第6話 陽動戦闘開始

 現在は丁度、三時になった時だった。


 すでに鶴翼の陣を展開しているところに、カイラズ国のC級機体クロッティアラントを運ぶフローティングFパワーPトロリーT(以下FPTと略す)が突っ込んで来たのだ。


 そして狙い違わず、AGCジスティス[強襲揚陸艦]の支援射撃がその集団の先頭集団に命中して動きが止まったところで、今現在は騎士道にのっとって相手が準備を終えるのを待っているところである。


 カメラの目、戦場報道用の放送車十数台が私の周りに居るので、討伐目標であるとはいえFPTに斬りかかるなどという騎士道精神から外れたことをするわけにはいかなかったのだ。


 こちらは相手に対し数が少ないとはいえ、ツーランク以上クラスが上の機体で囲んでいるのだ。


 相手は二百機程度、こちらは私を合わせて百二十五機とエクレールのところの五機の合わせて百三十機である。


 エクレールは後方展開であるので、実質二百VS百二十五といえた。


 数の上で不利に見えるかもしれないが、この程度のクラスと数なら、私一人で百機くらいなら軽く喰えるのだ。


 しかもこちらは、下がる相手には放置に等しい状態でいいのだ、深追いせずともよいのである。


 任務は討伐であるがここを通さないことが重要なのであって、それ以上でもそれ以外でもないのだ。


 中破くらいさせておけば、特に文句を言われることは無いのであったりする。


 但し、これはカイラズ国のC級機体クロッティアラントに限っての話である。


 もしシリョウやユーレイが出て来たら、完全破壊をいわされることになる。


 逆に来てくれたほうが、潜入部隊を危険な目に合わせずに済む分気持ちが楽にできるのだがそう簡単にことは運ばないらしい。


 私は両手剣を構えて握った、長大なヒヒイロカネ製の鋭い刃の付いた通常のグレートソードよりも一回り大きい真の剣が砂漠の太陽を照り返しキラリと輝いた。


「剣に銘がまだありませんから、ブレイクグレートソードとでも付けましょうか」と私はフォルテにいった。


「銘ですか、そういえば造るのに夢中で考えていませんでした」とフォルテがいった。


「切り開くや、突破する意味も込めていますから。ただ単に壊したり、破ったりする意味だけではありませんよ」というのも忘れなかった。


「いいですね、そうしましょう」とフォルテはいうと登録を開始した。


 私がこれだけゆっくり物事を進めているには訳がある、相手に増援を要請させること。


 それに、その呼び出された増援もできれば足止めすることが望ましいのだ。


 ここで相手の足を止めることにより、潜入部隊が仕事をやりやすくなるはずなのだ。


 カイラズ国の首都にいるM・Mマジック・マシンの総機数が残り百程度なら、全てを食いつくす勢いでその残った奴も引っ張り上げれば潜入部隊がM・Mの脅威にさらされることは無くなるわけだから。


 それに戦略偵察部隊も居るので、他の異変もこの辺りのことならリアルタイムで掴めるはずである。


 二百機の準備が、整ったようである。


 私は第一列に並ぶべく、移動を開始した。


 みなを信頼していないのではない、負担を減らすのと国民を沸かせなばならないという自負から来た行動である。


 敵の指揮機が、先頭を切るようだ。


 ならば私がそれを受けねば、騎士道といって待ってやったかいが無いわけだ。


 第一列を通り過ぎ、正面に出た。


 味方は陣形を崩さず、待っている。


 一機で出てきた私に呼応するように、敵の指揮機も一機で出てきた。


 一騎打ちの態勢だ、相手の得物は幅広のブロードソードとヒーターシールドである。


 クロッティアラントは一般的な、騎士型のM・Mだった。


 私の周囲を跳ぶ報道用のカメラたちが、一斉に散った。


 それを合図と受けたのか、クロッティアラントの指揮機が突撃してくる。


 私は、ファランクスFXで正面から無慈悲に強力な一撃をブレイクグレートソードで打ちかけた。


 私のほうが速さは上だ、相手が突っ込んで来るがブロードソードを右に上げヒーターシールドを構えている。


 だが私の攻撃が先に相手に届いた、こちらの得物のほうがリーチが長いからだ。


 私の一撃を受け相手のヒーターシールドが真っ二つに割れて、それを構えている左腕も斬り飛ばされた。


 だが、相手の速度は緩まない。


 だが私も剣線を左に斬り上げ払って対応した、目標は相手が右手に持つブロードソードではなく相手の右腕の肘関節である。


 まさか初手から、可変斬りが来るとは思っていなかったらしい。


 相手は私に、右肘関節を斬り飛ばされた。


 飛んだ相手の右腕ごと、ブロードソードが地に刺さった。


 相手がたじろいで停止し、後退するようだった。


 敢えて、それを追わずに私は再度ブレイクグレートソードを構えた。


 掛かってこい、といわんばかりに威圧した。

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