うまくいく

 悪魔が小さくなり、食べられた人が次々と戻っていく。




「あれ?一体・・」


「俺たち、食われたよな?」


「・・・何が起きてるの・・」


「あれって・・・ラーファなの?」


 グランツ、ロイ、ミルカ、ユリも無事に生き返り、唖然としていた。




 すると、王都の城壁より遥か先に幾つもの光が輝いた。そして、一直線に、その光は王都へ向かって集まりだし、グランツ、ロイ、ミルカ、ユリ、宗方、リディアの元へ降り注いだ。




「これは・・・・」




 ユリには、小さな木の実。グランツには、ガントレット。ロイには、二つの腕輪。ミルカには透明な花弁をもつ花。宗方には、刀。リディアには、黒いナイフが目の前に現れた。




 それぞれが、手に取ると、6人が輝きだし、その物体に変化が現れた。






 木の実は、急速に生長すると、一本の大樹になり、光の胞子が街中を包んだ。




 ガントレットは、グランツの腕に装着されると、全身を包みだし、鎧となった。




 腕輪は、そこから透けた艶のある布が広がり、踊り子のような衣装に。




 透明な花は、花弁が大きくなり、3対の翼のようにして背中にくっついた。




 古びた刀は、甲冑の袖、籠手、手甲を生成し、右腕に纏った。




 ナイフは、その色をより漆黒へと変え、ふわりと身体の周りに浮いていた。




「・・・力が湧いてくる」


「感じるぞ・・・マナが溢れている」


「精霊を感じる・・・これが加護か・・・・」




 6人の姿、形が変わると、悪魔は後ずさった。




「くぅぅ・・・・俺の計画の邪魔をするなぁああああああああ」




 小さくなった悪魔は、多少遅くなったとはいえ、そのスピードは目を見張る物があった。






「速いな・・以前の俺らに比べればな・・」


 ロイは接近する悪魔をひらりと躱すと、炎を悪魔に纏わり付かせた。




「あっつぃいいいいいい」


 悪魔はその勢いのまま家屋に突っ込み、縮む皮膚の痛みに悶えた。




「今なら勝てるぞ!一斉に攻撃だ!」


「「「「「おう(うん)!!」」」」」






「極大魔法!」


「極大魔法」


「・・・極大魔法」


「極大魔法!!」


「極大魔法ッ!」


「極大魔法・・」


「極大魔法」




 悪魔を囲っている7人それぞれの前に、巨大な魔方陣が編み出された。






「大地の化身・ガイア」


「炎の化身・ヘパイストス」


「空の化身・アイテール」


「光の化身・ヒュペリオン」


「時空の化身・クロノス」


「海の化身・ポセイドン」


「闇の化身・タナトス」




 魔方陣から巨大な光が一斉に悪魔に放たれた。






 あまりの轟音に、他の音がかき消され、静寂かのような錯覚に一瞬陥った後、悪魔は夢を見た。




「・・・また、果たせないのか・・・野望を・・願いを・・約束を」




 その言葉は、誰に届くこともなく、悪魔の身体と共に消滅していった。






「「「「・・・・!・・うおおおおおおおおおお!!!」」」」


 生き返った国民達が、勝ちを確信して雄叫びを上げた。










 ここはオルガノ王国の王都にある酒場『ゴールドラッシュ』


 ここでは、日夜さまざまな人間がそこで思い思いに時間を過ごしていた。しかし、とある人物が来ると、その酒場は途端に静かになる。なぜならその人物は重要な情報のヒントだけ、残すからである。




 カランコロン




「マスター、いつもの頂戴」


 ある男が入店と同時に、注文をこなすと、席に座り、ミステリー小説を読み始めた。




「・・・なんだ、急に静かになったぞ」


「しっ!静かに」


 店内の雰囲気が一変したことに驚く男に、人差し指を当てることで静かにするように促した。




 しばらくの静寂の中で、だれかのゴクリという唾を飲む音が聞こえたその瞬間。




「・・・流行病は井戸からだったのか・・」




 ガタガタッ!


 その男が言葉を発すると、店内にいた男達が半分ほど大急ぎで出て行ってしまった。






「おい、何だったんだ?」


「ああ、すまねぇ。お前さんは王都に来て間もなかったな。教えてやろう」






 つい先日この王都で大きな災いが起きたことがあったろう?王都の最強を冠する者たちが次々にやられてしまい、誰もが諦めたとき、あいつ、キールだけは諦めていなかった。




 自分を犠牲にすることで、仲間の秘められた力を解放させこの国を救ったのさ。




 あいつは、その術を知っていた。その未来を見えていた。




 王都の脳と未来。キールがそう言われる所以の一つだな。






「へぇ、そんな凄い奴だったのか」


「当たり前よ、キールの部下達はどれも最強と言われてる。それを従えてることからも凄さが分かるな」




「・・・なんか、うまくいったというか、うまくいっちゃったというか・・・まぁ、いっか」


 キールは、その男の声を耳にしてキールは苦笑いを浮かべた。


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 ご愛読ありがとうございました。

 新作の「海竜の舞禰宜」もよろしくお願いいたします。

 https://kakuyomu.jp/works/16818093078196771273

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配達屋はうまくいく!~何もしてないのに勘違いされて国の重要人物!?~ 一色珊瑚 @isshiki116

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