マナーの悪い車に遭遇したときに、相手を完全に許せる魔法を教えます。

ただ巻き芳賀

短編 マナーの悪い車に遭遇したときに、相手を完全に許せる設定を教えます。(落ちは下品です)

下品な落ちが苦手な方はブラバ願います。


 長く車を運転していると、無理な追い越しをされてヒヤリとすることありますよね。


 例えば、追い越し車線を走っていると、スピードを出して後方から急接近して、車間を詰めてくる車に遭遇することがあります。

 安全な距離感・・・を意識する私にはかなりのストレスになります。


 そういうときは、車線を譲って先に行かせるのですけど、そんな間も無いくらいにサッと走行車線に移り、勢いもそのままに追い越し車線の私の車を追い越していきます。


 こっちは走行車線より明らかに早く、しかもちゃんと前の車と同じ程度の速度を維持して走っているのにですよ。


 もしかしたら、安全を意識する私の距離感・・・が少し長めなので、前の車との車間が気に食わないのかもしれませんし、私のブレーキの踏み方がストレスになるのかもしれません。


 高速道路では後続車を驚かさないように、ブレーキを控えるようにしていますし、車が車線の真ん中になるように意識していますし、とにかく後続車にストレスを与えないように気を配っているつもりなのです。


 なのに、たまに何を急いでいるのか、レーシングゲームのように走行車線と追い越し車線の行き来を繰り返し、縫うように走って先に行こうとする車に遭遇するのです。


 ちょっと怖いですよね、こういう車。


 接触されたらどうしよう、巻き込まれたらどうしよう、バイクにでも当てやしないかな? なんて心配ばかりしていまいます。


 こっちが時間厳守の用事で出掛けていれば、前の方で事故でも起こして渋滞になったら間に合わないかも、なんて考えたりもします。


 これまでは、こういう運転をする人にも何か急がなければいけない理由があって、周りに迷惑を掛けるのを承知で無理な運転をしているのだと思うことで、心を落ち着かせていたのです。


 この場合、本当の理由は不明なので、私が自分の心を落ち着かせるために勝手に相手のシチュエーションを想定して設定を決めるのです。


 ……そうですね例えば、

 1.会社に遅れそう

 2.待ち合わせに遅れそう

 3.家で事件事故があり帰宅を急いでいる

 4.誰かが重体で亡くなりそう


 私の場合、1と2は大したことない理由です。

 この程度の理由で他人を事故に巻き込むリスクを負ってまで、危険な運転はすべきでないので、とても私の心は納得できません。


 3はかなりの理由なので仕方がない側面もありそうです。

 それでも明らかにスピード違反ですし、これで事故が起こって巻き込まれることを考えると、私としてはやはり看過できないものがあります。

 ですから、私の心としてはかなり納得できますが、完全には承服できず僅かに不満が残ります。


 だって、そんな危険な運転で短縮できる時間なんてほんとに僅かな時間なんです。

 どうせ先の信号で私と一緒に引っかかって、僅か数台前にいるだけなのです。


 高速道路で三十分危険な運転を続けても、せいぜい三、四分早く到着するだけです。


 最後の4は、理由として私の心は納得できます。

 もちろん事故を起こされてこちらが被害を受けては困りますが、それでも私はこの理由なら心情的に許してしまいます。不法行為ですけどね。


 いつ大切な人が亡くなるか分からないので、危険走行する運転手は一秒を争ってたどり着きたいのです。

 大切な人の死に目に会うためならやむを得ないか、と私には思えてしまいます。

 

 でも、このシチュエーションを想定すると、私の心情では相手を完全に許せますが、凄く暗い気持ちになります。

 知り合いの運転する車に同乗していて、無理な追い越しに憤慨する知人運転手に、4のシチュエーションを話したら確実に怒りは収まりましたが、車内がもの凄く暗くなりました。


 誰だって誰かの死を経験しているのです。


 その経験を心の中で置き替えてしまい、悲しい気持ちになってしまうのです。


 私は『4.誰かが重体で亡くなりそう』のシチュエーションを想定するのは封印しました。




 それから僅か数日で、最良のシチュエーションを想定して設定することに成功しました。


 

 それはズバリ心の中でこう呟くのです。




『あの運転手う○こ漏れそうなんだ』




 この設定は凄いです。

 こうかはばつぐんだ!


 いい大人になって車内で運転しながら漏らすのは、絶対に避けたい恥です。

 これから誰かに会うのかもしれません

 助手席に誰かが乗っているのかもしれません。

 その状況で漏らすなんて、大人としてあってはならないことなのです。


 そして、漏らしてしまった場合、それを自分で掃除する辛さ、情けなさは想像にあまりあります。


 この設定なら、私の心情としては危険な追い越し運転も許せてしまいます。

 そんなんで許せる訳がないと思う方は、是非一回、危険な追い越し運転の車を見かけたときに、この設定を使ってください。

 その場で憤りが収まります。完全に。


 知り合いの車で危険な追い越しをする車に遭遇したら、この設定をためらわずに声を出して使ってください。


 確実に車内が笑い包まれます。


「なんだ、あの車は! あんなに急いで危ないじゃないか!」


 そこですかさず設定を声に出す。


「きっと、あの運転手う○こ漏れそうなんだよ」


「……それじゃあ、しょうがないか」


 となります。

 使ったことは何回もありますが、今までの鎮静化成功率は100%です。


 でもこの設定は下品なので、ちゃんと自分と相手の距離感・・・をみてから使ってくださいね。


 運転と人間関係、どちらも距離感・・・が大切ですからね。


後書き

※この設定は、危険な追い越し運転を正当化するものではありません。

あくまで、自分の心を落ち着かせて交通事故を防ぐことが目的です。

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