読み終えて

第25話

 羽白が修復の終えた本を棚に戻す。


「ティッカさんはどうなると思いますか?」

「随分と曖昧だな」


 『常若の国ティル・ナ・ノーグ』から出た俺たちの事を、今はもうティッカさんは覚えていないだろう。俺たちは本に記されることがないからだ。それでもその行く先が羽白は気になるのだろう。


「とても素敵な方でしたから」

「そのうち、覗きに行けばいいだろう」

「ふふ、なんだか天国から見に行くみたいですね」

「ある意味じゃな」


 次に行くとき、俺たちの記録は『常若の国ティル・ナ・ノーグ』にはなく、関わった妖精たちの記憶からは消え、痕跡は何一つ残っていないのだから。

それが、司書だ。


「どうかされましたか?」

「いや、なんでも。暫くはゆっくり休めそうだな、と」


 俺は考えていたことをいつものように適当にはぐらかしたが、それがよくなかったのだろう。


「ふふ」

「なんだよ……」

「あ、待ってください倉見さん。次に世界がありますよ!」


 ああ、見たくない聞きたくないそれ以上近寄るな。そのボロボロになったものを持ってくるな。


「次も頼りにしていますよ、倉見さん」

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ユグドラシルの司書 ヒトリゴト @hirahgi4

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