3章 女好きの執事長は全然働いてくれません

第1話

「うわぁぁぁん、ウ””ェディル””ザ””マァァァァァァァァアア!!」


突然現れてウェディルに泣きつく俺より少し年上くらいの男の人はアインズ様が言うにはこの家の執事のバルックという人ならしい。


想像していたできそうな執事とは程遠そうな情けない感じで泣きじゃくりウェディルの足元にくっついているバルックという人は俺たちの存在を気にしていないのかウェディルの足でただただ泣いている。


「どうやらまた振られたらしいですよ、アインズ様。」


バルックという人に続くように一人、また新たな人物が食堂に入ってくる。


歳は若そうだがひどく仕事ができそうな眼鏡の男性だ。


誰だろう。


そんなことを思って居た瞬間だった。


アインズ様が顔色を真っ青に変えて勢いよく立ち上がった。


「ク、クロード、お、お前、何故ここにっ……!」


「お迎えに上がりましたよ、我が主。全く、貴方という人はいつもいつも目を離せばすぐにシュベール公爵様にご迷惑をかけてばかり……。というより、バルック。貴方は本当に同じ天使補佐として恥ずかしいですね。主人の膝で泣きじゃくるなど、恥を知りなさい。」


クロードと呼ばれた執事は眼鏡を中指でクイッと持ち上げて眼鏡を光らせる。


よく見るとそのクロードという人は燕尾服を着ているし、どうやらアインズ様の執事のようだ。


……なんていうか、俺がイメージしてたできる執事はアインズ様側の執事だったらしい。


(本当この屋敷、残念なやつしかいない。)


そう思いながら取り合えずあまり人をジロジロ見るのはよくないと思い、俺はとりあえず一人だけでも食事をしようと再び朝食を食べ勧めだした時だった。


「ん?失礼。」


突然クロードさんに声をかけられ、俺は顎を優しくつかまれる。


食事に戻ろうとした俺の視線は気づけばクロードさんの顔に向けられていた。


(うわ……綺麗ない顔。)


仕事ができそうでイケメンで、随分モテそうな人だ。


なんて思いながらクロードさんの顔を見つめていた時だった。


「少しじっとしていてください。ほんの少しですが汚れています。」


クロードさんは真っ白なハンカチを取り出し、俺の口元をぬぐってくれる。


(やっぱイケメンっ!!)


顔だけで泣く紳士な行動もひどくスマートでひどくかっこいい。


こんなかっこいいの、ちょっと憧れてしまう。


「クロード、悪いがあまりその子に触れないでもらえないだろうか。その子が君に惚れては私が困る。」


「いや、惚れねぇよ。」


バルックさんを膝で泣かせたまま真剣な表情でこちらを向いて語り掛けてくるウェディル。


本当に口を開けばろくなことを言わないな、あいつ。


「そうっすよクロード!なんすか!?俺からリシュリーちゃんを奪っておきながら今度はそのかわい子ちゃんすか!?軽いにもほどがあるっすよ、あんた!」


「軽いにもほどがあるのはあなたですよ、バルック。」


泣きながら怒るバルックさんに冷ややかな視線を向けて冷たく言い放つクロードさん。


その会話から少しだけバルックさんがないてる理由が分かった気がする。


(なるほど。追っかけてった女性、クロードさんにとられたんだ。)


男の俺からしてもまぁ、間違いなく選ぶならクロードさんを選ぶだろう。


そう思えるくらいバルックさんはひどく情けない感じだ。


「あれ?っていうか誰っすか?そのかわい子ちゃん。」


情けなく泣いていたバルックさんは涙を止めて俺を見て目を丸くした。


そしてその次の瞬間だった。


「ねぇねぇ、君名前なんて言うんすか?自分はバルック・ファングっす!というかなんで女の子なのに執事服着てるんすか?」


にこにこと笑みを浮かべながら突然俺に興味を持ったのか質問攻めしてくるバルックさん。


なんというか、チャラそうというか軽そうというか……


本当に軽薄そうな感じの人だ。


っていうか……


「いや俺、男なんで。」


せめて女好きなら男と女の見分けをしっかりつけてほしい。


そう思ってあきれながら言葉を吐き捨てるけどバルックさんは信じているそぶりを見せない。


「またまた~。そんなこと言ってると君の胸触っちゃうっすよ?」


どうやら欠片も信じていないらしい。


「はぁ……んじゃどうぞ。」


あまりにも疑われないことに少しイラついた俺はバルックさんの手を掴んで自分の胸に当てる。


あまり男にべたべた触れるのは避けたいがこの屋敷の人間というなら今後の為にも誤解は解いておいた方がいい。


そう思って胸を触らせた。


だけど――――


「えぇ~いいんすかぁ~?んじゃお言葉に甘えちゃうっすよ。」


躊躇なく触らせた理由を理解していないのか軽く揉み始める馬鹿執事。


その気持ち悪さに耐えて数回もませてやるとようやくおかしいと気づいたのかバルックさんは表情を青ざめさせた。


そしてあろうことか驚いた表情で俺のまた下に手を伸ばしてきて俺のアレを触ってきたのだった。


あまりの気持ち悪さに背筋を凍らせた俺。


流石に殴ってやろう。


そう思った瞬間だった。


俺のすぐそばにいたクロードさんがバルックさんの脳天に肘落としを食らわせ、バルックさんが気づけば俺の太ももに突っ伏していた。


「全く、品がなさすぎる。」


冷ややかな瞳でバルックさんを見つめ、冷たく吐き捨てるクロードさん。


マジでかっこいい……。


「シェリー。」


「はーい、旦那様っ!」


俺がクロードさんに見とれているとウェディルがシェリーを呼びつけ、俺の太ももに突っ伏しているバルックさんを引きずり下ろした。


「どうします?この女の敵。」


ひどく雑にバルックさんの足を掴み、うつぶせ上体のバルックさんを引きずりあるくシェリー。


さすが男嫌い。


以前にこの屋敷に「男はいらない」といい笑顔で返事していた時の表情が鮮明に思い出されてしまった……。


「とりあえず拷問部屋で拷問でもしてやってくれ。そうすればしばらくは満たされて女あさりに出かけはしないだろう。頼んだぞ、シェリー。」


「げっ。私は変態男を拷問なんて嫌なんですが……。」


ひどく嫌そうな表情を浮かべるシェリーだが、以降話さなくなるウェディルを見てあきらめてバルックさんの足を引きずりながら食堂を後にしていった。


そして――――


「さて、朝食を頂き終わりましたらお暇させていただきますよ、我が主。」


「う、うむ……。」


アインズ様は顔色を蒼白にしながら再び朝食に手を付け、ウェディルも朝食を食べすすめだす。


そして食べすすめながらウェディルは口を開いた。


「ヒナタ、もう気づいていると思うがあれがこの屋敷の執事だ。頼りなさそうに見えて仕事ができる奴だ。執事の仕事を学びたいならあいつの傍で仕事をして学ぶといい。まぁ私の暇つぶし相手という仕事を選んでももちろんいいがな。」


「いや、執事の仕事学ぶんで結構です。」


すごくいい笑顔で暇つぶしの相手を求めてくるウェディルに俺は即答する。


本当に何でこの家にはまともそうな人がいないのだろうか。


俺はなんだか痛くなってきた頭を抱えながらも朝食を進めた。

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これは暇つぶしで異世界に召喚された俺のお話です~そんな俺の周り、やばい奴らばっかりなんですけど!?~【近日更新再開】 マオマオ。 @maomao_meroniro

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