第33話 ロリ先生の緻密な計画と最終準備
一抹の不安を彼女に悟られぬよう、平静を装って昼食を食べ終えると、店員さんにあいさつをし、店を後にした。
帰り道もまこちゃんに合わせて白線を歩く彼女の、小さな背中を見ながら、こんな日々も今日で終わりなのだろうかと思うと、涙が出そうになった。
しかし、最後かもしれないからこそ、今日の作戦は絶対に成功させなければならない。彼女もきっと、それを願っているはずだ。そう考え直し、前を向いて、家までの道のりを歩いた。
「午後は下であそぼう!!」
彼女は計画通り、リビングで遊ぶように、まこちゃんを誘導する。そして2人は、遊ぶ道具をリビングに持って来ようと、2階の子ども部屋へ駆け出した。俺は、絵を描いたりするために、カーペットに直接座ると予想し、邪魔にならないよう、ソファに腰掛ける。ぬり絵帳やらくがき帳など、色々抱えて下におりてきた2人は、予想通り、カーペットに正座した。ちょこんと座る姿がまた可愛い。
「なにこのぬり絵、すごーい!! まなちゃんがぬったの?」
「どれー?」
「これー」
「ううん、ぬってないよ」
「あれー?」
10分ほど、彼女たちがぬり絵を塗る姿に癒されていると、そんな会話が聞こえてきたため、どんなぬり絵なんだろうと思って見てみると、それは俺がさっき塗って、2人に見せた……「はず」のぬり絵だった。
「それおじちゃんが塗ったんだよ~。さっき見せたじゃ~ん」
「え、そうなの?! すごーい!! 上手~!!」
まこちゃんがそう言うと、2人してそのぬり絵に見入っている。
(いや、さっき2人とも、俺のぬり絵見ないで感想言ってたんかーい)
でも、喜んでもらえているようなので、頑張った甲斐があった。
その後、3人で絵を描き、俺の絵がまた賞賛されたりしながら過ごすこと約2時間、おやつの時間になった。
俺はキッチンへ行くと、冷蔵庫を開けて、オレンジジュースとリンゴジュース、そして、昨日買ってきたケーキを取り出した。ホールケーキにしようと思っていたのだが、彼女の
「ホールケーキは絶対余るから、もったいない」
という意見に納得したため、3人それぞれにカットされたケーキを買った。彼女たちは2人とも動物の「クマ」の顔を模したケーキ、俺は無難にチョコケーキを買った。
「おやつの時間だよ~」
と言ってリビングへ持っていくと、
「うわぁ~!! ケーキだ~!!」
「やった~!!」
と、まこちゃんは本当に喜んでくれた。無論、彼女は演技なのだが。
2人が食べ始めたタイミングで、
「塔の下のプレッツェル観る人~」
と言うと、2人同時に
「は~い!!」
と言って手を上げる。可愛すぎだろ。
「よーし、じゃあ今つけるからね」
と言ってビデオ用のリモコンをソファの後ろに取りに行った時、午前中に設置しておいたカメラの電源を入れる。これで、このカメラが映している映像は、リアルタイムで子ども部屋にあるパソコンに映し出されるようになる。
持ってきたリモコンを操作し、映画「塔の下のプレッツェル」を再生する。彼女が、行為へのスムーズな移行にぴったり、と言っていた映画というのは、この作品のことである。なんでも、終盤にキスシーンがあるらしく、キスが主になる今日の服を着たままの行為において、まこちゃんへ自然にキスができる流れを作るのに最適らしい。
しかし、いくらキスシーンを見たからといって、当たり前のようにキスしてくれるというほど単純ではないので、また別の計画がある。
俺が近くに置いていたハンドクリームとリップクリームを塗りながら映画を観ること約10分、ケーキを食べ終えた彼女が予定通り、ソファに座る俺の右太ももの上に座る。うわぁ。行為前なのにめちゃくちゃ刺激的だ。俺の息子は既に起立している。
興奮もあったか、(より自然に見えるように)という口実で、彼女を軽く抱こうとする。
「いやっ!!」
すると彼女は、耳を真っ赤に染めて、伸ばされた俺の手をはじいた。まこちゃんにバレるといけないので、小声ではあったが、割とガチな拒絶のトーンだったので、小声で
「……ごめん。つい」
と言うと、
「いえ、大丈夫よ。気にしないで」
と、優しい声で言ってくれた。しかし、もう一度彼女に腕を伸ばすなんてことはしなかった。
それからまた10分ほどした頃、まこちゃんが目を擦ったはずみで不意に後ろを振り向く。そして、俺の右太ももの上に座る彼女の姿を見ると、立ち上がって、俺の左隣に座ってきた。わお。彼女の計画通り過ぎて怖い。
そう、先ほど言った「別の計画」の一部がこれだ。まこちゃんが好意を寄せている(らしい)俺に、自分より親しくしている彼女を見ると、いわゆる「嫉妬心」が幼いながらもしっかり生まれ、俺にアピールしたい、独占したいという気持ちが芽生え、なにかしらの行動を起こすという説明を受けていたのだ。そして、この嫉妬心を与え続けることで、キスを許諾してもらえる可能性が格段に上がるらしい。なのでこの後の計画でも、まこちゃんの嫉妬心にどんどん火を付けていく。
まずは、
「パパぁ~?」
「ん~?」
「なんでもな~い」
「もう、なんだよ~」
というラブラブカップルさながらの会話を繰り広げる。
その後、10分おきぐらいで無言で彼女の頭を撫でる。そして、極めつけは。
「パパぁ~、チューしよ?」
めちゃくちゃうん、しよう、今すぐしようと言いたかったが、これも作戦なので全力で我慢して、
「まこちゃんがいるから、後でね」
と言う。
「え~、いいじゃ~ん」
「だーめ。後でしてあげるから。ね?」
彼女の頭をポンポンする。
「……わかった」
「うん。偉い」
そしてまた、彼女の頭を撫でる。この一連の動作を見ていたまこちゃんは、我慢の限界に達したのか、俺の左腕を両腕でギュッと抱きしめた。いや、なんだこの可愛い生き物は。可愛いとかいう次元じゃないんだが。今すぐにでも抱き締めたいのだが。
その様子を見ると彼女は、徐に立ち上がり、俺に指示するために、パソコンのある子ども部屋に向かう。リビングには、俺とまこちゃん、2人だけになった。
それからちょっとして、まこちゃんが彼女がいなくなったことに気付いた。
「あれ、まなちゃんは?」
「ん? 分かんない。トイレかな?」
「ふ~ん……」
ライバルがいなくなったことに、悲しみを感じるどころか喜びさえ感じているのか、その返事はそっけない。
そして、再び映画を見始めたまこちゃんだったが、その目線は、度々俺の膝の上に向けられている。
その時、リアルタイムでこの様子を見ている彼女から音声が届いた。そう、俺は今、右耳にあのスパイみたいなイヤホンを着けているのだ。
(聞こえる?)
後頭部の辺りを手で掻く。OK、YESのサインだ。
(じゃあ、始めるわよ)
再び後頭部を掻く。よし、これで準備は整った。
ロリ先生のロリコン教育 A @agakubonnjinn
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