思うのだった。



 どうかこれが、この先百年続く愛の最初の一ページでありますように────



【後書き】

『100話後に付き合う男女』を最後まで読んで頂きありがとうございました!

実は、今作の続編となる『100話後にキスする男女』という作品がノベルアップ+にて本日完結致しました!

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それではまたどこかで!


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100話後に付き合う男女 澄崎そうえい @soueinarou

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