カラフルキノコ

 もう少しこの街で過ごして、王都ライジェルへ向かう予定でいる。そのことは双子にはまだ伝えていないけど、2人とも私が王都を目指していることは知っている。

 シーラが扉から顔を出し、声をかけてくる。


「起きたかしら? 今日は朝から精が出るようロータスと肉のトマト煮込みなんだけど、食べる?」


 精がいるのはお2人さんだと思うんだけど……ここの家の壁、薄いって! 絶対双子にも二人の夜の運動が聞こえてると思うし、イヤープラグいるって!

 準備をして部屋を出ようとすれば、ギンがジッと一点を見つめ止まっていた。


「ギンちゃん、どうしたの?」

「だえ……」

「大丈夫?」

「だえ!」


 本当に? ギンの身体を確認するけど、ちょっと成長したくらいで他は何も変わりはなさそう。ギンを肩に乗せ、キッチンにいるイーサンとシーラに挨拶、テーブルの席に着こうとしたら双子に後ろから強く抱えられる。


「「カエデ、おはよう!」」

「力強すぎて、苦しいし」

「そんなことないよ」


 ミラがなぜか嬉しそうに言うけど、そんなことあるんだって!


「そろそろ本気で痛いから離して」


 みんなでテーブルを囲い、シーラの手料理を口に入れ目を見開く。


「美味しい!」

「あら、ありがとう。たくさん作ったからいっぱい食べてね」


 好みの味だったのでガツガツと食べる。


「これはなんの肉?」

「ブルとオークの睾丸よ」

「え?」


 えぇぇ……睾丸、しかもオークの……オーク肉は今まで避けていたんだけど。

 スプーンに載ったミンチされた睾丸肉をしばらく見つめ、口に入れる。


(ん。美味しいし、いいや)


 モキュモキュと睾丸を食べ終え、ユキとうどんをモフモフしながら寝そべり妖精たちと日光浴をしているとミラとミロが庭で剣の稽古を始めた。

 ミラが剣を振りながら尋ねる。


「カエデも一緒に稽古する?」

「今日は指一本動かさない予定だから、無理」

「あれ、カエデ、その光は何? この前のシャボン玉の中の光と似ているね」


 ミロが首を傾げながら言う。

 は? 光? 起き上がり自分の回りを見れば、大量のカラフルキノコに囲われていてギョッとする。


「え? ギンちゃん! これ何? なんで光ってるの? え? え?」

「転移だえ~」

「え? どこに?」


 ギンの身体からフワフワと輝く胞子が次々と現れるとカラフルキノコに吸い込まれていき、キノコたちの輝きが増す。


「ヴゥー」

「キラキラ凄いの!」

「これは遠くに行くわねぇ」


 ユキはやや警戒しているけどオハギとチズコは嬉しそうに小躍りを始めた。踊る前に誰か説明して!


 輝きに一気に侵食されると双子が驚いたように叫ぶ。


「「カエデ! 体が透けてる!」」

「えぇぇ」


 見下ろせば身体は透け、地面が見えた。


「「カエデ!」」

「ちょっと! なんなんこれ! ミロ、ミラ――」


 最後まで伝えられずに眩しさから目を閉じた。







**

お待たせをしておりました。お久しぶりです。

ゆっくりとですが再開したいと思います。

よろしくお願いいたします。


トロ猫

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【Web版】一人キャンプしたら異世界に転移した話 トロ猫 @ToroNeko0101

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