第十五話 オムライスと身分証明書

「おはようお兄ちゃん。 遅かったね」

「おはよう」


 昨日はいろいろ考えてしまい、なかなか眠りにつくことが出来なかった。

 とりあえず、顔でも洗いに行こうと洗面台に向かおうとしたとき、ピロンとLI○Eの通知音がした。見てみると、送り主は冬美だった。


「どしたの? お兄ちゃん」

「先に行ってるって」

「そっか。 なんか心配だね」

「あぁ」


 あんずには伝えなかったが、L○NEの内容にはまだ続きがあった。


『渡したいものがあるから、廃ビルの所まで

来て』


 俺はそのメッセージに『了解』と返し、出かける準備をするためにいそいそと二階に上った。

 着替えて再び降りて、素早く外に出る。あんずは気づかなかったのか、いつものように追いかけてくるようなことはなかった。


「……何で廃ビルなんだろう」


 冬美の家からも俺の家からも少し離れているし、廃ビルのある通りは薄暗く、あまり人が通らない場所だ。怖がりの冬美はあまり近づかないようにしてる様子だったのに。

 などと、走りながら考えていると、廃ビルが見えてきた。相変わらずでかいな。


「おはよう」

「あ、おはよ、綾人くん」


 冬美は右手にビニール袋を提げている。これはもしや、


「昨日はごめんね。 これ、お詫びの朝食」

「ありがとう。 こっちこそごめんな。 無理させちゃって」

「ううん、大丈夫。 それと、これなんだけど」


 そう言って差し出してきたのは、二枚の小さなカード。

 これは、身分証?いつの間にとったんだか知らないけど、俺とあんずの顔写真もあるし、隅には番号みたいなものもある。俺のはNO,683125、あんずはNO,683126とある。


「これは?」

「電脳部隊の身分証明書だって」

「そうか」


 いろいろ疑問は残るが、とりあえずカードを受け取る。

 これなくしたら、ものすごくヤバいことになりそう。


「じゃあまた、集合場所で」

「うん。 ありがとっ!」


 突然元気になってパタパタと走り去っていく冬美。

 何で急に元気になったのか気になるけど、まぁいいっか。

 家に帰ってあんずと一緒に冬美からもらったものを食べる。中身は俺の大好きなオムライスだった。


「おー、アツアツだねぇ~」

「うるせぇ」


 俺のものにはケチャップで『YouLove』と書いてあった。

 めっちゃ恥ずかしい。


「そう言うあんずは何が書いてあるんだ?」

「恋○先生って書いてあった。 あたしと冬美さんは恋の○生のファン仲間だからねっ!

うらやましいでしょ~」

「いや、別に」

「ひどいっ!」


 ぷくっと頬を膨らますあんずを見て、心が癒やされる。小動物みたいで可愛い。

 まぁ、冬美の方が、何倍も可愛いけどな

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『電脳部隊』×『半ゾンビ』≒『暗黒狂団』 川沢 樟 @kawasawakusunoki

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