五~七
五 下山おもや
「おもや、待って! 止まっておもや!」
「止まらない、止まらないから!」
「でも、でもおもや!」
「行くの、行かなきゃダメなの!」
「わだちが!!」
「無事だもん!!」
「だけどぉ!」
「絶対無事だもん!!」
私は走る。すすぐを、すすぐの乗った車椅子を押して全力で走る。もどりたい、いますぐもどってわだちの無事を確認したい。そう思わない訳じゃない。そう思わない訳がない。だけど私は、行かなきゃいけない。だってわだちが、わだち自身が道を作ってくれたのだから。わだち自身が、私達を助けてくれたのだから――。
「ぐぉっ!?」
登山者の放った銃弾は、私達の誰にも当たらなかった。それが放たれるその瞬間、わだちが登山者に向かって体当たりをしたから。バランスを崩した登山者は踏ん張ることができず、勾配の急な脇道の側へと身体を傾けた。そして、転げていくその直前――わだちの足をつかみ、わだちを巻き添えにして転げていった。
「※※※※※※!!」
怒声。聞き取ることの出来ない言葉の。次いで響く、何発もの銃声。銃声に遅れて聞こえた――わだちの悲鳴。覗き込んだその場所からわだちの姿は見えず、見えたのは転げたその場所を登り直そうとする登山者と、その手に携えた拳銃。それから、私達を睨むその血走った、目。
殺意。
逃げなきゃ。そう思った。逃げなきゃ、逃げなきゃ、守らなきゃ。私がすすぐを、守らなきゃ。嫌な想像は、次から次へと浮かんできた。追いつかれること、すすぐのこと、わだちの安否。耳に残る、わだちの悲鳴。その声が、否応なく想像させる。最悪の事態を。でも、それを見たわけじゃない。わだちが……酷い目に遭ったって、確定した訳じゃない。だったらきっと、最悪なのは留まることだ。
だから私は、山を“登った”。すすぐを押して、すすぐの乗る車椅子を押して、ばくばく破裂しそうな心臓を抑え込んで、山を登った。降りるにはもう、遠い。おそらくきっと、途中で追いつかれる。登った方が早い。登れば、あそこへ行けば――。
そこには必ず、彼がいる。
彼がすすぐを、助けてくれる。
だから私は登る。すすぐを押して、登る、登る。
そして――。
見えた!
見えた、確かに見えた。目的地であるあの場所が、視界に捉えられた。まだ距離はある。距離はあるけれども、けれども弱気を吐き続ける身体に力は漲った。あそこだ。あそこまで辿り着けば、なんとかなるんだ。さっきの登山者の気配は、まだない。大丈夫、行ける。このままのペースで走り続ければ、そうすればきっと――。
私は目的地を、自分の目線よりも上にあるその場所を見上げていた。だから自分の周囲がどのような状態であるかも、足元がどうなっているかにも気を払っていなかった。だから、足元でその音が鳴った時、反応するのに、遅れた。
あ――と、思った。思った時には、手遅れだった。草木の枯れた、裸の地面。ひび割れた神様の背中。乾いた土。ここは、あの……子犬のわだちが、落下しかけた――。瞬間、訪れる、浮遊感。風景が、ずれる。傾く。足元が、ちょうど、私達の居たところを中心に、こそげて――。
おもや。
傾いた風景が、また急激に、回転した。衝撃を受けた。目の前から。押された。押されて、私は、地面に足を、着けた。
すすぐが、私を、突き飛ばしていた。
私を、突き飛ばした、すすぐが、空中に、投げ出されて――。
「すすぐ!!」
身体が勝手に動いた。寝そべって、腕を伸ばした。つかみそこねた。むちゃくちゃに指を動かした。つかんだ。つかんだ。すすぐの手を、つかんだ。がくんと、身体が落ちそうになる。肩が外れそうになる。踏ん張る。腹ばいの状態で、踏ん張る。
視界の中では、すすぐの車椅子が崖にぶつかり大きく跳ね、ひしゃげたままに落下するのが見えた。落ちて、けれど地面に激突した音は、いつまで経っても聞こえてこなかった。
「放しておもや。おもやまで落ちちゃうよ」
ぶらぶらと、宙空ですすぐが揺れる。私の寝そべる地面からは、焦りを誘発する嫌な音が聞こえてくる。すすぐが、もう一度言った。放してと。さっきまで以上に、心臓が破裂しそうだった。でも私は、その手を放す気なんて微塵もなかった。
「……私、死のうと思ってたんだ」
全身、痛かった。
「お母さんが死んだのは自分のせいだと思って私、死のうと思ったの。死ぬために月山を登ったの。一人じゃさみしいからわだちを連れて、わだちと一緒に死のうとしたの。だけど――」
肩から先は、その痛みすらなかった。
「だけど私、あなたに会った」
握っている感触が、なくなっていた。
「あなたに会って、あなたに憧れて、わだちと山を降りられたの。あなたを神様だと思って、神様の言葉を支えにして、生きていこうって思えたの!」
しかも聞こえた、足音。
「私が生きているのはすすぐ、あなたのおかげ。あなたと会えたから、私は生きてる……生きてこれた!」
つば広の、帽子。
「だから私、あなたを放さない! 放したくない! 私は私を否定したくない! だって私は、私は――」
「私はすすぐの、友達だもん!!」
「……覚えてる」
関節の外れる音。地面が軋む音。迫り来る足の音。
「覚えてる……覚えてる! 私、覚えてる、覚えてるよ! 私、私おもやに――」
いやだ、いやだ。放したくない、別れたくない、失いたくない。私すすぐを、失いたくない。お願い、お願いです、お願いします、助けて――。
「生きてていいって、おもやに言った! 私、そう言った! 生きてていいって! 生きてて! それで、それで……それで私――」
「あなたと“約束”、したんだ!!」
神様――!
「うぐぁ!?」
悲鳴。男性の。視界の端で捉えた、落ちていく、何か。落ちていく、崖沿いに、登山者の被っていた帽子と、それからあれは拳銃と――指? あの登山者が、手を抑えていた。抑えたそこから、止めどもない血が溢れ出ていた。その登山者の周りを、四足の獣が取り囲んでいた。低い唸り声を上げ、鼻に皺を寄せて牙を剥き出しにした、獣の群れ。わだちに似て、けれど迫力か、野生か、決定的に異なる空気をまとったその一群。
犬、いや――おお、かみ?
「架国は――――」
登山者が、何事かつぶやいた。細い眉の間に彫られた赤い花弁の入墨を、皺の裡に潰しながら。歪んだ花弁が、軌跡を描く。赤い残滓を線にして、登山者は森の方へと逃げていく。狼たちは、後を追わなかった。飛び出しかけた個体もいたけれど、群れの中心にいた一回り大きなその狼が一声吠えると、踏みとどまった。力強い、声だった。それは不思議で、また、どこか神秘的な光景に思えた。
「……え?」
視界が、またもやずれた。後ろから、引っ張られていた。え? と、思い、振り返った。数匹の狼が私の服を咥えて、後方へ引っ張っていた。私は彼らにされるがまま引っ張られ、私と手をつないだすすぐも一緒に引きずりあげられた。最後にえいと、彼らが一斉に私たちを引っ張った。すごい勢いで地面と擦れて、砂埃が上がった。砂埃が晴れた後、私たちがさっきまでいた地面が、ごっそりとなくなっているのが見えた。
「あ、あの……ありが、とう?」
言葉が通じるのか疑問に思いつつ、お礼を述べる。そのお礼を言われた狼たちは大きな鼻を近づけて、私の匂いを遠慮なく嗅ぎ始めた。夢中になって匂いを嗅ぐその仕草は、犬のそれとまるで変わりはなかった(そもそも彼らが狼なのだという確信も持てない。双見山にも昔は狼がいたらしいけれど、もうずっと目撃されていないという話だったのだから)。それにしてもこれは、どういう状況なのだろう。彼らが私達を助けてくれたのは確かなのだろうけれど、どうして助けてもらえたのか判らない。だからどうしていいのかも、私には判らない。
「……あなた」
「すすぐ?」
けれどすすぐは違うようだった。すすぐははいはいの要領で、地面の上を移動した。その先には、先程飛び出しかけた一匹を一喝した、あの一回り大きな個体がいた。私はその行動をしばらくぼうっと眺めていたけれど、ふと我に返ってすすぐを止めようと立ち上がった。そんなふうに無防備に近づいていいのか判らず、不安になって。けれどすすぐは私が追いつくよりも先にその一回り大きな個体に手を伸ばした。
「あなたグノ? グノなのね?」
「……グノ?」
グノという言葉に、記憶の片隅が刺激された。聞き覚えのある言葉――名前。確かにその名前は私の人生のどこかで耳にし、“これ以上ないほどしっくりきた”、と思った名前のはずだった。そう、それは確か……三年前の、月山で――月山で?
「グノってまさか……あの、グノ!?」
三人で名前を付けた、あの子犬の? あの、あんなに小さかった? 信じられなかった。でも目の前の大きな狼は確かにすすぐを認め、大きな口から飛び出た幅広な舌ですすぐのほほを舐めていた。狼は、本当にグノらしかった。グノらしい狼は群れの中で一匹、ひつじのような立派な角を生やし……そしてその角の先にはいつかどこかで見た覚えのある、薄黄色のリボンが巻かれていて――。
わう、と、犬の鳴き声が聞こえた。声の聞こえた方へ、反射的に振り向く。二頭の狼――と、その狼たちと共に歩く、四足の動物。ああ、と、胸の裡のすべてが溢れた。
「わだち!」
後ろ足でびっこを引きながら、それでもわだちは私目掛けて駆けてきた。そして飛びついてきた彼女を、私は受け止める。良かった、良かった、わだち、無事で良かった、本当に良かった……。
グノが、遠吠えを上げた。呼応するように、グノの群れのすべての狼が顎を上げて音を揃えた。遠吠えの合唱。双見そのものを震わせるような、私達の心を震わせるような、強い、強い、合唱。
生者の振動。
「――あっ」
狼たちが俊敏な動作で森の奥へ、山の奥へと消えていった。それは、あっという間の出来事だった。あっという間に狼たちは、その場からいなくなってしまった。最後まで遠吠えを続けていたグノはかすれるようにその振動を止めると、角の先のリボンを揺らしながらもあの時と同じように、やっぱり振り返ることなく仲間たちの下まで去って行ってしまった。
後には私とすすぐと、わだちだけが残された。狼の群れがここにいたなんて、まるで信じられないような静けさと共に。
「どうしたの、かな」
すすぐの側にまで寄って私は、彼女に問いかける。
「……帰ったのかも、知れないね」
「帰った?」
グノのいなくなった方角を見つめたまま、彼女は言った。じっと、まだそこに、グノの姿を捉えているかのような目で。
「うん、帰ったの。彼らの生きる、彼らの世界に」
「彼らの世界……」
わだちが、吠えた。
わだちが立ち上がって、びっこを引きながら歩きだした。そのまま数歩進み、それから私たちの方へ向き直ったわだちが、もう一度わんと鳴く。彼女の意図は、すぐに判った。わだちはなおも、私たち二人を先導する気でいるようだった。「わだち」と、すすぐが何かを言いかける。それを私は止めた。止めて、私たちが来るのを待つわだちを見ながら、言った。
「わだちが、そうしたいって言ってる」
でも、と言いかけたすすぐを再び静止する。静止して、私が先に立ち上がった。立ち上がって、彼女に手を差し伸べた。
「すすぐ、私たちも行こう――私たちが生きる、私たちの新しい世界に」
そして、私たちは辿り着いた。あの、“約束”の地へ。“約束”の地で待つ、彼の下へ。
六 下山おもや
『あのね、おもや。ウロは、本当はウロじゃないの』
『私だけが知ってるの。ウロの本当のこと、本当の名前を。ウロはいまはウロだけれど、いつかはきっと、本当の自分を知りたくなる。いつかのその時が来たら、私は彼に思い出させてあげなきゃいけない。私は、そのためにいるの。でもね――』
『私、本当は怖いんだ。置いていかれてしまうんじゃないかって。本当のことを知ったウロは、私なんか忘れて、どこか遠い所へ行っちゃうんじゃないかって。だからね――』
『いつかのその日、私がウロに本当の名前を告げるその時』
『一緒にいてほしいの、あなたにも、この場所に』
『もし私が臆病なままでいたら、その背を押してほしいの。あなたがいま、落ちかけた私を引っ張ってくれたみたいに』
『あなたと……この子にも』
『おもや』
……うん、すすぐ。
真っ先に飛び出していったのは、わだち。後ろ足を引きずりながらも軽快な足取りで、彼の下へと直進した。お尻や胴体や頭やらを、熱心に彼の足へと擦りつけている。そのわだちの頭を、彼が撫でた。腕の先の、包帯にきつく縛られたその部位で。手は、なかった。彼の手の先は棒のように真っ直ぐで、膨らみも、枝分かれしているはずの部分も存在していなかった。その若干短くなった腕を器用に動かしながら、彼はわだちを撫でていた。
どんどんどんどん、太鼓が響く、双見が響く。縫い直した跡のくっきりとした赤いマフラー。三年前よりも伸びた後ろ髪。後ろ髪が、振動に揺れる。双見の熱に、祭りに浮上した熱気に揺れる。
「すすぐ」
祭り囃子が聞こえる。神輿を担いだ人たちの、息を揃えた声が聞こえる。グノの遠吠えのように。重ねた生を証明するように。自らの生を証明するために。そうだ、この人も――。
「助けてくれるか」
すすぐはここまで、自分の足で歩いてきた。私の肩こそ借りたものの、自分の意思でここまで来た。私だってそうだ。私だって、わだちだってそうだ。私たちは、自分の意思でここまで来た。色んな偶然が重なって、でも、最後に決定したのは私だ。私が、果たしたいんだ。
彼女と私の――“約束”を。
「あの時ひどいこと言って……ごめんねっ」
背中を押す。軽く。ほんのちょっとだけ。それで、充分だから。
すすぐはもう、自分で歩けるのだから。
覚束ない足取り。それが初めてのことであるかのように、不安そうに、恐れるように。でも、足は、地面を踏む。踏みしめて、蹴り出す。蹴り出して、いける。いける。
すすぐは、いま、生きている。
彼と彼女の“約束”のため。
彼女自身の願いのため。
太陽に向けて駆けた彼女は。
駆けて、駆けて、駆けて――。
生きて、生きて、生きて――――。
そしてすすぐは、彼の名を――――――――――――――――
七 下山おもや
かつて神様であった彼女は神様として死ぬのではなく、人として生きることを選びました。私はそれで、よかったのだと思います。ううん、それがうれしいと、私は思います。もちろん、人として生きることは大変です。世の中は不安を呼び起こす出来事で一杯だし、不安に苛まれながら自分を見つめるのは苦しい。いやになります。
くれはさんはラジオで、しるしさんの統治を称賛していました。けれどしるしさんのお陰で双見から問題が一掃されたかと言えば、そんなことはぜんぜんなくて。移民の人たちとの軋轢はいまも根深く残っているし、言葉や文化の違いから生じる小競り合いはしょっちゅう起こっています。以前に比べて貧しくなったとはたぶん誰もが感じているし、三年経ったいまでも黒澤様を懐かしむ声は絶えません。悪どくあろうと豊かでいたい。そう公言する人も、います。
黒澤様の偉大さを感じない日はありません。黒澤様の、双見を守り築いてきた先人の偉大さを。それは私だけでなくきっと、この町に生きる人全員が抱く共通見解だと思います。あの人さえいれば、あの人に導いて欲しい、あの人に委ねたい。心の何処かではそう、誰もが思ってるって。だけど、黒澤様はもういない。どんなに祈っても、どんなに願っても、帰ってくることは、ない。
死んだ人は、もどってこない。
不安になる要因は、たくさんあります。幸運にも目覚めたすすぐと違い、いまも眠り続けている『白影』だった人たち。その家族。双見のことだけでなく、この北東ヤ国や、八百人全体、それに世界のことも含めて。未来を恐れるだけの“情報”は幾らでも目に入ってきて。双見が、八百人が、世界がいつまでもあるなんて保証もなくて。いつか全部、最悪の形でなくなってしまうかもしれなくて。私たちが生きた痕跡も、心も、想いも全部、なにもかもなくなって、無意味なものになってしまうかもしれなくて。そしてそれは、ありえないだなんて笑い飛ばせるくらい遠いものじゃなくて。
諦めたり、逃げだしたくなるだけの理由は、幾らでも思い浮かびます。本当に、幾らでも。それでも――それでも彼女は選んだんです。“死ぬこと”でも、“死なないこと”でもなく、“生きること”を。
廻り、なぞり、重なり弾け、また廻る。
双見に伝わる詩。死者と神様と、それらをつなぐ巨大な輪廻の仕組みのお話。
けれど私は、もしかしたらそれだけじゃないのかもと思うようになりました。この短い一節に込められた意味はただ死者と、死者と分かたれた生者を慰めるためだけに詠われたものではないんじゃないかと、そう思うようになりました。
私達は、憧れます。人の中に、空想の中に理想を見つけて、その理想に憧れます。神様を造って。神様に憧れて。神様みたいになろうとする。けれど私たちはどこまでいっても現実的な人間で、どうあがいたって理想そのものの神様になることなんてできなくて。挫折して、自分を嫌いになって、罵倒して、痛めつけて――死にたくなって。
それは、とても苦しくて。死が救いと思えるくらいに苦しくて。例えそのまま終わることを選ぼうと、責めることなんかできないくらいに苦しくて。それはきっと――世界が終わるのと同じことで。
でも、弾けた世界は、また廻るんです。
理想の終わりは、あなたの終わりと同じじゃないんです。
私達は、憧れます。人の中に、空想の中に理想を見つけて、その理想に憧れます。神様を造って。神様に憧れて。神様みたいになろうとする。それを、繰り返す。挫折と憧れを、繰り返す。苦しくても、逃げ出しそうになっても、少しでも自分を理想へ近づけるために。
自分を愛しいと、思えるようになるために。
それは、新しい世界へ飛び込むことと同じなんじゃないかって。
未知と、不安と――けれど可能性に満ちた、新しい世界へ飛び込むことと。
そうした輪廻を繰り返すことが、生の中での輪廻こそが。
その繰り返しこそが、たぶんそれが、生きるということなんじゃないかって。
廻り、なぞり、重なり弾け、また廻る。
この詩が、何れいなくなる私たちみんなに授けられた慰めと癒やしの言葉であることは間違いないと思います。だけど、きっと、それだけじゃないんです。それだけじゃ、ない。これはきっと、願いの詩。生きた私たちを励まし、勇気づけ、その前進を願うための詩。
祈りと一体化した誰か〈過去〉より送られた、これから〈未来〉に直面する私たち〈いま〉への願い――。
私は生きます。
生きたいと思うから、生きます。
一人ではないから。
この不安と苦しみに満ちた世界を生きているのが私だけではないって、知っているから。
至らなさを受け入れた彼女を。
大人を探して旅する彼女を。
神様でなくなった彼女を、私は知っているから。
自分を生きようとする彼女たちのことを、知っているから。
例え手が届かなくとも、理想の途上で力尽きたとしても、その時まで、私は生きるんです。
弱くて不完全で、けれど逞しく愛おしい友人たちと共に。私は生きていきます、私達は生きていくんです――――。
この――日の色につながる空の下で!
日色の空 ものがな @m_hiragana
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