『春の歌』を歌う君と、もう一度ここで

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第1話

『桜はね、ずっと咲いていたら綺麗じゃないの。

いつか散っちゃうから綺麗なの。』

彼女はあの坂の上で僕にそう言った。

僕にはその意味が分からなかった。

怪訝そうな目で彼女を見つめると、彼女は微笑みながら『君にもこの意味がいつか分かるよ。』

と言った。


あの日から11年という年月が流れた。

あの時、4歳だった僕も今では15歳になった。

今日は、2040年4月6日だ。

ゆっくりと過ごしているうちに中学校を卒業していたらしい。

明日から、藤崎学園という高校に通うことになった。今日はその学園の入学式なのだ。

真新しい制服に袖を通し、外へ出る。

今日から新しい生活が始まるというのに、なんとも気乗りがしない。気だるげな足取りで階段を降りる。

家の周りを軽く歩いているとスマホにメールが来た。

『先に学園に向かっといて、徒歩で by母』


帰りたい。めんどくさい

こんなにも高校生活の幕開けを絶望で迎える

青少年がかつていただろうか、、

断じていないだろう。そんなくだらないことを考えながら歩いていると。


11年前の彼女との思い出深い坂に着いた。

通学路ではないのに、無意識の内に来てしまったらしい。

誰もいる訳ないのに。

僕が探している彼女は11年前にいるのだ。

今、ここに、いるわけが無い。


その時、春先にしては少し暖かく生ぬるい風が

吹いた。下を向き、風をやり過ごすと

坂の上に女の子がいた。

あの制服と色は、僕と同じ藤崎学園の一年生だ。

挨拶したかったが、生憎僕にそんなコミュ力はない。歩き去ると、後ろから声が聞こえた。

なぜか聞き覚えのある声だった。

その子は僕にこんなことを聞いてきた。


『咲いている桜と、散って舞う桜 どっちが好き?』


この時から、11年間止まっていた歯車が

動き出したような気がした。

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『春の歌』を歌う君と、もう一度ここで 3.14159265358979 @kouki0205

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