第7話 陽動戦闘

 流石に、あの一騎打ちの後に後続で来るという猛者はいないようだった。


 指揮機であの有様なのだ、だが私は無慈悲にもブレイクグレートソードを天高く掲げ前へ振り下ろした。


 討伐任務を今から、開始するのだ。


 残りの百九十九機を無視する訳にはいかないし、無傷で放置するのも無しなのだ。


 そして鶴翼の陣が収束し、敵機が密集している状態で周囲を囲んだ。


 私はその密集している、敵機に向かって突撃した。


 私の左右のサイファードも私と一緒に突撃している。


 相手が怯え切っているが、容赦はしないしできない。


 それがいくさなのだ、陣を敷いていることは分かっていなかったのかもしれないがそれで容赦いや、情けを掛けるということはしてはいけないのである。


 私が確実に一歩を踏み出し、その一歩と同時にブレイクグレートソードを大凪に振り斬った。


 砕け飛び散る、敵機クロッティアラント。


 密集陣形がさらに圧迫される、だが慈悲は無い。


 ギルドに手向かう……、ギルドという一つの集団に対して弓を引く国の軍隊なのである。


 今は私はギルドナイツに招請された身、斑鳩国旗下のスクーデリア皇国の姫であるとともにギルドの権力の執行者でなければならないのである。


 難しいことを考えても始まらない、そんなことを考えていたら剣先が鈍る。


 いらぬ犠牲を出してしまう、それだけはよしとしないのだ。


 私が楔となって、カイラズ国の軍隊を斬り刻んでいく。


 私はただ真正面に現れる、クロッティアラントをひたすら斬り薙ぎ払う。


 その間にパートナーのフォルテが、味方に陣形変化の指示を出していく。


 そこは、いつも通りだった。


 二人で姫機を駆ってはいるが、二人が同じことに集中するということは稀なのだ。


 特にこの雑兵どもを殲滅する際において必要なのは、味方に犠牲を出さないことであってそれ以外ではないのだ。


 そして姫機が傷つくこともあってはならないので、全ての剣線を読んで動きを加えカメラからの見栄えまで計算に入れて動くのだ。


 私の一撃で、敵機クロッティアラントが数機まとめて吹き飛んで行く。


 後ろに……、私の後ろに抜けたクロッティアラントは居ない。


 そういう、包囲網の陣形であるのだ。


 いかなC級機体とはいえ、他のものに押されて真面に動けなくなっている状態ではどうにもならない。


 ある一定の間隔が空いていて、ようやく戦ができるものなのだ。


 今の敵機の状態は、恐怖を表に出し過ぎて寸詰まってしまった陣形なのである。


 機体の格が大きく違うのもあるかもしれないが、今の敵軍はパニック状態に陥っている烏合の衆でしかない。


 私の機体ファランクスFXはX級、サイファードがB+級とC級との間に格差ができている。


 X>S+>S>A+>A>B+>B>C+>Cといわれる差が私の姫機との間にあるのだ。


 サイファードですらC級のクロッティアラントとの差が三段は開く。


 ファランクスFXとの差は八段にもなる、C級が基本的に五兆馬力未満の出力であるのに対して、B+級で八兆馬力、X級で十四兆馬力といわれている。


 あくまでもこれは、出荷段階でのパワーユニットの出力数値である。


 都合、姫機などに乗っていると出荷段階の値はただの規格でしかないことが分かる。


 私のファランクスFXの基本出力で、十七兆馬力以上出るからだ。


 詳しくは考えないことにするが、私が動かしている間の出力はその基本値を大きく超えている。


 よってC級がいくら強化しようとも、魔法を使おうともその差は歴然であるのだ。


 この格差によって機体が砕け飛び散る、などということが起きているのだ。


 当然だが基本出力が違うということは、駆動系や関節などもそれに対して強靭に作られていなくてはならないわけだ。


 当然それなりの、負荷は掛かるからである。


 そこまで考慮に入れられ組まれるのが、旗機や姫機と呼ばれる機体なのである。


 カイラズ国のクロッティアラントも旗機ではあるが、設計が古いことやクラスが低い(C級)ことも相まってそこまでの傑作機ではないようである。


 考え終わったころには、戦闘はひと段落着いており私の通った後には無数のクロッティアラントだったものが転がっているのである。


 残ったクロッティアラントはサイファードに打ち砕かれ、あるものは地に倒れ伏し、またあるものは武器を捨てて投降しようとしたが殲滅戦であるため擱座にまでは追い込まれていた。


 私の後方側に抜けた敵機はおらず、全て私の陣内で解決した。


 一機のみ取り逃がしがあったようではあるが、それは些末なことである。


 私と打ち合って手酷い傷を負った敵大将格だけが転移により、パートナーと機体を捨てて本陣に戻ったようである。

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