婚約者が好きすぎて空回り中の王子の話

もあん

王子、少女に…

「で、殿下…そ、そちらに座らせていただいてもよろしいでしょうか!」

「ん、いいよ?おいで?」


私はそう言ってソファの真ん中から少し動き彼女が隣に来るように動き、彼女…ソフィア・グリーングラスが向かいのソファから立ち上がりこちらに向かって歩いてくる。

頬を赤らめて涙目上目遣い、かわいい婚約者にこんなこと言われたら断れるわけが無い。

そそとこちらに動いて来て私が座っているソファに「失礼致します」と言いながら腰をかけた。

ソファの端に。

なんとも、距離を感じる…

でもソフィアは自分なりに積極的な行動をとったのが恥ずかしいのか頬を赤くして軽く俯き、露草色の大きな瞳をキョロキョロとし、体は強ばり少し震えている。


「っ!で、ででで、でで殿下!」

「どうかした?」


ソフィアの方にぐっと寄り、左手を背中から細い腰に回すと顔だけでなく耳や首までぼんっ!と真っ赤にしてあわあわしたと思ったら、キッとこっちを睨みつけるように見るが顔が赤いからか、涙目だからなのかまったくもって怖くない…と言うよりかわいい。

ちょっと、いや…かなーり加虐心を煽られた。

将来自分が閨でなにかしでかさないか少し(ほんとに少しだけ)心配である。まぁそんな(バレたら少し困る)心配や下心は微塵も表に出さず笑顔でこれがどうかしましたか?なにかおかしなことあったかな?というような笑顔を向ける。

ソフィアは"え、私が間違ってるますの?!"というように目をぱちぱちとしている。かわいい。


「ち、近いかと…」

「そっか」

「ひゃっ!」


様々な感情の中で羞恥が勝ったのかもじもじとした様子で距離を指摘してくるが適当な返事を返しながら、かわいい婚約者をぎゅっと抱きしめる。

悲鳴のようなものが聞こえるが嫌悪などは読み取れないため気にせず抱きしめ続ける。

柔らかな身体、あたたかい体温を堪能するように抱きしめ続ける。

すると恐る恐るというように身体は弛緩ゆき、瞳は羞恥やら戸惑い、緊張が伺えていたが少しずつ安心したかのようにとろんとしていき、口元にはへにゃりとした笑みが浮かんでいる。


……。


「え?」


離れた、いや離した。

抱きしめてソフィアから腕を離してソファから立ち上がりちょっと壁際まで歩いた。

寂しそうな声色を出されて私の中の欲が増したのは言うまでもない。

いっそ壁に頭を打ちつけようかと思ったがそれをすると怒られるのはソフィアだからできない。

ふー、落ち着け、わかってるわかってる。ソフィアにそんな気は無い。

あー…自分で考えてちょっと落ち込んだけど…

私も彼女ももう18なんだからソフィアはもう少し警戒して?なんで普通に2人きり了承してるの?扉も閉めちゃってるし、しかも分かってる?隣の部屋ベット置いてあること。

続き部屋だよねこれ?ソフィアさん自分の家なんだからさすがに知ってるよね?私だって知ってるんだがら。そもそもそうセットしてるって夫人が教えてきたしさ…

あの侯爵夫婦なに娘の貞操散らさせようとしてるの?大事にしてるのは知ってるけど私に対しての評価おかしくない?なんで「他の奴には娘を渡すぐらいなら……殿下に、くっ…さっさと貰ってもらった方が…」とか言ってたのにさ。

多分先導は夫人なんだろうけど!母上と結託して昔っから私たち見てにやにやしてるの知ってるし!

はぁー、いや私だって押し倒したいとか思うし、ソフィアの唇を貪りたいとか思ってるけど…


自分勝手な欲望に負けた感が半端ない…


したくないわけが無い。けど…了承なしにはできない。

ソフィアが私のことを好いてくれてるのは知ってるけどそれは果たして異性としてなのか…

まで分かるわけが無い!

正直、彼女からの想いは親愛が強いと感じている。

だから嫉妬を感じればすごい嬉しい。

でもやはりまともに意識されてる気がしない。

なんでだろうって思う。

いや、理由はわかってるんだけどさ…

まず2人きりになっているというのに隣に来ちゃうとか、押し倒されるとか考えないの?考えないんだろうなぁ…

距離とってるから意識されてるんじゃないかとか思ったよ、腰に手を回したりすれば顔真っ赤にするしさ…

それなのに抱きしめられたら普通に安心した、信頼してるって表情するんだよ?無理、裏切れない、手出せないってそんな表情されたら…

そもそもそんな安心してますって表情のソフィアに男の欲のある目を向けて怖がられたら心が折れる。

嫌悪的な感情ぶつけられたら…ゔっ…

いやさ、その時にある感情が恥じらいとか期待とかで"いや…"とか"だめ…"とか言われたら…あー、うん。自分を止められる気がしない。

けどまずそこまでできる気がしない。ヘタレと言われても怖いものは怖い。


「殿下どうしたんですか?」

「ちょっと自分の汚れ具合を確認してただけだがら気にしないで」

「??殿下は汚れてなんていませんし綺麗ですよ?」

「うん、そういう汚れてじゃない。ソフィアは分からなくていいことだよ」


笑顔を向けて返すけどやっぱ眩しいなぁ。

この感じだと私のこと男だと意識してないんじゃないかなぁ。

分かって欲しいけど分からないくていい。なんなんだこの矛盾。

や、まぁ、どうせなら自分の手で…って思わなくもないけど。


「私がソフィアのこと女性として好きって言ったら信じてくれる?」

「え?……え?」


なんなんだろうこの反応…どっちだ?

私結構攻めたつもりなんだよ。これでも。

保険かけたけど、かけなきゃ言えないとも言う。

それでも心臓バクバクいってるけど、こんな宙ぶらりんの状態、生殺しというかの状態を3年…いやそういった感情を彼女に対して感じるのは6年は超えてる…

と言うよりいつ理性が切れるかそろそろ怖い。

好きが爆発しそう。

何するか分からなくて怖い。

恋愛感情なら物心ついた時から持ってから…好きだとずっと言い続けてた。

まぁ、女性としてとか異性として、恋愛的な意味で、とかは付けたことないんだけど。


「っ!」

「え、ぁ…その…」


私空回りすぎだったのかもしれない。

確信はない。

でもソフィアの表情から読み取れる感情はもちろん驚きとか戸惑いが大きいけど…

嬉しそうで…

あー。これいい加減にちゃんと言わなきゃいけないやつだ。


「ソフィア」

「ふぇ!は、はい!」

「私はあなたの事を1人の女性として好きです。愛しています」

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