あの人のいない世界
バブみ道日丿宮組
お題:彼女が愛したお嬢様 制限時間:15分
あの人のいない世界
たとえ世界が滅びようと守れと、彼女に言われた。
その通り、世界は滅んだ。
正確には崩壊寸前ともいえる。なんだって滅んだらボク自身が日記をつけることもないからね。
「新しい実験?」
「違います。ただの日記ですよ」
彼女が守れと言ったお嬢様は疑う目でノートを覗いてくる。
「私に見せられないようなものを書いてるんじゃないんでしょうね?」
「まさか。研究データだって、見せてるじゃないですか。でも、日記なので読まれたくないってのは少しあります」
そういうと確かにとお嬢様は腕を組み、何かを考える様子を見せた。
「いいわ。私も描いた絵を見せたくないしーー」
「それは見たことありますし、ネットに投稿してありますよ?」
信じられないものを見つけてしまったような怯えた様子に豹変したお嬢様は、
「な、何かってにあげてるのよ!? 貴重なリソース使っちゃいけないでしょ!」
あたふたし始めたので、パソコンを開き画像サイトを見せる。
「評価はいいですよ。まだ絵を描ける人類が存在してるって」
「わ、私の本業は地球の復旧作業よ!?」
「わかってます」
顔を真っ赤に染め上げたお嬢様は本当に可愛らしい。
彼女が愛して、守れといったのが凄くわかる。
「寂しそうな顔したわね。あの人はそんな表情をさせるために私をあなたに預けたわけじゃないでしょ? しっかりしなさい」
まだ赤い頬でありながらお嬢様がボクを気にかけてくれた。
今日は赤飯でも炊いた方がいいのではないだろうか。赤い着料はまだ研究で一部しか使ってない。実験ついでに試すのもありか……な?
「ありがとうございます。今晩はいいものを出してみようと思います」
「あまりリソースを使わないでよね?」
はいと短く頷く。
地球のリソース。
それは資源であったり、データパンクであったりする。
アイスエイジと火山噴火によって壊れた地球のなかで奇跡的に残ったものは、生き残るために奪い合いになることも最初はあった。
けれど、お嬢様が代表となったおかげでリソースの分配はうまくいってる。
言葉にはしなかったけれど、お嬢様のカリスマがあったからこそ画像サイトを利用させてもらえてる。生き残る力をえられると研究仲間のメールには書いてあった。
「私はあの人にはなれないけど、あなたを導くことはできるわ。かつてあの人がそうしてたようにね」
やさしい温もりがボクを包み込んだ。
「お嬢様、あまり無理をするとお腹の子どもに響きますので」
「いいじゃない。たまには私に甘えてよ」
そうですねと。
ボクはお嬢様のお腹に耳をつけて、新たな生命の誕生を感じた。
あの人のいない世界 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます