第58話 誓い
「あっ、起きた!」
アクスが目を覚ますと、サリアの顔が目の前にあった。
「ここは……」
窓の外からは、
「アクスの部屋。アクス、気を失ってたから」
少し前に、魔人とクヤーケがアクス達を襲った。
その戦いでアクスは洗脳されかけるも、根性で跳ね返した。
その時の
「悪かった……あんな奴に捕まるなんて」
「気にしないで、あの時は状況が悪すぎたわ」
「そうだ、リーナ達はどうした?」
リーナやヘルガン、それに加えて町の人々はクヤーケに洗脳され、アクス達に襲いかかってきた。
「大丈夫、みんな元に戻ったわ。ただ……リーナは少しそっとしてあげといた方がいいわ」
「そうか……」
アクスは
「とりあえず、アクスが目を覚ました事を二人に伝えてくるわね」
「待ってくれサリア」
部屋から去ろうとしたサリアの手を握りしめた。
「……このまま魔王城に攻め込んで、無事に帰れるだろうか」
「……アクスにしては弱気な発言ね」
「そりゃそうさ、誰にも死んでほしくないからな」
「アクスが心配してるのは、クヤーケを造ったであろう神。…そうよね?」
「そうだ」
クヤーケは神でしか知り得ない事を知っていた。
その事からサリアは、クヤーケは神が造った魔人であると推測した。
そしてアクスは、その神に付いて不安を抱いていた。その神が魔王の味方をしているのかもと。
「ご先祖様の本に書かれていた、
「私はそうは思わない。もし
クヤーケを相手に圧倒的な力を見せつけたサリアが、勝てないと断言した。
サリアの戦いを見ていたアクスは、それを聞いて不安が顔に表れた。
その様子を察して、サリアがアクスの手を優しく握った。
「安心してアクス、あなたの事は何があっても私が守るわ」
「それじゃあ駄目なんだよ!」
アクスはサリアを抱きしめ、想いをぶつける。
それ以上言葉は出さなかったが、身体から伝わる熱と力から、サリアはその想いを受け取った。
「うん…そうね。みんなで生きて、ここに帰ってきましょう。その為にもアクス、力を貸してね」
「ああ……!もちろんだ」
二人はそのまま、少し間を共に過ごした。
クヤーケとの戦いがあってから丸一日が経った。
アクスたち四人は、昨夜の事をまとめた。
「幹部を倒したと思ったら、まだ別に敵が居たとは。魔王はなかなかせこいですね」
「ええ……そうね」
リーナとヘルガンの二人には本当の事は言わずに、クヤーケは魔王の手先であったと話した。
「どうするんですか?魔王城に攻め込むのをやめます?」
「待っていたらまた新しく幹部とかが現れて、こっちに攻め込んでくるわよ。攻めるなら今よ」
リーナは魔王城に乗り込むのに賛成した。
「ずいぶん強気ですけど、クヤーケと同じ様な奴がまだ居るかもしれないんですよ?」
「あの程度の奴、油断してなければ余裕よ!」
「油断してたら負けるんじゃないですか」
「そもそも!あんたがあんな女にデレデレしてたせいでしょ!」
リーナはヘルガンの
「よせ、リーナ!」
アクスがリーナを止めると、大人しく降ろした。
しかし今度はアクスの
「あんたはどうなのアクス?魔王城にはまだ大幹部が一体残っているけれども」
顔を近づけ、アクスの目を見る。
「勝つ。何があっても」
その言葉と目には、一切の雑念は無かった。
それを見てリーナは、
「
リーナは椅子に座り、酒をあおった。
「ヘルガン、あまりリーナを怒らすなよ」
「すみません……リーナさんもすみません」
「……ふん」
「話を戻すが、ヘルガンはどうする?もし嫌ならここで待ってくれていてもいいぞ」
「……アクスさんが行くと言うのなら、僕も行きます。ここまで四人で来たんですから、今更逃げたりしません」
「そうか、ありがとう」
四人の想いは一つとなった。
「明後日の朝、魔王城に攻め込む。準備を済ましておいてくれ」
四人は決行の日に備え、
残酷な運命に歩を進めていることを知らずに……
女神の剣 枝間 響 @kakako
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。女神の剣の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます