第25話 お願いされて
「頼む、時野君! 君の力を貸してくれないか。お礼なら、何でもするから」
「うーん」
学校の休み時間。俺は机を挟んで目の前に立った大人から必死に、頼まれていた。お願いしますと、何度も。
顔の前でパンッと両手を合わせながら、必死に頼み事をされているような状況だ。しかも、服の上からでも分かるぐらいムキムキの成人男性に。
目の前に立たれると、ものすごく威圧感のある先生だな。
筋骨隆々なその大人というは、別クラスの担任である
全校集会や、廊下とかで何度か見かけたことがある程度。話したことは1度も無いと思う。
そんな先生が突然、俺のクラスに入ってきて頼み事をしてきた。
「いやでも僕は、今までバスケットボールをやったことがないので教えられるような知識とか無いですよ?」
「それでも良いんだよ。全国の大会でチームを導いて優勝した君の目から見て、何か少しでもアドバイスすることがあれば、ぜひ教えてほしいんだ」
「全国大会って、ドッジボールの大会ですよ」
「同じ球技じゃないか。だから、何か相通じるものがあるはず」
「いやぁ、どうでしょう」
頼まれた内容というのが、住岡先生が顧問しているというミニバスケットボールのチームが練習している様子を見て、指導してほしいというものだった。
住岡先生も色々とバスケットボールに関することを勉強して、それをクラブ活動の練習に参加している子たちに教えている。
だけど、試合で勝つことが出来ない。大会にも何度か出場したことがあるらしい。けれど、地方大会の2回戦までに負けてしまうという。3回戦まで勝ち上がることが出来ない。しっかり練習もしているというのに、成果が出ない。
そこで、俺に練習を見てもらおうと考えてお願いしに来た、ということらしい。
子どもの俺に頼んでくるなんて、よっぽど切羽詰まっているようだ。しかも俺は、今までバスケットボールの経験が無かった。だから、教えられることなんて何も無いと何度も言っている。だけど、住岡先生は引き下がらない。
全国で優勝をしたという経験があるからこそ、何か分かることがあるんじゃないかという期待の目で見られていた。
「うーん」
「何もアドバイスが無かったとしても別にいい。とりあえず少しだけでも見てくれ」
「……わかりました。ちょっとだけですよ」
「引き受けてくれるか!? ありがとう、時野君!」
必死に頼み込まれて、練習を見てみるという約束を交わしてしまった。
嬉しそうに、自分が担任しているクラスに戻っていった住岡先生。これは、気軽に約束してしまったのは、間違いだったかな。少し後悔する。
でも、新しいことに挑戦してみたい、と思っていた丁度よいタイミングだった。
ドッジボールの全国大会で優勝することが出来て、狙うは2連覇と周りはどんどん盛り上がっている。けれど、俺は少し意欲を無くしていた。
別の新しいことに挑戦してみたい、と思ってしまった。そしてもう、決めている。一旦ドッジボールから離れて、何か新しいことをやってみるぞ、と。
次に何をやってみようか考えている最中だったので、ミニバスの話はちょっとだけやってみようかという気になった。
とりあえず、お願いされた練習について見てみる。
放課後、今日は習い事がない日だったので早速、体育館に練習を見に行ってみた。そこで毎日練習しているらしいので。
行ってみたら、確かに練習していた。バスケットボールの知識が無いので、それがどんな効果のある練習なのか、まだ分からない。
ただ、一瞬見ただけで体の動かし方が合っていないと思った子を何人か見つけた。
「おぉ! 来てくれたのか、時野君! さぁ、ちょっと見てやってくれ」
「はい。見学させてもらいます」
ということで、練習する子どもたちを見てみる。練習していたのは全員で22人。男女が別々のチームなのかな。学年は、1年生から6年生まで居るようだ。6年生の子たちが、小学生にしてはかなり身長が高い。
バスケットボールで身長が高いのは、かなり有利だというのを聞いたことがある。ミニバスでも、そうなのだろう。見た感じだと、強そうなチームだけど。
少し小さめのボールで、ドリブルの練習やシュートの練習を繰り返していた。
やっぱり、知識がないとアドバイスすることは難しいかな。技術に関して専門的なことは何も言えない。だから、体の使い方について気になったことを聞いてみるか。
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【未完】世界を救った勇者は、現代の日本で悠々自適な生活を送りたい キョウキョウ @kyoukyou
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