幼女の仕事

バブみ道日丿宮組

お題:もしかしてジジィ 制限時間:15分

幼女の仕事

 弓で的を射た時、既に標的は死んでる。

 お祖父様から教わった大事な儀式。

「……」

 獲物に近づくと、うさぎの身体に矢が刺さってた。

 痛みを長引かせるのは五感を持つ動物として最低の行為。だから、私は刀で首を切り落とした。

 妖刀マサムネ。

 血を吸う代わりに力を与えるお祖父様の遺品。

「……よし」

 うさぎの頭を地面へと埋めた。近くには大木があるから、木の精霊となるかもしれない。お祖父様がかつて死んだものは見えぬ生き神になると言ってた。

 それは現実で、悪を狩るのも私の役目。

 妖刀持ちの宿命。

 小学校にお母様は行かせたがったみたいだけど、私はお祖父様の遺言どおりに従う。第一にこの妖刀が私以外の血に反応しないのであれば、私が狩りをするしかない。

 生きるために動物を狩り、人を守るために悪霊を葬る。

 それがこないだ9歳の儀式を終えた私の仕事。


「ただいま」

「おかえりなさいませ、お嬢様」

 出迎えたのは、妖刀の管理をしてるものと食事係。

 手に持った2つを彼らに渡すと、

「お風呂の用意ができてますのであたたまるのがいいかと」

「それとご主人様が及びになっていました」

 わかったと頷くと、2人は興味がなさそうにそれぞれの仕事場に向かった。

 うさぎは夕食に、妖刀は刃こぼれがないかのチェック、感染されていないかの汚染度のチェック。意外に私以上に関わる人のが大変であったりする。


「ほわぁ……」

 お風呂はいい。

 獲物を倒すこととか考えなくて、ただ自分のことだけに集中できる。

「……」

 生傷も結構増えてきたけれど、お母様が若いからそのうち消えるって話してたけど本当なのだろうか? 相手は悪霊だ。怨念が若さで勝てるなら、私以外の仲間も若ければ楽勝だろう。

 長湯も楽しいが、お父様が呼んでるというなら30分の休息で済ますしかない。

 普段なら2時間ぐらいは入ってられるから、かなり残念。


「お呼びになったと聞いて」

 部屋の扉をノックする。入れという言葉と同時にそのまま中へ。

「また読書の催促ですが? 私はお母様ではないのですよ?」

「すまんな、あいつにはこの文体は読めないんだよ。お前の祖父の血が流れてないから、触れることも危険だ」

 確かにそれなら私がこの屋敷にいる限りはそうするしかないが、

「お父様も読めるのだから、呼ばなくてもいいのではありませんか」

「娘が外で仕事をしてるんだ。家に帰ってきてるときぐらい家族として接したいんだ」

 ベッドまで近づくと手を引っ張られる。

 たくさんのチューブがお父様に繋がってる。

 これは妖刀の拒否反応によって、身体が負傷した結果。

「まぁいいですけど、夕飯までの間だけですよ」

 お父様は満足そうにお祖父様に似た笑みをこぼした。

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幼女の仕事 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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