第一章 エピローグ


「よく、生きてんなぁ……俺達」


 爆風に巻き上げられた三人は、フィズの咄嗟の機転で水の枠をすぐさま作り出して。

 辛うじて、爆発の直撃だけは避けた。


「此処からでも、見えるわね。キノコの様な黒煙がハッキリと」


 砂を全身に被り、仰向けになって下を向けば未だに立ち昇る黒煙が見える。


「……構成させなきゃ、またいつ町が吹き飛ぶ……私、町を守りたかっただけなのにっ」


「吹っ飛ばされる瞬間、半分くらい、爆風で持ってかれてからなぁ~」


「アンタ、よくそんなん見てる余裕あったわね」


「あぁ~、私の力が至らないばっかりに。みんな無事、かな?」


「ねぇ、ところで……コイツ、誰よ……顔立ちは楓に似てるけど。男……よね?」


 ただ一人、水のシールド内で大事そうに守られている青年が一人いた。


「え、楓だけど? 男バージョンの」


「は? マジ……うわぁ~、いっちゃなんだけど。女の子の方があってるわ」


「そうですか? 私はこっちの方が可愛いと思います」


「リエナってさ、ショタ?」


 そんな話をしていると、楓が目を覚まして水で出来たシールド内で暴れ始める。


「おいっ! 何だこれ!? だせっ、ここから出しやれっ!!」


 中から水の壁を破ろうとパンチを繰り出すが、衝撃は全て吸収される。


「まぁまぁ、そんな暴れないで。大人しく寝てろって」

 フィズの手刀が入り、楓がまた気絶する。


「アンタ、なにを……」


「こんな程度じゃあ気絶しないと思ったが、やっぱ魔神器の使用は身体には堪えるようだ」


「精神エネルギーですから。何年も修行した大婆様でも、あんな密度の濃い協力な術の連続使用は、出来ないと思います……それを、この人は」


「そのわりに、元気じゃなかった?」


「それは、私も驚き? でも、きっと普通に立つもやっとだと、思う?」


「そうだろう、だからこれから、俺が担いで……とりあえず、逃げるぞっ!」


 三人が顔を見合わせて、頷くと。遠くから大勢の足音と怒鳴り声が聞こえてきた。



「ふふ、待っててくれ楓ちゃん……落ち着いたら、元に戻してあげるからね」



「あ、あぁ~、フィズ、それ……アタシのお宝。返せ、返しなさいっ!」



「ラミュさんっ! 本当にどさくさに紛れて、盗みをっ!?」




 フィズは楓を担ぎ、ただ一人一目散に逃げ出し、それをラミュが追い、リエナが続く。



                    

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フリーダムネイチャー 風月七泉 @cherlblue

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