プロローグ 追放 下
「なっ!?」「こっ、これは!?」「!?」
異人同様の反応。三人とも手のひらで顔を覆っている。かくいう僕は目を瞑り、ただひたすらに神経を集中させた。
パリンっ!
そんな音が響き渡る。それと同時に光は収まり僕は集中を切り目を開けた。そして眼前の光景に目を丸くする。
気づけば背後の三人も立ち直り目を開けていた。
「なんだ!?なにがおこったのだ!?」
「一見、何も変わっていないように見えます、が!?」
父の言葉を引き取った司祭が絶句した。
たしかに一見何も変わっていないように見える。・・・ある一点を除いて。
「なっ、なぁっ!?わっ、割れている!?」
そう。先程の音は水晶が割れた音だったのだ。
「こっ、こんなこと前例が!?いやすっ、すぐに持ってきます!」
割れた水晶を抱え、新しいのを持ってこようと走る司祭。そんな中、兄がめざとく僕が最も気にしていることを指摘してきた。
「なっ!?」
「どうしたのだ!ユオン!」
「父上!奴は、奴は契約ができておりませぬ。いやそれ以前に顕現すらできていません!」
そう。僕が一番気にしていたのはそこだ。
普通、水晶に触れると、水晶と契約者の付近に、パッとモノが現れるのだ。
しかし今回はそれがない。その事実に、僕が打ちひしがれていると
バンッ!
突如として、背中を押された。
体制を立て直し、勢いよく振り向く。
するといたのは独裁者然と立つ父だった。
「フンッ!!無能がっ!!底辺は底辺らしく、だまって見ておれ!ユオンが火の魔法杖と契約するのをなっ!!ユオン!!早くせい!」
「はっ、はい!父上!」
ちょうど良く司祭が新しい水晶を持ってきた。兄がそれに向け手を当てる。
「貴重なのでもう割らないように…。」
「あんな忌み子と一緒にするな!黙っていろ!」
司祭が地雷を踏んで雷に打たれた。気持ちはわかるけどこの状況じゃあ。まぁそうなるよね。
今度は光ったりも割れたりもせず、期待通りプレミア家ご自慢の火属性の魔法杖が出てきた。
兄が魔法杖に触れる。その瞬間、兄の手の甲に小さな赤い魔法陣が浮かび上がった。
しばらくするとそれが消え、同時に杖も消える。
兄は実感がなさそうに両手を見つめる。そして手を翳し魔法杖を呼び出すと古代語で「火(ファイア)。」。そう唱えた。
すると杖の先に魔法陣が現れ、そこからマッチ棒程度の火が顕現する。契約成功だ。
それを見た父は我が手柄の如く
「流石は私の息子だ!良くやってくれた!ユオン!」
「ありがとうございます!父上!」
そんなやりとりを口にする。褒められた兄は本当に嬉しそうで誇らしそうだった。
そんな兄を見ると父は満足そうに頬を緩める。しかし次の瞬間その頬を赤く昂らせ僕に向き直ってきた。
「この、無能が!ここまで育ててやったというのに!やはり忌み子は忌み子かっ!」
声を荒げる。矢継ぎ早に言葉が飛んでくるが無視。というか唾が飛んできて汚い。
僕はバレない程度に後退る。すると先ほどまで立っていたところに大粒が飛んだ。危なっ!?
「だがそれもこれまで!アレン!貴様をレオグス・フォン・プレミアの名において勘当する!二度とプレミアの姓を名乗るな!」
「はい」
やったーー!!内心狂喜乱舞にガッツポーズ!しかしそれを悟られないように殊更大人しく返事をした。
「今までお世話になりました。」
早く自由になりたい一心ですぐさま心にもない社交辞令を口にする。
それを聞きフンッと鼻を鳴らしながら父———いやレオグスは踵を返そうとしたがその時には僕はもうすでに教会を出ていた。
「やったーーー!!!自由だーーー!!!」
耐えきれず大空に向け大咆哮。声に出したら心だけじゃなく体までもが軽くなった。
こうして僕の数奇なる物語は始まったのだった。
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あとがき
初めましての方は初めまして。そうじゃない方はお久しぶりです。琴葉刹那です。
はい。プロローグ下でございます。これ書くのに犠牲になった眠くて簡単な数学I & Aの授業を私は決して忘れない!
今のところ六章まで大まかに考えてます。細かいところというか物語はまだ三話だけど。
それではまた次回、ゆっくりしていってね!
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