思春期の北風と太陽
太陽がおりました。活発な性格です。
北風は絶えず吹き荒びます。見かけによらず、結構根暗です。
そんな荒野では、ほとんど人も来ません。サボテンが蕭々とニヤついているだけです。何笑ってるんだ。むかつくなあ。マリモッコリみてえな顔しやがって。
北風と太陽はまあまあ仲が良く、サイゼに二人で行ったこともありました。その時に太陽が北風に「お前、ミラノ風ドリアなんか頼んで、全然通じゃないなあ」といってしまい、北風を怒らせてしまった、そんなエピソードもありますよねえ。は?
ともかく。そんな荒れ果てた場所でしたが、ある時ひとりの女旅人が歩いてきました。
「いや、かわいくね」
「うーんなかなかの美人」
女性は日に焼けて黄金色の肌に汗を滑らせていましたが、上品な印象を失わず、亜麻色の髪の毛は日光を照り返し風に靡いています。彼女はその国の首都からやってきた高貴な身分の姫様でしたが、自由な性格でよく冒険に出かけるのでした。家臣がついてくるのを嫌がるのでいつも一人でしたが、腕っ節は強く、かつて満員電車で痴漢の指を折ったことがあるほどでした。電車がある時代のお姫様とかたかが知れてるとか思うな。フィクションだし。痴漢の下りは。アレだよ。王族を高貴に見せるがための蒼氓の語り草ってだけです。
「なあ」
太陽が北風に話しかけます。
「な、なに」
「あの子全裸にしたら勝ちゲームやんね?」
「ヒャ」
インキャの北風はきったねえ鼻息混じりの声を出しました。
その風が、姫の服の裾を揺らします。
「うーん、風が吹いてきたわね」
これだ、そう思った北風は、
「のったぜ」
そう言うとびゅうびゅうと風を吹かせました。風に煽られて彼女の首元のスカーフが吹き飛んでいきます。
「いやお前服を風で剥ぎ取るとかアニメ見過ぎ笑笑」
「るせーし」
しかし、服が吹き飛んでいくことはありませんでした。逆に、姫は
「お父さん…」
どうやら、あのスカーフは死んでしまった王様の父親の遺品だったやふです。涙に暮れる姫を見て、北風もきまり悪く
「…ごめん、」
と言いました。姫は風下へ向かいます。幸い、スカーフはすぐそばで見つかりました。サボテンに引っ掛かっていたのです。お前笑笑やるやん笑笑ニヤついてるムカつくやつかと思ったら意外と活躍してるんマジ草!サボテンは多肉植物だから草って言っていいのかな?
続いては太陽の番です。
「単純にめちゃ熱くすりゃええんぢゃね?」
太陽は力を丹田に(あるのか?)込め、コロナを轟かせます。すると、みるみる太陽フレアが翻っていくのがわかりました。気温は45℃。枯れ草の摩擦で火が起きる気温と湿度で砂漠が覆われていきます。
「今度は、急に熱くなってきたわね…」
姫は上着を脱ぐと、背負っていた麻袋から取り出した動きやすそうな服に着替え始めました。周りには人も、獣も、蝿のひと翼(数え方は南国スタイル)もいません。
肌が露わになるたびに、北風と太陽は勝負を忘れて釘付けになってしまいます。遂にあらゆるものを身体から外し、自然体になる頃には、気温も下がり、風も止みました。
「いいもんみちゃった」
北風と太陽がお家に帰りました。その姿を忘れる前になんらかの形に残しておこうと思ったのでしょう。
気づいたことが二つあります。
1.太陽や北風といった気候の方々が人間の裸を見て何か思うことがあるでしょうか?私たちはスズメの全裸を見ても何にも思いません。(かわいいな、程度でしょう)それに仮に何か思ったにしろ、長い歴史の中で見飽きたに違いありません。自己中心的な発想でした。
2.北風と太陽が去っていったら何が来るのでしょうか?満月と偏西風?何もこなかったらお姫様は虚空で息もできません。
皆さんの意見お待ちしています。
イソップ童話を劣化させたやつ ジブラルタル冬休み @gib_fuyu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。イソップ童話を劣化させたやつの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます