第41話

☆☆☆


家族の話し合いは夜中まで続いていた。



店のほうから時折聞こえる怒鳴り声や泣き声をきにしつつ、サリエは眠りについた。



アリムはさすがに眠れないらしく、月明かりを頼りに古い本を広げていた。



そして、店の中が静かになって数時間後、ようやくローズがドアを開いた。



「話は終わったか?」



サリエを起こさないよう、そっと話かける。



「えぇ、終わったわ」



随分泣いたのだろう、ローズは鼻声になっていて、月明かりで時々見える目は赤くなっていた。



「大丈夫か?」



「平気よ……」



呟くように返事をして、アリムの横に座る。



その表情は少し暗く、アリムはローズの肩を抱いた。



「どういうことになった?」



「あたし……。あたしと、家族みんなで、おばあ様の塔で暮らすことになった」



「塔で?」



驚き、思わず声が大きくなる。



「どうして? あんな不便な場所で暮らすことないだろ?」



「わかってるわ。でも、塔に残してきた兵士たちを置いてはおけないって、おばあ様が。それなら、みんなで塔で暮らそうって事になったの」



まさかそんな話になるとは思っていなかったアリムは頭をかかえた。



昨日の売り上げを見ると、この調子で行けば隣の土地を買ってローズの親の住む家を建てることができると、そう考えていたのだ。



「助けてもらったのに……また戻ることになって、ごめんなさい……」



ローズが鼻をすすりあげる。



アリムはその体を強く抱きしめた。



「毎月、月の終わりの日に会いに行く。ホワイトに乗って」



「あたしも……塔には赤い竜がいるから、それに乗っていくわ」



「必ずだ。忘れんじゃねぇぞ?」



「アリムこそ」



囁きあい、唇を重ねる2人。



その日のキスは、涙の味がした……。

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