回復持ちの願いは平凡な暮らし
ルミナ
第1話 回復持ちの役立たず
「ほんとお前は回復しか出来ない役立たずだな」
これも何度言われたことか…
言われ慣れた言葉に私もいつもと同じ言葉で返す
「…ごめんなさい…」
いつまで同じことを繰り返せばいいんだろうか
こんなことならいっその事…
いや、それじゃ今まで我慢してきた意味がない
せめて普通の…いや平凡な暮らしを送ってから最期を迎えたい…
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私は奴隷だった
何度も何度もオークションに出されたが
黒い髪に水色の目 その見た目のせいで気味悪がられた
そんな時今のパーティが売れ残っていた私を買ってくれた
与えられた仕事は荷物持ち
でもそれでも良かった
檻の中で痛めつけられ暴言を吐かれたりしながら品定めをされるよりよっぽどマシだった
だからどんなに重い荷物でも頑張って持っていた
そんな時パーティの1人が怪我をした
私は生まれつき回復の力を持っていた
けれど今は亡き母から
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「回復の力は本当に必要な時以外は使ってはダメよ
悪い人達が狙ってきてしまうから
それから色んな人に見せるのもダメ
お母さんと約束できる?」
「うん!やくそくする!」
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という約束をしていた
だからどんなに痛めつけられても自分を回復することはなかった
でもこの時は力を使った
このパーティの人達は恩人だから
そう思った
しかし今思えばそれが間違いだった
この時からパーティ内での扱いが変わった
今まではいい意味でも悪い意味でもただの荷物持ち
それが「回復の力が使える」ということで私を逃がしたくなくなったのだろう
その日から少しの怪我でも回復をさせられ
「俺たちが買ってやったんだから感謝しろ」
「他の誰かに言ったらまた奴隷に逆戻りだぞ~」
と脅迫される日々
私は従うしかなかった
それ以外無かったから
「回復しか出来ない役立たず」
まさにその通りだ
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その日も魔獣討伐のクエストを受けていた
D級魔獣のパープルベアー4体の討伐
なんて事ないクエストだった
いつものように途中で休憩をしてその間にメンバーの回復をしていた
その時だった
見張りをしていたメンバーが血相を変えながら逃げてきた
「どうした!?」
リーダーが尋ねると
「べ、ベアーが!!
ブラッドキングベアーが出た!!」
「ブラッドキングベアーだと!?」
「そんなまさか!?
あれはS級魔獣だぞ!?」
「C級の俺たちじゃ太刀打ちできない!」
·····ブラッドキングベアー
パープルベアーの最上位種·····
ブラッドキングベアー…普段は森の奥深くから出てこないのにどうしてこんな所に?
「ガサッ」
「!?」
振り返るとそこには大きな赤黒い毛に覆われ爪からは血が滴っている魔獣
ブラッドキングベアーがいた
リーダーとメンバー達は戸惑いながらも立ち向かう
だがS級に分類されるブラッドキングベアーに攻撃が効く訳もなく満身創痍になりながらも立ち向かっていた
鋭い爪が振りかざされたその瞬間
「ドサッ」
突然ブラッドキングベアーが倒れた
その場の全員が急な展開に追いつけず固まっていると
「ふぅ~…
何とか間に合ったか?
まったく巨体のくせに逃げ足早いから困っちまうよなぁ~
お前さんら大丈夫だったか?」
茶色の髪にワインのような深い赤色の目
そして真っ赤な鎧を着た男が
ブラッドキングベアーの上に乗りながら問いかけた
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