アンテグラル
【旧】鹿田甘太郎
アンテグラル
残暑のひぐらしを聞きながら、テレビ画面へ釘付けになっていた。
日本人選手初の大記録ということもあり、研究室で置物になっていた二十三型の液晶テレビにも、ようやく仕事が回ってきた。最初は少し映りが悪かったけど、手当たり次第配線を整えたところ、目を痛めずに視聴できるレベルにはなった。意外となんとかなるものだ。嬉しくなって、つい声に出してしまう。
「すごいですよね、先輩。日本人大学生が一〇〇メートル決勝進出、それも九秒台を記録したなんて」
画面上では、数多の企業のロゴ群を背景に、精悍な顔立ちの陸上選手のインタビュー映像が流れている。玉のような汗が壮絶なレースを彷彿とさせる。再放送とは思えないほど、本当にすさまじいレースだった。競技中の鬼気迫る表情がまだ脳裡に焼き付いている。息もつかせぬ戦いとはこういうことを言うのだろう。
男子の日本人陸上選手、それも大学生が、国際大会で九・九二というタイムで一〇〇メートルを駆け抜けたのは初めてのことだ。追い風もプラス〇・五程度なので参考記録にはならない。SNSは夜が明けた今でも大記録樹立の喜びで沸いている。来年のオリンピックで日本人初の一〇〇メートル決勝進出なるか――そういった見出しで日本中の注目を集めるのは、最高の瞬間だろう。
一方、先輩の砂川
「それは、すごいことなのか?」
「もちろんです。日本人はこれまで、世界の舞台で一〇秒台の壁をなかなか破れなかった。黄色人種の限界だと言われていたんです。それが近年になって好記録が次々に生まれて……ついに国際大会の大舞台で九・九二というタイムが誕生した。しかも大学生。日本が世界のトップレベルに肉薄した記念すべき日だと思います。もしかしたら令和初の偉業になるかもしれませんよ」
「偉業とまで言うか。世の中の偉業は、なにもスポーツだけではないだろう。令和になってどれだけ経つと思う。偉業などとっくに生まれているに決まっている」
「先輩はどう思ってるんですか?」
「どうも思わない。藤堂はなぜ、そこまで陸上に熱を入れる」
「中学は陸上部だったので。一応、長距離のブロック長だったんですよ」
「そうか」
先輩はそれ以上、何も言わなかった。
僕は今、卒論制作を進めている。比較的自由度の高い研究室だけど、毎週金曜のゼミだけは空気が重い。視聴覚室を締め切り、一切のノイズを遮断して、不正アクセス検出手法を二時間まるまるかけて否定されることも珍しくない。先週がそんな感じだった。世の中はやれ令和だやれオリンピック前年だでわかりやすく浮き足立っているけど、辺鄙な大学の工学部棟では何人もの学生が頭を抱えている。
とはいえ、僕自身の卒論は順調だった。こうやって日曜日も律儀に研究室に来て研究を進めているのだ、あと二、三回ほど指摘を受ければ滞りなく完成と相成るだろう。だけど気分は晴れやかじゃない。こんなときばかりは、それに集中するしかない論文の存在が愛おしかった。
机の上にはようやく手に馴染んできたノートパソコンの他に、飲みかけの微糖コーヒー、あまり美味しくなかった新入荷のアーモンドチョコ。それと……県内では有名な遊園地のチケットが一組置かれている。少し前に馴染みの友人から譲り受けたのだ。チケットと砂川先輩を交互に見て、聞こえないように溜め息を吐いた。
砂川先輩はおよそ娯楽の類いに興味を持たない。お前が一緒に行くといいとチケットを渡されたものの、誘うか誘うまいかまだ悩んでいる。
小さい頃からの相談役である津島健吾は研究室にまだやってこない。以前は毎週のように訪れていたけど、おそらくもう足音は聞こえない。一体何をしているんだ、のんびりしていると夏が終わってしまうぞ――と頭の中で文句をこぼした。
津島が話を持ちかけたのは、一昨日の金曜日。
ゼミでの発表と質疑応答を終え、自席に戻って一息ついていたときのことだ。コーヒーか土産物の紅茶かで迷っていると津島が姿を見せた。紺のポロシャツとカーキ色のチノパン、これぞ一般的な大学生という出で立ちで、僕を見つけるとすぐに駆け寄ってくる。今週、既に二回目の光景だった。
「藤堂ってさ、解析とかやってるんだよな」
「藪から棒に何なのさ」
「暗号とかの解析。してるんじゃないのか?」
要領を得ない。言いたいことはわかる。
「間違ってはないけど、津島が期待しているものとは違うと思うよ。僕がやっているのは、外部ネットワークからのアクセスを検知して、サーバの応答率をもとに攻撃的であるかを判断する――みたいなことで、作業の一環でログを解析することはあるけど、探偵みたいに暗号を解析してるわけじゃない。おわかり?」
「わからん。難しい話だな。何であれ、頭を使うことは俺よりお前のほうが得意だと思う」
否定しない。知恵を絞ることは苦手ではなくて、津島は苦手だと知っている。脳トレのゲームで実父と同じレベルをたたき出すようなやつだ。それにしても卒論に忙しい時期に、よくぞ足繁く通うものだ。
「まあいいや。それで、用件は?」
「ああ。ちょっと知恵を貸してほしい。時間はあるか?」
知恵と来た。
卒論の質問かと思ったけど、それなら教授に伺うだろうから違う。周囲の友人でも良かっただろうに、経済学部から工学部という構内の端から端を一〇分以上かけてわざわざ歩いてきたということになる。となると、僕でなければならない理由があるのかもしれない。津島とは小学校からの付き合いだ。時間もあるし、話も聞かずに追い出すのは義理に欠ける。
ただ、そういう頼みであれば他に適役がいることも知っている。クーラーが壊れ、九月の終わりだというのに蒸し暑い研究室には、不在が多い教授の他にもうひとりの同居人がいる。文字どおり、研究室に棲み着いているような人だ。
「先輩、ちょっといいですか」
「私は忙しい」
即答しつつ、どう見ても手元のミニサボテンを凝視しているだけにしか見えない同居人は、砂川日和麗という名前の女子学生だった。
日本人形に魂を吹き込んだように色白で、長い髪は烏の濡れ羽色に染まっている。容姿端麗だが変わり種の噂が絶えず、先輩と同期の男子学生も色恋沙汰の対象というより、人間観察の対象としている節があった。知らずに好意を持って近づく学生もたくさんいたが、興味の埒外に置かれてあえなく玉砕するのがオチだ。
色恋沙汰にまるで関心のない砂川先輩だけど、知恵を働かせることに関しては他を圧倒するものがある。発表した論文は良くも悪くも前衛的と評価され、国際学会にも招待されたという噂も聞く。しかし砂川先輩はこれを固辞して、働かぬエアコンに不満を漏らすこともなく、今日もミニサボテンの観察を継続している。曰く『生命の神秘を感じる』というミニサボテンくんは論文の対象にもされかけていたが、教授に諭されて渋々断念した過去を持つ。機嫌がよくないのはきっと暑さのせいだけではないだろうけど、なんとか説得を試みよう。
「津島は僕の顔馴染みです。知恵が欲しいとわざわざ経済学部から来ました。それを捨て置いておけるほど、僕は悪になれません」
「ふん。話だけなら聞いてやる」
「だって。話してみなよ、津島」
促すと、津島はありがとうと一礼して、適当な椅子に座った。
「実は少し前に、父方の爺さんが亡くなったんだ。昭和の初めの生まれだったそうだから、大往生だったんだと思う」
「それはそれは。ご愁傷様」
「面白い爺さんだったよ。地元の名士だったとかで、食事の作法とか日本の歴史とかに詳しくて……その話になるとめちゃくちゃ厳しかったけど、遊びに関しては達人の域だったな。ベーゴマの回し方はもちろん、九十歳になってもテレビゲームで遊んでたし、とにかく幅が広かった。俺も昔からよく一緒に遊んでもらっていたな。名前も爺さんと同じのをもらったんで、特に良くしてもらっていた」
「いいお爺さんじゃない。うちはそういう機会に恵まれなかったから羨ましいよ。大事に集めてたのも……回覧板で配られる町報ぐらいかな」
「町報? なんでまた」
「役場勤めで顔が広いから、冠婚葬祭の日程調整がてら集めてたんだったかな。何もずっと残さなくていいのに」
「なんなら、今度玩具のひとつでも持ってきてやるよ。そうだな、爺さんが好きだったのは……」
「津島と言ったか」
砂川先輩が口を挟んだ。
「お前、世間話をしに来たのか。さっさと用件を話せ」
「あ、すみません。予備知識はあったほうがいいと思って」
悪気はないんだと言わんばかりに、津島は両手をひらひらと振ってみせる。
「ということは、暗号ってのはお爺さん関連の?」
「ああ。爺さんは死ぬ前にいくつか遺言を書いてたことがわかったんだけどさ。ひとつだけ、どうも意味がよくわからないものがあるんだよ。暗号なのかメモ書きなのかもわからなくて、家族みんな頭を抱えてる。たかが遺言ひとつに警察とか探偵に依頼するほどのことでもない……ってことで、アテはないのかってお鉢が回ってきた」
「なるほどな」
砂川先輩は姿勢を変えない。
「家庭内に解決できるものがおよそいない。身内のことを他人にべらべら話すのも憚られる。それで、顔馴染みの藤堂を頼ったということか」
「仰るとおり。早速ですが、これが爺さんの遺した暗号です」
津島は小脇に抱えていた大学ノートを開き、栞のようなものを取り出す。見た目は羊皮紙のようで、縦は二センチほど、横に十五センチほどで細長い。真ん中に折り目がついていて、それを挟むように『令和』の文字が横書きで記されている。目にした砂川先輩が唸った。
「令和、と書かれた栞のように見えるがな」
「最初は俺もそう思いました」
僕も同意見だけど、栞にしては細すぎる気もする。羊皮紙を栞にすることはあるのか。それに、栞は縦にして使うものだ。横書きではどうも変だろう。
「こいつは、爺さんが大切にしていたメモ帳の中に挟まれていたんです。今みたいにふたつ折りになって。で、ただのメモ書きにしても奇妙だなと思って。なんでかって、爺さんは昔からこうやって暗号じみたものを残すのが好きだったんです。とんちとか大好きな爺さんだったなあ……」
また思い出話になる――そう危惧した僕の目配せに気付いて、津島は慌てた様子で付け足した。
「ああ、それで、メモ帳は金庫の上に置かれてあったんです。爺さんの遺産のなかで、未だに謎が明かされていないのは爺さんが押入れに仕舞っていた金庫だけ。そんな状況でもなけりゃ、俺だってこんなよくわからない紙切れを暗号だなんて言い張りませんよ」
「言えてるね。他に金庫の鍵のヒントがないのなら、メモ帳に答えが隠されている可能性は高い。案の定、メモ帳には意味ありげに栞が挟まっていた」
「短絡的な考えだがな。が、令和を用いた暗号となると些か興味深い」
砂川先輩はふっと微笑む。
考えるに、先輩は令和という言葉の響きを気に入っているフシがあった。元号発表のときは出自から表記方法に至るまで事細かに解説してくれて、一時期は令和まんじゅうなるものを毎日のように食べていた。太宰府も訪れたと聞く。なぜそこまで気に入っているのか、詳しい話を聞いたことはないけど、特別な理由があるのだろう。
津島も砂川先輩が興味を示したことで、安心するように微笑んだ。
「それで、なにかわかりそうですか」
「気が早いね。安楽椅子探偵じゃあるまいし、そう簡単に答えが出るわけないじゃないか」
「言っただろう。私は今、忙しい」
砂川先輩は視線をミニサボテンに戻した。
「だが乗りかかった船だ。力にはなってやろう。そうだな……明日、またここに来るといい」
「え、そんなすぐに」
津島は驚いたような声をあげた。
「もう少し時間をかけて考えてもいいんですよ」
「それでは論文に支障が出る」
先輩はにべもない。沈黙の背後で、チャイムの音が聞こえた。
「やっべ、ゼミの時間だ! じゃあ俺はこれで! ……明日、よろしくお願いします」
名残惜しそうに何度も振り返りながら、津島は足早に研究室を辞した。砂川先輩は相変わらず、ミニサボテンのことを矯めつ眇めつ眺めている。何が気に入っているんだろうか。
「先輩はサボテン、好きですよね」
「ああ。こいつはなかなか花が咲かないんだ」
だそうで。やっぱりよくわからない。
翌日の土曜日。津島は集中講義が終わったら向かうと連絡してきた。十五時前には終わるので、タイムリミットはあと二時間ほど。砂川先輩は昼から研究室にやってきて――おそらく朝からいたけど席を外していたのだろう――僕の顔を見ると、愉しげに微笑んだ。
「どうした藤堂、覇気がないぞ。朝飯でも抜いたか」
「朝食べないのは先輩でしょう。だって、全然わからないんですよ」
目の前には『令和』の文字が記された羊皮紙がある。今日は何も予定がなかったから朝から考えてみたけど、さっぱりわからない。令和の文字と金庫の鍵がどう結びつくというのか。解決点があるとすれば、文字数とダイヤルの数が同じであること。津島が送ってきた金庫の写真をもう一度見る。
「金庫にはふたつのダイヤルがあって、それぞれを正しい回数回して、〇から九の特定の数字に合わせる構造らしいです。だから、『令和』をうまいこと数字に変換できればいいんじゃないかと考えたんですけど……」
「二〇一九ではダメだったのか」
かぶりを振る。令和の制定された西暦――二〇一九年に倣って、左のダイヤルを二回転させてゼロに、右のダイヤルを一回転させて九に合わせる方法は昨日のうちに提示してみたけど、結果は芳しくなかった。他にも組み合わせは確かめてもらったけど、答えには程遠い。
「先輩は解けましたか」
「まったく。あて推量でも何とかならん以上、暗号を解いてしまったほうが楽だろうな」
砂川先輩は椅子に腰掛け、天井を仰いで目を伏せた。考えごとをするときに見せる仕草だ。程なく僕と問答をはじめるのがお決まりの所作になっている。
「藤堂。その暗号に、なにかおかしな部分はないか」
「うーん、特に思いつきません」
「そうか? 私はなぜ、メモ帳ではなくわざわざ羊皮紙に、しかも細く切り取ったものに記したのか気になった」
「なるほど、言われてみれば。でも、嗜好品に贅を凝らす気質なら珍しくない気がします」
「推理と人間関係の基本は疑うことだ。当たり前だろうと思うことも、まずは疑ってかかること」
「……なるほど」
人間関係という言葉に、少しぎくりとした。
「ではまず、なぜ羊皮紙を使っているか……ですか」
「そうなる。結論を言うと私にもわからん。推測が許されるなら、暗号を書いた人物が羊皮紙を日常的に用いていたという可能性だろう。羊皮紙の用途は絵画、カリグラフィー……多岐にわたる。津島の祖父が画材や文書の製作に携わっているのであれば、可能性は十分にある」
「確認してみます」
津島にチャットを送ってみる。すぐに既読がついた。
「お爺さんは趣味で製本をすることがあり、部屋には羊皮紙のストックがあったそうです。なのでそれほど珍しいものでもないと」
「いい趣味を持っていたんだな。では次に、なぜ羊皮紙をわざわざ細く切り取ったものに令和の文字を記したか」
先輩は端っこを持ってぷらんとぶら下げる。細長い羊皮紙の真ん中に『令和』の文字があり、左右には十分すぎる余白がある。見れば見るほど違和感が増す。
「きみはどう考える」
「もともと縦方向に、漢文のような文章が書かれていたのを横に切り出したとか」
「いい発想だ。だが、それはあくまで暗号が作られる過程に過ぎない」
ごもっとも。
問題はなぜ、細く切り取る必要があったのか。
「令和の文字に、何かしらの意味が込められているからですよね。偶然こうなってしまったのであれば、それはもう暗号じゃない」
「そうだ。津島の祖父はなぜメッセージを細長い羊皮紙に記述した? 令和、という二文字の暗号を記すだけであれば、もう少し小さな紙切れでもよかっただろう」
「暗号をなくさないように、とか」
「ならば、最初からメモ帳に書いておけばいい話だ」
沈黙。こめかみを汗が伝う。なんとなく気まずくなって、テレビのリモコンをとり、電源を入れた。この時間帯はバラエティ形式のニュース番組が流れている。先輩はこれにも興味を示さない。徹底的に厭世的だなと思う。自宅では何をしているんだろう、と思う間にも先輩は双眸を鋭くする。
「細長い形状には意味がある。羊皮紙を製本に用いるのであれば、普段から細かく切っているということもないだろう。それに」
先輩はもう一度羊皮紙をつまみ上げる。
「なぜこの暗号には、折り目がついているのか。津島はメモ帳に挟まれていたからだと言っていた。だが、この程度の長さであればふたつ折りにする必要はない。メモ帳が文庫本サイズだとしてもわざわざ折る必要はない」
「そもそも栞とするにも、ペラッペラで使いものにならなそうです」
「ふたつ折りにするとしないで変わること。長さでなければ、折り目の有無だ。しかもこの折り目は、令和の文字をちょうど区切るようにして作られている。偶発的なものと考えるのは難しい。まるで、それぞれの文字が独立した意味を持っているかのように見える」
「なるほど……」
ニュース番組からは金融政策の話が聞こえてくる。消費税増税により景気はどのように変動するのか、最大二十五パーセントまで上げる構想は事実なのか――そんな話題だ。ちょうど今朝意識したばかりだったので、僕は思わず眉をひそめた。砂川先輩はそれを見逃さない。
「どうした、何か不服か」
「ああ、いえ。消費税がもうすぐ一〇パーセントになるじゃないですか。確かに物の値段は高くなっちゃうんですけど、計算は八パーセントより楽になる気がして、それを嬉しく思っている自分がなんだか変な感じで。軽減税率があるから、結果的にややこしくなりますけどね」
「なんだ、そういうことか」
先輩もテレビに視線を移す。
「確かに煩わしさは解消されるな。中途半端な金額で、無駄に財布が圧迫されることもなくなる」
「それは先輩が一〇〇円ショップでしか買い物しないからじゃないですか。僕なんかは相変わらず財布が小銭でパンパンですよ」
「そんなものか? 私も多少は……」
ふと、砂川先輩が瞳の動きを止めた。
「小銭……」
すぐに弾かれるように自席に戻り、パソコンのキーボードを猛烈な勢いで叩きはじめる。なにか閃いたのだ、ということは言われなくとも理解できた。
「先輩、なにか」
「藤堂。金庫のダイヤルはふたつあると言ったな」
「あ、はい。それがどうかしましたか?」
「もうひとつ。津島に、栞が挟まれていたのは『手帳の何年何月何日』か聞け」
相槌も打たずにチャットを送り、津島の返事を確認する。
「令和元年の五月一日です」
「そうか……」
砂川先輩はゆっくりとタイプの速度を落とし、ふーっと息を吐くと、僕を見てにやりと笑った。
「なら、暗号は解けた。津島を呼べ」
講義を終えた津島は、研究室に入って来しなに驚きの声を上げた。
「本当ですか。あの暗号が解けてしまっただなんて」
「そうだ。まあ、座れ」
津島は信じられないという表情で、椅子に座る。
「……こんなはずじゃなかったのに」
ぼそりと呟きが聞こえる。こんなはずではないのなら、どういう手はずだったのか。少し気になった、今は砂川先輩の解説を拝聴するのが先だ。
「まず、なぜ津島の祖父は細長い羊皮紙に、令和の二文字を記したのか」
そう切り出して、僕に聞かせた話を反芻していく。津島はなるほどと呟いていた。視線はずっと、先輩に注がれている。
「令和の文字の間に折り目がつけられていたことから、私はそれぞれが異なる意味を持っていると考えた。この場合はどのように解釈するのが正しいか。藤堂、どう思う」
「令と和、それぞれを違う言葉に翻訳するとか」
「当たらずとも
確かに。違う言葉に置き換えるだけなら、それこそメモ帳に直接書いてしまえばいい。再三繰り返すようだけど、暗号が遺されていたのは細長い羊皮紙だった。
「ところでこの紙には折り目がついている。薄い紙に折り目がついているのなら、私はこうする」
そう言って砂川先輩は、羊皮紙を折り目に沿ってぴりりと破ってしまう。これで一枚の羊皮紙は二枚になった。右端に『令』が記されたものと、左端に『和』が記されたもの。
「何かしら、言葉が入りそうですね」
「まさに。ここには、それぞれの文字を含む言葉が記載されるのだと私は考えた。しかしこれを推量で考えるには範囲が広すぎる。重要なのは、言葉遊びをした本人が何に詳しかったかだ。津島。お前の祖父は、遊びの他にも食事の作法や日本の歴史に詳しいと言っていたな」
「え、ええ。そうです。すごい、覚えてくれてたんですね」
「記憶を再生しただけだ。他にも製本技術に関わる言葉などがあるかもしれんが、キーワードに挙げられているのは『令和』だということを思い出したい」
「であれば、日本の歴史ですね」
先輩は首肯する。
「日本史は熟語のオンパレードだ。語呂はなんとなく覚えているが、漢字は難しくて書けないということも多かっただろう」
「あるある! 俺は六波羅探題が好きでした。かっこいい言葉多いですよね」
「わかるー、僕は墾田永年私財法かな。冠位十二階とか御成敗式目も結構イケてると思う」
「……何が優秀なのかはどうでもいい。二千年を越える歴史のなかで、令と和、ふたつの条件に合致する言葉は何があるか、わかるか」
僕と津島はかぶりを振った。高校時代の専攻は地理と世界史だ。それ以前は不真面目だったものでよく覚えていない。砂川先輩は豪放に笑い飛ばして「私もさしてわからん」と付け加えた。
「だが調べることはできる。導き出した答えはこれだ」
先輩は二枚の羊皮紙に、万年筆で文字を書き加える。
大宝律令 和同開珎
「見覚えはあるか」
という先輩の言葉。
「見たことある気がします」とは藤堂談。
「あるような、ないような」とは津島談。
もう少し勉強をしろと、ふたり揃って叱られた。先輩も調べたのでしょう!? とは言えない。
「他にも可能性はあるだろうが、私はこれが答えだと断じた。理由は調べればすぐにわかる。藤堂、大宝律令と和同開珎が、それぞれいつ生まれたものなのか検索してみろ」
言われる前に、スマホで検索ボタンを叩いていた。表示された年を見て得心がいった。
「大宝律令は『七〇一年』制定。和同開珎は『七〇八年』に鋳造されたとあります」
「付け加えると、大宝律令は『大宝元年』誕生。和同開珎は『和銅元年』に誕生。津島祖父の遺した暗号は『令和元年』のページに挟まれていた。これが偶然だとは思えん。よって左のダイヤルを七回転させて一の箇所に、右のダイヤルも七回転させて八の箇所に――もしくは数字を逆転させてやれば、求めていた成果が得られるだろう。令和の暗号の答えが西暦だというのは、なんとも皮肉なものだな」
「……すごい、本当に解いてしまった」
津島は小さな声でそんなふうに呟いた。砂川先輩は話すのに疲れたのか、さっさと座ってまたミニサボテンと対峙した。最近は語りかけているようにも見える。
「よかったね津島、金庫の謎が解けて」
「あ、ああ。……そうだな」
なんだ、金庫の鍵番号がわかったというのに、津島はどこか残念がるようだった。ややあって、津島は椅子に座る先輩に向かって、おずおずと口を開く。
「あの、砂川先輩」
「用件は終わった。それとも、これ以上時間を取らせる気か」
「ああ、いえ……」
じろりと睨まれた津島は、視線を逸らしながら、たどたどしく言った。
「せっかくなので、うちまで来て、金庫の中身が何だったのか見てみませんか。解読までしてもらったので、先輩さえよければお礼を……」
「断る。興味がない」
やはり、先輩はにべもない。
「論文の邪魔だ。用が済んだらさっさと出て行け」
顔も合わせずにそう言った。津島はすっかり意気消沈した様子で、「それでは」と力なく言って立ち去った。大きな背中があそこまで縮こまっているのは珍しい。よくわからないやつだ。
それから、津島が研究室に来ることは、ぱったりとなくなった。
日曜日の朝。研究室のテレビから、熱を帯びた報道が聞こえる。
ニュースは、今日も競技が続いている陸上の国際大会の模様を伝えていた。どうやらフィールド競技で日本人金メダルが生まれたらしい。今大会は最高でも銀で心配の声が多かったけど、これで強化委員会も胸を撫で下ろすだろう、とのこと。盛り上がりに残暑も熱を増し、連日の暑さで集中力が削られて卒論も手につかない。結果、紅茶で喉を潤しながら物思いに耽ることが多かった。
あれから、津島の違和感について考えている。
砂川先輩が『明日研究室に来い』と言ったとき、津島は『もう少し時間をかけてもいい』という発言をした。一家が困り果てている暗号なのに、悠長だなと思った。そこまでは変だなと思うだけだった。たかが暗号だ。でも金庫の暗号。たとえば津島家が生活に困っているとすれば……いや、人間である以上、身近に金庫があるのなら開けたいと思うのがサガではないだろうか。津島が一〇八煩悩を捨てきったのであれば別だけど、そうは思わない。
まだある。暗号を解いた報せを聞いて、また研究室にやってきたとき。津島は『こんなはずじゃなかったのに』と小さく言った。まるで、早くに暗号が解けてしまったのがよくないように聞こえる。念願の金庫開封が近づいているのに、残念そうな表情だったのも気にかかる。懇意にしてもらった祖父の遺産との対面を間近に控えた人間の背中が、あそこまで悲壮に染まることがあるだろうか。
いろいろと思考を巡らせた昨晩、親のコレクションに手を伸ばした。
自慢するようなことではないが、うちの親は毎月、回覧板に挟まれている町報を欠かさず収集している。ここ数年分の町報を引っ張り出したときは、母親から何をとち狂ったのかという眼差しを向けられたが、収集者本人だけには向けられたくない。気にせずにページをめくった。
確認したのは、お悔やみ欄だ。
町報の末尾には毎月、その月に亡くなった人の名前や葬儀の日程、住所、喪主の名前などが記されている。調べたところ、死亡診断書を提出した際に家族の拒否がなければ、町報のお悔やみ欄に記載する決まりになっているそうだ。津島家が拒否しているなら別だが、そのときはもう諦めるしかない。終わったことを蒸し返すのは悪いことなのだと怒られたと思おう。何より、地元の名士の葬儀には多くの人が参列するに違いない。であればより多くの目に行き渡るよう、町報のお悔やみ欄に載せてもらったほうがいいのではないか。
令和になってから発行された分の確認を終えても、津島の祖父の名前はなかった。名前……そう、津島は祖父から名前をもらったと言っていた。本名、津島健吾。生まれは昭和の初めだったという。
表紙の年号が『平成』に戻り、少し読み進めたところで、ひとつの名前に目がとまった。
津島憲剛。
生まれは昭和四年八月二日。
町報は平成三〇年五月のものだった。
記憶違いでなければ、令和が公表されたのは平成三十一年の四月一日だ。もしこれが津島の祖父の名前であるとするなら、祖父の遺言に『令和』の文字が記されていた、というのは未来予知能力でもない限り無理難題だ。年号決定は難航したそうで、名士だから事前に知らされていた、という線も消える。
ではなぜ、あんな暗号が存在していたのか。
津島の祖父が遺したものでなければ、津島の父か、母か、それとも健吾本人か。本人であれば、どうして祖父の記した暗号などと嘘をつく必要があったのか。
僕や先輩を試したかった? それなら真っ向から謎を提示すればいいだけで、嘘をつく必然性に欠ける。
イライラすることがあって、暇つぶしの道具だった? 津島は経済学部の学生だ。憂さ晴らしのため三〇度に達する暑さのなか、一〇分以上かけて寂れた工学部のちっぽけな研究室まで訪れるのは逆にストレスだろう。今思えば、この研究室にはそれだけ汗を流す価値があったのかもしれない。
ならば、違う目的があった?
そうだと結論する。津島には暗号を解いてもらうことのほかに別の目的があって、それを達成するために嘘の暗号を解かせようとした。思い出す。砂川先輩が暗号を解いたあと、津島は何をしようとしていたか。なぜそれから津島の連絡が途絶えたのか? 一連の行動の目的は、津島に一言聞けばわかることだけど……返事はいつまでも返ってこない。
「考えごとか」
声をかけられ、目蓋を開く、先輩がいつの間にか自席に座っていて、僕のことを眺めていた。
「あ、先輩。ご無沙汰してます」
「癖が移ったな」
先輩は微笑む。僕は少し世間話をした。
「先輩、知ってますか。今陸上の世界大会をやっていて、金メダルが生まれたそうです」
「ああ、そうだったな……」
先輩は続けて言った。
「藤堂。円盤投げの日本人選手が、大会に出場していることを知っているか」
「円盤投げ?」
知りません、と言いかけて思いとどまる。とてつもない偶然のようだけど、先日、深夜のスポーツ特集でその選手の名前を目にしたばかりだった。
「名前はわかりませんが、そういう選手がいるということは知っています」
「そうか。彼は久方ぶりに、日本人男子の円盤投げ代表として、オリンピックへの出場が嘱望されている。前回の日本人男子の出場も東京オリンピックだったか」
「ということは、出場が決まれば五十六年ぶりになるんですね。そこまでは知りませんでした」
「彼は唯一無二の存在として、此度の競技に臨む。苦しい戦いになるかもしれんが楽しみだ」
「先輩も大会観てたんですね。てっきり興味がないものかと」
「私はそんなことを言ったか?」
「いえ、そうではないですが。観ている姿が想像できなかったので」
「ふむ……」
先輩は言葉を切って、黙り込む。
陸上の話題は終わり、ニュースは日本経済の話になっていた。もうすぐ消費税は八パーセントから一〇パーセントになるけど、景気が潤う保証はない。やがて二十五パーセントまで上がるのではと心配する声を先日聞いた。わずかな差ではあるけど、ちりも積もれば山となる――という諺が日本にはある。経済を憂うには浅学非才だけど、話す分には問題ないだろう。
「令和の日本経済ってどうなるんでしょうね。平成はバブルが弾けて、少しずつ落ち込んでた印象がありますけど。いきなり消費増税でコケちゃわないかな」
「また朝鮮戦争でも勃発すれば、特需が起きることもあるんじゃないか」
「戦争だなんて! 冗談きついですよ、オーダーアンドハーモニーの時代に」
「ははは、そうだな。令和の時代に、戦争か……」
先輩はキーボードを叩いていた手を、止める。
「藤堂。令和の時代は、どう変わっていくと思う」
「令和の時代、ですか?」
「令和の暗号を解いてから、そんなことを考えたものでな。元号が令和に変わり、この国に生きる人々は新しいスタートを切ったとも言えるだろう。新しい元号、新しい天皇陛下。消費増税するなら、それもまた新しいスタートだ。この時代、私たちが生きる世界は如何様に変化していくと思うか」
先輩はよく急に難しいことを訊く。考えてみてもうまくまとまらない。頭を使うことは苦手ではないけど、言葉にするのは難しい。
「令和って言葉のとおり、みんなが平等で、平和な世の中になればと思います」
「そうか」
先輩はふっと微笑んだ。
「私はそう思わない」
アブラゼミの鳴き声がすっと止み、三〇度を越える暑さの研究室が凛とした静寂で満たされる。
「令和になり、世の中はこれまで以上に強い『全』で満たされていくだろう。私たちはポニーテールを禁止され、社会人は背広を強制され、すべてのものは画一化されていく。すべての人間が同じ流行を追いかけ、同じ服を着て、同じ法に従って生きていく。画一化は後退と変わらない。日々進むことを辞めるのだからな。技術的特異点の到来が叫ばれるのも仕方がない話だ」
「シンギュラリティ、でしたっけ。令和のうちに来そうですね。僕はいいと思いますが、どうなんでしょう。みんなが平等に見られるのは悪いことではないと思います」
「その意見を否定はしない。だが、私はそんな世の中を良しとすることはできない。令和、令和か。令和という字面は確かに興味深い。オーダーとハーモニー……私が令和に対して抱いているものは、どちらかといえば不快に近い感情だ。規律と調和で発展に導けるとは思わない」
意外な言葉だった。砂川先輩は令和を気に入っているとばかり思っていた。
「藤堂。私は人間として生きる限り、徹底して『個』を磨くべきだと考える」
先輩は告げる。
「出る杭は打たれるだろう。伸びすぎた枝は刈られるだろう。だからといって仲良しこよしの背比べをする気にはならん。異端と叫ばれても、変わり種だと馬鹿にされることがあっても、誇らしいことだ。他人と違うことは個性になる。個性を磨けば唯一無二の存在となる。ガリレオは地動説を唱え続けた結果、異端として裁判にかけられた。私が好むのはそういった人間だけだ。津島健吾はその類いだと思えなかった」
――――ああ、やっぱり。
津島には気の毒だが、やはり勝ちの目などなかったのだ。学殖と慧眼に満ちた先輩にとって、津島の思惑などすべてお見通しだったのだろう。であれば今さら掘り返すこともない。
「では」
流れで、気になったことを聞いてみた。
「先輩と相容れる存在は――好きだと思うような相手は、どういう人なんですか?」
「藤堂七海」
熱が、舞い戻る。
「と言ったら、どうする」
先輩は不意に顔を近づけて、細い指で僕の顎をくいと持ち上げる。
もしかしたら研究室に泊まり込みかもしれないのに、先輩の長い髪からはマロングラッセのように甘い香りが漂ってくる。きめの細かい白い肌は、太陽光で焼けてしまうことなく、なめらかなままだ。それらが、たまらなく羨ましい。僕がぼうっとして返事をしなかったのが不満だったか、先輩は眉をひそめる。
「……どうするのかと言っている」
「そ、そんなことを言われても。僕だって先輩のことは面白いと思いますし、そりゃあ好きですけど、僕が今聞いているのはそういう意味ではないとわかってるでしょう」
「どうかな。私の述べたことを理解できたのであれば、解釈次第だと思うが」
先輩は手を離して、ふふっと微笑んだ。
「きみならわかっているのだろう、藤堂」
日曜日未明。一〇〇メートル決勝には、期待の日本人選手が出場した。
叩き出したタイムは九・九二。彼は日本記録を更新し、世間の注目を浴びた。
表彰台には、上れなかった。
同じ日。円盤投げの予選にある日本人選手が出場した。
叩き出した記録は六十二メートル四十二。堂々の日本新記録で、決勝に進出した。
テレビでの報道は、数秒にとどまった。
ひぐらしの鳴き声は、いつの間にか聞こえなくなっていた。
砂川先輩の陸上の興味は皆無に等しい。
正確に言えば、一〇〇メートル走への興味は、だと思う。日本人選手が一位になれば驚くかもしれないが、価値を見いだすことはないだろう。砂川先輩に言わせれば、オリンピックの一大会で金メダルをとることは、限られた『全』の頂点に立つだけに過ぎない。先輩の言いたい『個』とは結局のところ、苦くないコーヒー豆を生み出したり、五十六年ぶりにあるオリンピック競技の日本代表になったり、花を咲かさない代わりに人語を理解するミニサボテンを育てることだったりするんだと思う。
抽象的に表すなら、何物でもない何か。先輩は僕ならわかると言っていた。
なぜ。
考えようとするたび、薄っぺらな思考は暑さにやられてぴりぴりと破れていく。陸上の国際大会が終わればひとときの熱狂も過ぎ去り、季節は寒さを帯びて身支度をはじめてゆく。そうして夏が過ぎたとて悩みは尽きない。
津島から、お前が一緒に行くといいとチケットを渡された(押し付けられた)ものの、誘うか誘わないかまだ悩んでいる。津島からすればなんてことのない勧めだったのだろう。僕と砂川先輩が一緒にどこかへ出かける、というのは、彼らにとって珍しい光景でもなんでもない。それは仲の良し悪しの問題ではなく、単に社会的な側面の話で、そして僕にとっては大問題だ。
砂川先輩は、全を嫌い、個を好むと言った。
結果としてそれは僕自身の悩みをより大きくするものとなった。チケットと砂川先輩を交互に見て、聞こえないように溜め息を吐く。
小さい頃からの相談役である津島健吾からの返事は返ってこない。研究室通いの習慣も終わりだ。金庫の話も忘れるだろう。彼のひと夏の思い出はもう終わったのだ。月曜日からはきっと卒業論文に勤しむ日々が始まる。
藤堂七海の論文も順調だった。あと少し指摘を受ければ滞りなく完成すると思う。九月末の空は好天に恵まれているけど、気分は晴れやかじゃない。思考を見透かされているのはこのうえなくもどかしいものだと、心から津島に同情した。
こんなときばかりは、それに集中するしかない論文の存在が愛おしかった。
アンテグラル 【旧】鹿田甘太郎 @Chameleon
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