最後の言葉

 ショウタはアカネの友人にお礼を伝えて、大学をあとにした。外は明るくなり始めていた。


 一時間ほど歩いて海の見える丘へ向かった。二人でよく来た場所だ。展望台に到着したとき、ちょうど太陽が水平線から顔を出した。


(あいつ、本当に・・・・・・)

 彼女の最後の言葉を思い出していた。『ゴメン』、『アリガトウ』、『アイシテル』の十三文字。ショウタが伝えたかった言葉を全て含んでいた。ユーモアと気遣いが彼女らしいと思った。


「久しぶり来た。いい眺めだな」

 声に出して言った。


 朝焼けの中、携帯電話を取り出して彼女にメッセージを送った。

—海の見える丘に来ました

—今度、一緒に来ましょう!

—今まで、ありがとう

—いつまでも、愛してます


 ポンと着信音がなった。アカネの携帯電話だ。カバンから取り出して確認した。ショウタのメッセージがそのまま表示されているだけだった。

「確かに伝えたよ」

 そう呟いて彼女の携帯電話の電源を切った。

 そして、二度と立ち上げることはなかった。

 

 朝焼けが水面にまぶしく反射し、彼を強く照らした。

 頬を伝う涙が、日の光で蒸発するようだった。


 しばらくして、彼は改めて携帯電話を取り出して上司にメッセージを送った。

—今日までお休みをいただきます 明日から出勤します!



 マインドコピーは彼女の 『忘れもの』 だった。それは彼の 『探しもの』 になった。見つかるはずのないその探しものは遂に見つかった。


 ショウタは狂ったように探し続けていた昨日までの自分とは、少し違う自分になれた気がしていた。

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十三文字だけ、伝えたい【完結】 松本タケル @matu3980454

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