オマケ2 友人二人の会話文(注意、小説ではないです!)

 

 アンドレア侯爵家の別荘、そこの一室にてお茶をする男女の二人組。


「愚妹との面会も終わったし、昼食の様子だとお見合いも成功しそうね」


「だな、あのご令嬢がいい人で良かった。ま、アレと比べたら誰もがいい人になりそうなもんだが」


 向かい合わせの席に座り、ほほ笑み合う男女。


「全くその通りね。そもそも我が家のパーティーに招待したルーベンに一目ぼれしたとか言って、いきなり結婚を言い出した愚妹が悪いのに。…面会中も私、ルーベンに対して申し訳なさと恥ずかしさがひっきりなしに湧いてきて…」


 女性が大きく溜息をつく。


「当時、結婚はまだ早いからと愚妹を説得して祖父母の早合点を抑えて、何とか婚約に押し留めたけど、大正解だったわ」


「アレが一目ぼれ~? ただ単にルーの珍しい目が気に入ったからって聞いたぞ?」


「え、ちょっと、その話誰に聞いたの?」


「そりゃ、本人の口から?」


「……そう。あの子、貴方にものね?」


「おう。まぁ、その後そんなに珍しいモノが好きならって、珍しい毒虫を贈ってやって、虫トークを延々してやったらそれっきりだけどな」


「すごく悪意を感じるわ」


「悪意どころか、殺意マシマシだけど? ライラもだろ?」


「ええ、そうね。妹としての情はあるけど、それ以上に私は当主となる身ですもの。友人のルーベンを貶めたばかりか、こちらの話を聞かずに醜聞ばかりを振りまいて我が家の評価を落とした者には、軽く殺意が湧いて当然でしょう?」


キャメル伯爵夫妻義理の両親は身内に甘過ぎだよな~」


「そうよね。…とは言え、両親の言い分も私だって分かってるの。愚妹と祖父はともかく、祖母は後妻の子であった為にあまり世間に知られていないけれど、その実家は代替わりの際に貴族派に鞍替えしたあの公爵家ですもの。あの家は今や薄れているとは言え、わが国の王家の血だけでなく隣国の王族の血も受け継いでいるし、今尚地続きの他国との外交の顔役として活躍していて、決して侮ってよい相手じゃないわ」


「それな。派閥と血筋が絡んでくる可能性を考えれば、キャメル伯爵家我が家の問題だからと勝手に処分出来ないのが辛いとこだよなぁ…」


「現当主は、祖母の異母兄にあたる方の息子だけれど、実権は未だ祖母の異母兄にあるそうよ。婚姻前の兄妹仲は悪くなかったそうだから、下手に口出しされると困るわね」


「…結局、今俺達が出来るのは親父が言うように、キャメル領内にて監視付きの蟄居と監禁止まり押し込めるだけ、か」


「あら、あの愚妹の方だけでも引導渡せるだけマシよ」


「親父が怒ったし今回で完全に見切りつけたからな、それがなきゃ、ここまでスムーズに行ってないだろ?」


「…ルーベンには本当に申し訳ないと思うけれど、相手がルーベンで良かったとも思うわ」


「確かにな~。親父のこともだけど、バーナー伯爵家は中立派の中でも有力者だし。アレをあのまま見過ごすって事はなかっただろうけど、非を被った中立派が大人しいのって、ルーの両親あっちが上手く抑えてくれた結果なんだろうなぁ」


「ルーベンだけじゃなく、バーナー伯爵家の温情にも感謝しないといけないわね」


「…そう言えば面白い噂話を聞いたな。何でも相手がバーナー伯爵家の嫡男ルーだからこそ、貴族派の嫌がらせが起こった可能性があるそうだ」


「どういう事?」


「有名な『大らかな海の民』の陰に隠れて呼ばれてる『人たらしのバーナー』、そのせいだってさ。バーナー伯爵家の信者が貴族派にも居て、婚姻によって王家派にバーナー伯爵家を取られたくないから起きた、なんて話がちらほら出てるらしい」


「……実際にあり得るの?」


「無いとは言えないが根拠が弱い、ってところだな。正直言って、貴族派にも居るのは確かで、あの家自体の信者の数たらされた人数は未知数ではっきり分かってないから、きっぱり無いと言いきれない部分がある。でも、この噂の根拠ってのが、アレに関して社交界で流れた醜聞が、バーナー伯爵家が被害者側であるように調整されていたように思えるからっていう不確かなモノだからな。調整も何もアレが好き勝手して派手に醜聞振りまいてたのは事実だから、誰も相手にせずこのまま噂で終わるだろうさ」


「…そう、でもそれって、例え理由の一つにあってもせいぜい目を付けた程度に過ぎないんじゃないかしら。貴族派側からすると、目を付けた愚妹の性格を知って利用できると踏んで、ここぞとばかりに貴族派のロクデナシ連中の処分理由に使おうとした可能性の方がありそうよ。最初の方に愚妹に声を掛けていた相手はことごとく女好きとかで悪名高い方だったもの」


「あぁ、なるほど。ついでに、醜聞によって加害者側になるキャメル伯爵家王家派の権威を落とせれば上場ってか」


「…嫌になるわね。結局、私達は上の方々の思惑に踊らされたのかしら」


「さぁ? 真相は闇の中ってヤツだ。親父なら知ってそうだけど、教えちゃくれないだろうしな」


「早々に当主になったら、家を守るためにもそういう思惑をもっと理解する必要があるわね」


「あ、それ! 爵位継ぐのが早まるとか、俺、聞いてなかったんだけど?」


「私も聞いたのは、ここに来る直前よ? 両親が色々手配しているのは知ってたけど、結婚式の為の準備だけじゃなかったの…聞いた時、唖然としちゃったわ」


「もしかしてもう準備万端か?」


「式の準備と同時並行して進めてたみたいだから、さすがにまだ全部済んでないと思うわ。それに、当主になる私への引継ぎも色々必要だし、結婚後すぐって訳じゃないみたいよ」


「…式の準備だけでも忙しいってのに同時並行とか。身内に甘い欠点はあれど、有能なんだよな、キャメル伯爵夫妻義理の両親は」


「うふふ、でもそんな親を超えて見せるのが、私達の役目だわ」


「はは、そうだな。俺の嫁さんは実に頼もしい!」


「愚妹の事で色々面倒かけてごめんね…ありがとう。これからもよろしくね、私の旦那様」


「お、おう…任せとけ!」




【完】

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婚約者に浮気され、婚約破棄するしかなかった僕の話 もふっとしたクリームパン @kogekoge9

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