第2話 回復持ちと赤い鎧の男

「ふぅ~…

何とか間に合ったか?


まったく巨体のくせに逃げ足早いから困っちまうよなぁ~


お前さんら大丈夫だったか?」


茶色の髪にワインのような深い赤色の目

そして真っ赤な鎧を着た男が


ブラッドキングベアーの上に乗りながら問いかけた



パーティのリーダーが何とか気を取り直し問いかける

「あ、あんた誰だ?

ブラッドキングベアーを一撃でなんて聞いたことないぞ…」


「あ~っと…


まぁ、俺のことは気にすんな!

ただの通りすがりの冒険者ってことで、な?」


一撃でなんて普通なら出来るはずがない

それにそれをなんでもない事のように済ますなんて…


するとメンバーの1人が問いかけた


「·····その赤い鎧、あんたまさかS級冒険者の「イーリオス」!?」


その一言でメンバー達がざわついた


···「イーリオス」

S級冒険者の中でも1番の実力者

いつも赤い鎧を身に纏いその背中にはとてもシンプルに見えるがよく見ると細かい模様が入った立派な大剣を装備している

パーティは組んでおらず常に単独行動をしている…



「あ~…まぁバレたんならしゃーないか」

「この奥でクエストを受けてたんだが思った以上に数が居てよ

そんでもって逃げ足が早いと来た


まったく困ったもんだぜ」


「ここら辺にもまだ居ると思うから早く街に戻った方がいいぜ

麓まで俺が送ってってやるよ

ギルドには俺の方から言っとくからよ」


その提案にみんな喜んだ


「「ありがとうございます!」」


そして早々に降りる準備をして下山し始めた


私はいつも通りみんなの荷物を持って歩き始めた

するとイーリオスが

「ちょっ、おい!


なんでお前1人で荷物全部持ってんだ?」


焦りながら言うイーリオスに私は

「大丈夫です

いつものことなので気にしないでください」


それでも戸惑ったような顔をしたイーリオスにリーダーが

「気にしなくていいっすよイーリオスさん

そいつ荷物持ちくらいしか出来ない役立たずなんで」

と笑いながら言った


「……役立たず?」


「えぇ

そいつ元々奴隷で、俺たちが買わなきゃ今頃殺されてたんじゃないですか?」

「だからむしろ買ってあげた事に感謝して欲しいくらいですよ」

と他のメンバー達も笑いながら話す


「……」

呆れ果てたイーリオスがメンバーに話しかけようとした時


先頭を歩いていた1人が突如現れたキングベアーに襲われた


「ったく今話の最中だろうが!!」

イーリオスが直ぐに飛びかかりキングベアーは倒れた


しかし先頭の1人は大きな爪で裂かれて瀕死の状態だった


いつもならすぐに私が治しに行くが今回は迷った

(···イーリオスさんが居るのに回復の力を使っていいの?

もしこの人が悪い人だったら···)

そう考えている内にリーダーが私に向かって叫んだ

「おい役立たず!!

早く回復しろよ!!

回復しかできない役立たずなら回復くらいさっさとやれ!!!」


私は

(あぁそうだ迷ってる暇なんかない

私にはそれしかできないのだから)


「···わかりました」


すぐに駆け寄り今までよりも強い力で爪痕すら残さずに回復した


強い力を使ったせいか一瞬意識が遠のき

身体から力が抜けグラッと揺れ

倒れると思って目をキツく閉じた瞬間


「っと!危ねぇ~ギリギリセーフ


大丈夫か?」


「…はい、大丈夫です

ありがとうございます」

そう言って倒れかけた私を支えてくれたイーリオス


しかしこんな所で私が時間を取ってはいけないと思い


支えてくれたイーリオスの腕を離し歩き出したがすぐに倒れてしまった


薄れていく意識の中

私が倒れる前に抱きとめてくれていたイーリオスの大きな身体の安心感に包まれながらそっと目を閉じた


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意識を失った私を抱き抱えながらイーリオスは

とても冷たくしかし怒りの籠った声で


「おまえら 後できっちり話してもらうからな」


リーダーは怯えながら答えた

「ひっ!は、はい!」

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回復持ちの願いは平凡な暮らし ルミナ @rumina_

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