最終話 新たな旅たち
成田空港の到着ロビーからキャリーバックを転がしながら慌てて出てくる二人組。
「もう、あんたが寝ぼけて迷子になるから時間とったじゃない」
「ごめーん」
「とにかく、早くタクシーに乗るよ。おそらくぎりぎりだわ」
二人はタクシーに乗り込むと行き先を告げた。
「「お台場へ」」
今年も暑い夏真っ盛りだが、お台場にはたくさんの大学生が集まっていた。
そう、彼らは学生M&Aクイズ関東地区予選の出場者たちだ。
そう、あれから一年。
早いもんで、ハーバードへ行き、クパチーノへ移り、そして今、一年ぶりの日本帰国だった。
あのときと同じく、今年も学生M&Aクイズ大会が始まっている。
すでに第一問を終えて、第二問が出るのを待っている。
司会者であるアナウンサーが舞台袖でしかめっ面をしている。
そのとき――
「ゲスト準備できました。第二問どうぞ」
「よしきた」
アナウンサーは元気よくステージに飛び出した。
会場からは大歓声が上がる。
「お前ら、第二問はスペシャルゲストが出題する。心してかかれよ」
「「おおおおお!!」」
「ゲストは今日のために緊急帰国をしてくれたこの二人だ。
昨年優勝したチーム東大FAから、フユミとミユキ!」
「「おおおおおおおおおおおお!!」」
(チーム東大FAではなくて、チームFMになったんだけど……まあいっか)
大歓声の中、フユミとミユキがおずおずとステージに出ていった。
会場の出場者たちがこの二人を知らないはずがない。
昨年の全国大会優勝者、いわば最も身近なアイドルである。
どこからともなく、二人を迎えるコールが鳴り始めた。
その声は次第に大きく、そして会場全員の大合唱となった。
「「「Fカップ!Fカップ!!」」
「「「Aカップ!Aカップ!!」」
マイクを渡されたミユキは、その合唱を聞いてがっくりするとともに、緊張感が嘘みたいに消え、会場全体に向かって高めの声で語りかけた。
「出場者のみんな!Aカップって言った奴、第二問失格にするから気を付けてね!」
「でも本当にAカップだけどね。アメリカじゃFitするブラが売って無いって嘆いていたじゃん」
「し、しーっ」
会場がどっと沸いた。
ミユキとフユミは苦笑いしながら目を見合わせた。
――私たちも、昨年ここからすべてが始まったんだよね。
ここにいるみんなが、何かをつかんで新しい旅立ちができますように……
せーの……
「「みんな!第二問いくよ!!その前に……
ハーパートに行きたいか~!!!」」
<完>
めざせ!学生M&A世界一♫ どまんでぃかっぷ @domandacup
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