透明と少女

風に揺れるセーラー服の襟。紺色のソックス。膝丈の細かいプリーツスカート。

君はまるで夏の風だった。その華奢な肩が真っ青な空に透ける。田んぼしかない田舎道で君は、はめ込み処理を施したように浮き上がって見える。

細くて白い手首も、紺色から少しだけ覗く膝小僧も、履き古したローファーも、鞄につけた可愛くないぬいぐるみも。

深く深く息を吐き出す。深く深く初夏を吸い込む。

干からびた蛙たち。蝉の声はまだ聞こえない。

やわらかな暑さに喉をやられて、僕たちはバス停の隅に置かれた自動販売機で桃色の水を買う。

顎へと流れていく汗。コバルトブルーの風が君の黒髪をさらさらと撫でていく。その汗に、その髪に、僕はまだ触れられない。

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この教室の中で 雪平 蒼 @tayu_tau

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