第42話

2人が出会ってから、2年が過ぎていた。



アリム20歳の1月31日。



「じゃぁ、行って来るよ」



昔のようなボロ切れは、もう着ない。



服も靴も、腰に挿している剣も、すべて新しくなっている。



店内も、ローズの意見を採用しキッチン用具も取り揃えるようになっていた。



そして、一番かわったのはホワイトだった。



稼いだお金で隣の土地を買い、ホワイト用の小屋を作ったのだ。



その場所は快適らしく、いつもホワイトの楽しげな声が店まで届いてきていた。



「行ってらっしゃい」



サリエが店から手をふる。



「行くぞ、ホワイト」



「キュウ!」



ホワイトは返事をし、空高くまい上っていった……。


☆☆☆


待ち合わせ場所は塔と街の中間地点。



ちょうど2人が抱き合った、あの洞窟だった。



先についたのはアリムで、しばらく待っていると空に赤いひも状のものが見えてきた。



それはあっという間に近づいてきて、そして洞窟の前で止まった。



赤い竜に乗った、ローズだ。



「おまたせ、アリム」



「あぁ、待ちくたびれた」



そう言い、ローズを抱き抱えるようにして竜からおろす。



そして、2人はそのまま強く強く抱き合った。



2匹の竜が、少し頬をピンク色にそめて目をそらす。



今日はアリムとローズにとって特別な日だった。



「ローズ、聞いてくれ」



「なぁに?」



ローズから身を離し、アリムはポケットから小さな箱を取り出した。



その場に肩ひざをつき、箱を開けてローズの前に掲げる。



「俺と、結婚してくれ」



キラキラと光る指輪



ローズは思わずアリムに抱きついていた。



「はい!!」



「もう、塔には帰さない」



「えぇ」



「誰にも、奪われたりしない。ずっと、永遠に、俺のものだ」



そして、再び唇は重なりあった。



それは、喜びで流した暖かな涙の味がした……。




END

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

姫を助けたのはボロ布をまとった青年でした 西羽咲 花月 @katsuki03

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ