第6話 家政夫がやってきた

 御子柴くんが買ってくれた激レアパンを食べて私のお腹が膨れた頃、教室に戻ってくる御子柴くんの姿が見えた。


 そういえばいつもお昼いないよね。どこで食べてるんだろ? 誰かと一緒に……っていうのも見たことないし……。

 ちょうど今座ったし、聞いてみようかな?



「ねぇ御子柴くん。いつもどこでお昼食べてるの?」


「…………どこだっていいだろ」


「もしかして……人気の少ない非常階段の影とか?」



 そうだとしたら、まさに影のあるイケメンだよね! 野良犬とか小鳥にご飯とか上げてたらもう完璧っ! ママの持ってた漫画本にも描いてあったし♪

 って今どきそんな事する人いないよね……。


 あ、そうだ!



「これ、あげるね。私、御子柴君がくれたパンでもうお腹いっぱいになっちゃって、自分で買ったの食べれなかったんだ。良かったら……だけど」



 私は他の人に聞かれないように小声で聞いてみる。こっちを向いてくれたからちゃんと聞こえたんだと思うけど、なんでそんなにビックリしたような顔なんだろ?



「……ほどこしだと? もしかして気付いてるのか?」



 ぅん? 喉越しがキツイのかって? う〜ん……確かに生焼けメロンパンの方は中々飲みにくいかもしれない。けどパンは食べるもので飲むものじゃないもんね。私はお茶で流し込んだけど。



「大丈夫だよ? 私はちゃんと飲み込んだし」


「そうか……。自分の胸に飲み込んでくれたか……助かる」


「ん?………うん」



 よくわかんないけど、とりあえず返事しといた方がいいよね。でも御子柴くん、なんでそんなに辛そうな顔してるんだろ? 実は甘いの苦手とか?

 それだったら悪いことしちゃったかも……。けど、そんなに見た目ほど甘くないってこと教えてあげないと!



「そんなに……甘くないよ?」


「なっ!? まだ俺から搾り取るってこ──」



 御子柴くんが何かを言いかけた瞬間、予鈴が鳴ってその後の言葉は掻き消えた。小声で話してたせいもあって、全然聞こえなくなっちゃった。


 結局、その後は放課後まで会話する機会もないまま時間は過ぎて、最後のチャイムと同時に御子柴くんは教室を飛び出して行ってしまった。

 明日はもっとお話できるかなぁ?



 ◇◇◇



 学校の帰りに特に寄るところ無く、まっすぐ玄関変わりの家に帰る。


 何もない張りぼてみたいな家。最近ちょっとホコリが目立ってきたかも? そろそろ清掃お願いしないといけないかも?


 あっ! この際、家政婦さんとか雇ってみるのもいいかな? ただ玄関として使うのももったいないし。

 帰ったらパパとママに聞いてみよっと♪



 ◇◇◇



 そしてその週の日曜日。

 私は玄関用の家のリビングで今日からここで働く人を待ってるの。

 この前帰ってすぐに家政婦の事を言ったら、OKが出て求人も出してくれたみたい。

 金曜日にママが面接して、即採用だったんだって。

 どんな人が来るんだろ〜な〜?


 ~~♪


 あっ! きたっ!



「はぁ〜い」



 私は玄関の扉を開けた。



「初めまして。失礼します。本日からここで家政夫として働かせて頂く御子柴────え?」



「え? 御子柴くん!?」



 そこには大きな荷物を持った御子柴君がいた。


 ど〜ゆ〜こと!?

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御子柴くんは今日も私に脅される。~家政夫を雇ったら、来たのはクラスで一番のイケメンでした~ 泉田 悠莉 @kujiayuu

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