収拾とキノコ収集
目隠しのために出していたスノードームを割り、イーサンと双子に歯を見せる。
「見て。反乱騎士たち大人しく投降するって」
「カエデ、お前……一体何をした」
「あー、それは――」
丁度、開けた穴の下からシーラが見えたので指を差しながら言う。
「イーサン。シーラ、シーラ」
「シーラ!」
イーサンが穴に飛び込み、シーラと抱擁してキスをする。仲がいいじゃん。
双子も穴に飛び込むと4人は嬉しそうに抱き合った。
「キャウン!」
「うどん!」
私もうどんに抱き着きスリスリをする。相変わらず、獣臭いけどこれがいい。
「ユキちゃんもこっち来ないの?」
仕方ないわね、とでも言うかのようにユキがペロリと私の頬を舐めたので抱き着くと怒られた。
「ヴュー」
「ちょっとくらいいいじゃん! ユキちゃんのケチ!」
◇◇◇
領主邸でのシーラ奪還から1週間後、イーサンたちの家で目覚める。
時計を見れば午前8時。結構ゆっくり眠ることができたのでスッキリしている。
今回の騒動のことでいろいろと冒険者に絡まれたので宿から撤退、イーサンたちから使っていない部屋を借りることにした。ユキとうどんは、家の中は人口密度が高くてただでさえ狭いから早々に庭へと移動した。
「ギンちゃん、おはよう。お腹空いたね」
「おはようだえ~」
「あれ、ギンちゃん、ちょっと大きくなった?」
「成長しただえ~」
まだまだ肩乗りサイズだけど、ギンの成長は普通に嬉しい。
「あれ? 何、これ」
シーツの上、それからベッドの枠に生えたカラフルなキノコを凝視しているとオハギが嬉しそうに言う。
「ギンのキノコなの!」
「カエデ、あそこにも生えてるわよ」
チズコが葉っぱで指差した天井を見ればカラフルキノコが2つ生えていた。いや、ここ人の家だから。キノコを生やすのやめて。そう注意しようとしたけど、オハギとチズコがギンの成長を祝う胴上げをしていた。
ギンは胴上げされるたびに嬉しそうにだえ~と喜んでいる。んー、注意は今はいいっか。
チズコのシャボン玉に乗って天井に生えたキノコを回収する。淡い黄色とピンク色の小さなキノコは可愛いけど、一応手袋をつけている。だってほら……デンジャラスの可能性高いじゃん?
無事キノコをゲット。ため息をつく。
この5日間、本当に忙しかった。物凄く働いたような気がする。今回、シーラだけを助ける予定だったけど……結果的にガーザの安全に貢献したらしく、その報酬はちゃんとガーザの冒険者ギルド長から貰っているから不満は言わない。でも、おかげで食材とかの買い物が全然できていない。毎日、イーサンとシーラのお礼だというご飯を食べているから問題はないけど。
シーラ救出の日、あれから老騎士や冒険者たちとともに反乱した騎士や私兵を全員捕縛した。騎士の大部分がオハギのグロショーで戦意を消失していたので楽だった。私兵は人数が多かったものの収容されていた冒険者たちの協力のおかげで無事に捕縛できた。
反乱していない騎士たちもそれなりの人数いたけど、あの日はルカによって屋敷の騎士たちと私兵の多くが反乱分子に変わっていたという。どうやら、あの日に領主を完全に殺害する計画があったと反乱した騎士たちが尋問の末に漏らしたらしい。結局、自称王都から派遣されたダンジョンの『調査員』も先にルカが死んだ情報を掴んだのか、ガーザの街に現れることはなかった。
領主の毒の進行はギルド長よりも酷く、看護カプセルに3日ほど入れてようやく領主は目覚めた。不思議水もギルド長よりも多く使った。
(不思議水の減りがちょっとやばいかも……)
領主は目覚め、事情を知ると即リスのおっさんを廃嫡したという。後継者は親族の中から養子を迎える予定だと元気になったガーザのギルド長から聞いた。
地下牢から誘拐された無実の女性の半分ほどはいまだに行方不明らしい。領主は廃嫡したリスのおっさんことオシリスに行方不明の領民の女性たちを奪還するように命令した。オシリスとともにあの老騎士も女性たちの奪還に向かうと志願したらしい。まぁ、頑張って。
領主への謁見という名のお見舞いにも行った。ガーザの領主の印象は優しいお爺ちゃんという感じの人だった。一応オスカーの書状を見せ、ネルソンから得た今回のガーザの事情はギルド長から聞いてくれと伝えた。
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