追いしもの
ピート
森の中をただ走った。追手をかわすように、
道なき道をただ、ガムシャラに走った。
あの男を許さない!一族を殺した、あの男を……一族の無念をはらす。それが、俺の存在理由だ。
無残に殺された仲間の屍を乗り越え、俺は逃げた。友を捨て、一族を見殺しにし……逃げた。
その時、確かにあったはずの何かが、俺の中で壊れた。友も、家族も愛する者も……何もかもが消え失せた。ただ残るのは、後悔と、あの男に対する復讐だけだ。
この森ので、俺は奴に出会い、あろう事か、背を向け逃げ出した。あの時と同じように……。
追手の足音が離れた、どうやら奴は俺を見失ったようだ。銃を片手に辺りうかがっている。深追いした事を後悔しているようだ。
奴を追いつめる為に、俺は声を上げた。森中に響き渡るように、俺の居場所を気付かせないように。
木々に反響した声が四方から響き渡る。
怯えるがいい、森の中を、今度はお前が逃げる番だ!!
周囲を闇が染めていく、日が沈みはじめたようだ。
奴は周囲に銃を乱射した。
闇に怯えるがいい、森に怯えるがいい……深くこの森に立ち入った事を後悔しながら、俺の復讐を受けるがいい……さぁ、逃げろ!!狩りの時間だ!!
一際高く、俺は声を上げた。
四方から迫るように声が響いていく。声に怯え、男は走り出した。
今度は貴様が狩られる番だ!!
木々の中を、音をたて、声を上げながら追いかける。
森の闇にのまれるがいい!!
ぬかるみに足をとられ、倒れこんだ男の首に、俺は牙を突き立てた。
一族の血は、奴の血で拭った。
俺は大きく遠吠えをあげると、森の闇に姿を消した。待つ者もいない、森の中へ……。
Fin
追いしもの ピート @peat_wizard
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