第8話 戦の後の処理
私は戦の後の処理を、手早く指示していった。
まず、ギルディアスに捕縛船を要請するところが始まりである。
すべての戦が終わったわけでは無いが、ここの戦は沈静化しつつあるからである。
なぜ捕縛船を要請するのかというと、第一に私の
そしてここから、カイラズ国のナイツとパートナーが逃げていくのを防ぐ目的もある。
要請が通ったのか、即に近いタイミングで捕縛船
うち一隻は、私の前まで来て着陸し親書を携えた使者が現れたのだ。
ギルディアスの特使が現れたのだ、ロック様ではないが別の使者をこちらには向かわせたようであった。
差向わせたのが最高評議長ヴェルーガ・カイマン・ヴィードリー様であるのか、ヨナ・ヴァシュマール三世陛下であるのか分からなかった。
私は親書を受け取るべく簡易ではあるが、戦着の上にサーコートを羽織るとコクピットから姫機の手で足場を作ってもらいひらりと飛び降りて特使の前に向かった。
特使は、
「戦着のままであることを、お許し願えますか?」とだけ聞いてみた。
正式なものであればあるほど、正装が望ましいからである。
「構いません、陛下からの親書です。どうぞお受け取り下さい」と特使はいわれ親書の入った箱を差し出された。
陛下といったということは、ヨナ・ヴァシュマール三世陛下のことであろうと推察が付いた。
「御受け取り、いたします」といって特使から、箱を受け取った。
その場で開けるのが礼儀であるので、箱を開け中から親書を取り出し箱を脇に抱えた。
私は静かに、親書の中身を声に出さずに読みだした。
その中には、ヨナ様だから書けるのであろうことが凝縮されていた。
大まかに内容を分けると、三つの事柄が書いてあった。
カイラズ国の内情についてのお知らせが一件、多分これはギルドの諜報部門が総力を挙げて叩き出したのであろうことが分かった。
そして、この戦の後の話が二件である。
一件はグランシスディア・ゼロという都市にいる斑鳩国の同胞のことで、もう一件はお兄様のことであった。
詳しい内容は、ここでは少し考えられないので特使に「親書、確かにお受け取りいたしました。確約は出来かねますが、ご安心くださいとお伝えください」と私はいって特使に箱のみを返却した。
特使は私に深く一礼すると、元に戻ってタラップを駆けあがっていった。
急ぎヨナ・ヴァシュマール三世陛下に、報告を入れるようであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
時刻は数時間前にさかのぼる、ロックは隠密行動中であった。
カイラズ国の内側に入るため、隠密用の装束の上からカイラズ国の民族衣装を装飾としてあしらっていたのだ。
今回侵入するのは、五グループ三十名ほどである。
一人侵入するのとは、わけが違った。
人族至上主義のメンバーがいても困るので、新人族を侵入メンバーには加えなかったのだ。
首都が国境から近いといっても、限度はある。
アストライア姫からもたらされた、戦略情報と戦術情報を基に冒険者ギルドからの支援も受けた。
また侵入時点の三十分前にはレーダーサイトなども沈黙させておく必要があったため、カイラスリーのサイトをすべて攻撃し沈黙させておくといった物理的破壊も実施された。
一番近い首都外周には、歩いて侵入できたことも幸いだった。
つまり首都カイラスリーは、国境線のすぐ隣にあったわけである。
そして雑踏に紛れ、侵入には成功したのだった。
首都といっても空き家が目立ち、人通りの無い路地や空き地も目立った。
だが侵入者も元から住んでいるものも、よく分からないほど混沌と化していた。
我々には好都合だった、としかいう他ない。
侵入する場所は比較的警備がいたが、ナイツでなくてノーマルであったようで我々の侵入に気付くことは無かった。
そして個々に分かれ、それぞれが探し始めたのであった。
そして探し物を終え、一軒の空き家に集って情報の精査を行った。
大体の調べは付いた、事の当人は海外にいて海外から指示を出しているらしい。
ただ国外、といっても敵国であるはずのグランシスディア連邦共和国の古都にいて指示を出しているらしいことも分かった。
古都の名はグランシスディア・ゼロ、指示内容は様々だが一週間分が指示として届くようだ。
今は週の半ばのようで、指示通りに国を動かしているといったところであろう。
我々に使える時間は、僅かである。
指示受け役を潰して、カイラズ国を離脱するに意見の一致を見た。
それからグループ単位に分かれて、また指示受け役を消しにかかった。
数人を消すと我々はまた集合した、今のところこちらに損害無しである。
首尾は上々のようで、脱出ルートの確保もできているようだった。
そして、二度目のサイト攻撃を機に我々は脱出を図ったのである。
この作戦において、損害は無かった事を記しておかねばならない。
姫君の影武者 御鏡 鏡 @mikagamikagami
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