第9話

「棘の衆」9


 爆風に吹き飛ばされた志保は意識を失っていた。


 目を覚ますと高田とウシトラと二人の武装兵士が至近距離で銃を向けている。その後には燃え上がるバスが見える。

 ここまでかと諦めてオレンジ色と藍色のグラデーションの空を見上げたー。

「母さん…直ぐ行くね」

志保は目を閉じた。


 ウシトラは黙って今にも処刑されそうな志保を見ている。


 高田がパイソンを志保に向けたー。


 その時、逃げたはずのフジ子が燃えるバスの煙の中から飛び出してきて高田のパイソンを持つ手を撃った。


 指が二本飛び散ったー。


「うわ!」

高田が後ずさる。

 フジ子は左右に居る兵士を素早くエイムして排除した。


「ウシトラ君!私は貴方が好きよ!」

フジ子は銃をウシトラに向けて背中の痛みを堪えながら近づいた。

 ウシトラは俯いている。

「初めて会ったときに貴方から悲しみ、憎しみ、強い憎悪を感じた…でも、今は違うよ…人を好きになる気持ちが溢れてるよ…私は貴方が好きで、貴方も私が好き…これが真実で任務でも有り私の正直な気持ちなの…貴方が世の中の争いごとの元凶にならなくて良い方法がこれなの……この愛し合う事なの…」

「……フジ子さん」

ウシトラがフジ子へ近付くと高田がウシトラの頭を撃ち抜いたー。

 倒れ込むウシトラ、それに飛びつくフジ子。

 志保が宝刀で高田を貫いたが、遅かった……。


 フジ子は即死したウシトラを抱き締めながら天を仰いだー。


 半年後ー。


 二台のバイクが大磯の海岸沿いを走っているー。

 志保とフジ子は任務を遂行し続けている。


 争い事の根源の元凶…棘の衆を探す旅にでたのである。


おわり

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棘の衆 門前払 勝無 @kaburemono

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