会話
俺は女を気にせず自分の中に深く潜った。どうやって金稼ぎをするか。俺は考える。新しくクランを作るといっても費用がかかる。クランメンバーに払う給与も。とりあえずバッと稼げるいい方法でもないかな……俺は思った。
「うんしょ……うんしょ……あれーー? おかしいな……」前の女がなんだかカバンの中を覗き込んでいる。
「あれ? どこにいったんだろ。絶対にここにあったハズなのに」と小声でつぶやいている。一体なんだこの女は。落とし物でもしたのかな。
するとその女は荷物の中身をテーブルの上に出してきた。服や食料や食器などの日用品、あとは本やなんと下着類までテーブルの上に出してくる。俺はそれを見る。思わず顔が赤くなるのを感じる。なんだこの状況は。ちょっと微妙な感じた。
「コーヒーになります……えっ」テーブルの上には大量の荷物が置かれていたのでコーヒーを置くスペースがなかった。
「あっ……大丈夫です」と言いながらその女はテーブルの荷物を片手で払うように動かしスペースを開けた。小物類がテーブルの下に落ちる。カコンカコンと小物類が落ちる音がした。女はそれを気にせずに開いたスペースを指差し言った。
「どうぞ。ここに置いてください」
「あっはい」店員は言った。
「あれーー。どこにいったんだろ」女は叫んだ。そしておもむろに立ち上がりカバンを逆さまにして全部テーブルの上にぶちまける。
「あれ? ない! ない! どこにいったんだろ。あれ! これゴミだヤバ」と言って笑いながらそのゴミをテーブルの外に投げ捨てた。一体なんなんだこの女は。
「なにかお探しですか?」やや引きつりながら俺は言う。女は驚いたように俺を見た。
「えっ? あっ。財布が見つからなくて。さっきからずっと探してるんですけど。あたしあれどこに入れたんだろ」女の子は脳天気に頭を掻いていた。
「それは大変ですね」俺は言った。するとその女は俺を制止するように手のひらを向けて笑顔で言う。
「あっ! 大丈夫ですよ! ちゃんと自分で探しますので、お気になさらず」と人懐っこい笑味でそう言う。いや、別に一緒に探すなんて一言も言ってないんだが。
「あれーー。本当、どこいったんだろ」その女の子は探し始めた。
「ま、いっか。コーヒー飲もう」とマイページな感じでその子は両手でコーヒーを飲み始める。ズズズズ……その子は音をたててコーヒーを飲む。
「ひょっとしたらスリかもしれないですね」俺は話しかける。
「えっ?」その女の子は周りをキョロキョロしたあと俺に言う。
「えっ? ここらへんスリが多いんですか?」
「えぇ。見たところ君ってスリに狙われそうな感じだから。この街に来たのは初めてですよね? そういう人って狙われやすいんですよ」俺は笑って言った。
「そっか……あっひょっとしてさっきのおじいちゃんかな。でも疑うのは良くないか……」その子は独り言のようにつぶやく。マジか。あのジジイはスリもやってたのか。人の善意を食い物にするジジイだったからな、ま、やりそうな奴ではあったが。
「さっきは大変でしたね。見てましたよ。おじいちゃんが急にあんなことするなんて」俺は女に言う。
「いや、でも私もスキがあったんです。まさか弱ってるおじいちゃんがあんなことしてくるとは思わなくて……スキを見せた私も悪いなって」女が何故か自分を責めだした。
「悪い? そうですか。僕はそう思わないですよ。さっきのおじいちゃんが悪いですよ」俺は言う。すると
「そう思いますか!?」女が急に食いついてきた。
「そうですよ。君はなんにも悪くないですよ。被害者なんだから。あんなジジイに容赦はいらないですよ。ジジイだから性犯罪しても良いってことにはならないですからね」俺は言う。するとその女はニコリと笑って言った。
「確かにそうですね」
俺はその笑顔が眩しくて思わず目を逸らす。
愛を歌うシスターとデスゲーム〜ハズレ能力【古い武器と喋る能力】を持つ俺。追放され最強の聖剣を手に入れる〜 水ManJu @mizumanjuu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。愛を歌うシスターとデスゲーム〜ハズレ能力【古い武器と喋る能力】を持つ俺。追放され最強の聖剣を手に入れる〜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます