自殺未遂の演劇者
桐崎 春太郎
第1話
皮肉なことに美しい青空。脳にこびりつく笑い声。白い雲が美しく流れてゆく。暖かい太陽の光が私を照らしていた。風が気持ちの良い屋上。何もかもが小さく見える。柵に手をおいた。
散々だった。学校に行けば私はただのストレス発散道具。気づいているはずの先生も知らんふり。もう、私は十分我慢した。きっと、これならお母さんもわかってくれるよね?許してくれるよね?こんなに私はいい子にしてたんだから。もう何も見たくない。涙だってもう枯れてしまったよ。私は悪くないよ。私が何したって言うの?
本当は死にたくない。死にたくなんかないか。でも、でも、
「もう私、頑張れないよ……。」
私は柵を越えた。あと一歩。あと一歩だけ。なのに足が動かなかった。涙が溢れた。絶望しか映らなくなった私の瞳は屋上の下、花壇を見つめていた。憎い程の花がこちらを見ている。
もういいでしょ。このままの方がよっぽど辛いじゃない。ぐっと目を瞑って覚悟を決めた。その時、
「んお?何やってんのかと思て来てみれば何や、自殺かいな?」
この声はと、私は目を開いた。そこにはかき揚げ茶髪の関西人中里
「……ですか。」
「んー?聞こえないでー?」
私の言葉に彼はそう言った。私はぎりっと歯ぎしりをして叫ぶようにして言った。
「何なんですか!!??やめてください!とめないでください!!!」
すると彼は驚いたようだった。驚いたようにこちらを見ていた。私は声を殺して泣いた。泣いていた。
「別に止めに来たんやないんやけど。」
彼は呆れたようにそう言った。私は何もかもがムカついて辛くて腹立たしかった。
「もう、疲れたんです!もういいんです!」
そういえば彼は冷たい瞳でこちらを見ていた。そして周囲を見ていた。無性に腹が立って苦しかった。
いつからだったろう。突然、クラス一のギャル女子に目をつけられた。きっかけはわからない。突然だった。いいカモだと思われたのだろう。初めは無視。悪口。次第にひどくなって暴力、精神的暴力。例えば弁当に虫を入れたり…。
お昼のとき。ご飯を食べてれば数人を連れたギャル女子に話しかけられた。そしてうるさいうるさい甲高い声でこう言った。
「ひーとみ?ご飯美味し?じゃあ、ご飯にふりかけあげるね。ほーら、採りたてだよ。」
そう言ってご飯の上にバッタをいれた。私は吐いた。気持ち悪くて吐き出した。すると女子は、笑って「汚ーい!」て言った。私は泣き出した。私は悪くない。そうは言えなくて悔しかった。そこに来た先生も心配するも、女子を止める気はないようだった。誰も私を味方しない。なんでなの。
バッグや、机の中が泥や花でいっぱいだった。もう、散々だよ。
「私、先生にも親にも相談したんです。でも、でも、誰も助けてくれませんでした!!私に味方なんていないんです!!!」
「じゃあ、俺が味方になったろか?」
彼はそう言って私を腕を引いた。大きな手だった。暖かい大きな手だった。私は目を見開いて足元を見つめた。その後顔を上げた。髪が乱れて前がよく見えなかったが彼はまっすぐ私を見ていた。
そしてヒョイッと腕を引いて私を立たせると私の髪を整えて私に言った。
「別に、死ぬななんて言わへんけどこれだけは伝えとくで。お前が死んだらお前の両親は生き地獄やで。」
生き…地獄。私のせいで?なんで?なんでなの?私のほうが、私が辛いのに。
「生き地獄はこっちです!!!私がどんな思いでここに立ってると思ってるんですか?私が簡単な気持ちでここにいると思ってるんですか?!」
すると彼はぽんっと私の頭に手をのせ私を見た。拍子抜けの私は彼を見つめた。そして頭の手を退けると私の涙を拭った。
「焦るな焦るな。大丈夫やで。別にお前の悩みを蔑んどるんとちゃうよ。ただ、親御さんも可哀想やって言ってんねん。だって親御さんは、自分の娘が生きてることが幸せなんやから。それに、まだ早いで。あんな出来の悪い女なんかに惑わされるなや。勿体ないで。」
彼は、そう言って軽くでも暖かく微笑んだ。私は、何故か満たされたような感じがした。私がほしかったものを手に入れたようだった。私は、泣いた。泣いて家に帰った。そしてお母さんに今までのことを話した。そしたら引っ越そうと言ってくれた。嬉しかった。
だから孝宏さんに感謝をしにいった。すると彼は笑って「おう。向こうでは頑張れよ。俺はお前の味方だからな。」と言った。私は泣きながら感謝を何度も述べた。
自殺未遂の演劇者 桐崎 春太郎 @candyfish
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