テイマーとして異世界転生した飼育員はワニチートでスローライフを送りたい

第41話 野営

レオンナンドが野営の準備を進める中、

バルシュは静かに馬車から降り、オレに向かって話しかけた。

「ダイ、レオンナンドの戦闘を見て何か感じたか？」

オレは素直に感想を伝えた。

「はい、正直驚きました。あんなに強いなんて…。自分も、もっと魔力の使い方を学ばなきゃと感じました。」

バルシュは穏やかな表情で頷き頭をなでながら

「焦らなくてもいい。魔力の扱いは経験と鍛錬が全てだ。

お前には時間があるし、ゴロウとの絆もある。少しずつ、確実に力を磨けば良いのだ。」

魔力コントロールがうまくいかず焦っていたオレは

バルシュのその言葉に励まされた。

オレ一人じゃないんだ。

オレにはゴロウもいて

レオンナンドが教えてくれて

バルシュや家族が見守ってくれている。

少しずつでも前に進もうと改めて思った。

野営の準備が整い、火が暖かく燃え始めた頃

オレはゴロウと一緒に火のそばで腰を下ろした。

ゴロウは興奮気味に尻尾を揺らしていた。

「ダイ、レオンナンドすごかったね。僕も戦いたくなった―」

オレはその言葉に苦笑しながらも、少し驚いた。

ゴロウは普段、猫のようにのんびりとしていて、寝てばかりの存在だが、

その中には元ワニで、今はドラゴンとしての強大な力が秘められている。

彼の中にある闘争本能が目覚めたのかもしれない。

「ゴロウも戦いたいんだな…。今まであまりゴロウの戦闘力を知らなかったけど、

今後の旅のためにも一度君の力を試してみた方がいいかもしれないね。

父様に話して、どこか安全な場所で君の力を試せる機会を作ってもらおう。」

夜が深まり、星が森の上に輝き始めた。

レオンナンドがシルバーウルフの解体を終え、

今はバルシュと共に明日の予定について話している。

「レオンナンド。明日は王都に向かって進むが、

道中にはまだ不確定な危険が潜んでいる。

だが、ゴロウの力を隠し通しながら、できるだけ目立たずに進めるようにしよう。」

レオンナンドは真剣に頷いて答えた。

「承知しました。引き続き、慎重に行動します。」

オレはその会話を聞いて、意を決して二人の間に割って入った。

「父様、レオンナンドさん、明日は目立つ行動をしないことが重要だと分かっています。

ですが、もし明日また魔物と戦闘になったら、ゴロウに任せても良いでしょうか？」

二人がオレの言葉に耳を傾ける中、オレはさらに続けた。

「今まではゴロウの気配を感じて襲ってこなかった魔物が、

今日みたいに襲ってくるようになったってことは、

魔物の危険度も上がっているのだと思います。

ゴロウの力を知っておく必要があると感じています。」

ゴロウの存在を周囲に知られないようにすることが大前提ではあるが、

もし王都への道中でさらに強力な魔物に出会った場合、

ゴロウの力を発揮してもらわなければならない。

そのため、オレはゴロウの力を実際に見ておくべきだと考えた。

バルシュはしばらく考え込むように口を閉ざしていたが、やがてゆっくりと口を開いた。

「ダイ、お前の言うことも一理ある。

確かに、これから旅が進むにつれて魔物の強さも増してくるだろう。

ゴロウの力を正確に把握しておくことは重要だ。」

オレは父の言葉に力を込めて頷いた。

バルシュは、オレの決意を感じ取ったのか、少し微笑んで続けた。

「だが、あくまで慎重に進めなければならない。

次に魔物と遭遇した時、ゴロウが戦うのを許可するが、その際も最大限、周囲に気を配るんだぞ。」

「はい、父様。ありがとうございます！」

レオンナンドもその場で軽く頷き、オレの提案に同意してくれた。

「ダイ様、ゴロウ殿の力を実際に確かめることは賢明かもしれません。

ただ、魔物との戦闘の際は私が周囲に魔物以外の気配はないかを確認し、

ゴロウ殿の安全を確保します。」

オレは彼の言葉に感謝しながら、ゴロウと共に明日の戦いに備えることを決意した。

「レオンナンドさん、ありがとうございます。ゴロウも頼りにしています。」

ゴロウは得意げな表情で、尻尾をピンと立てた。

「任せて、ダイ！僕もちゃんと戦えるよ！」

その夜、オレはテントの中で、ゴロウと共に未来の戦いについて考えていた。

明日、もしまた魔物と遭遇したら今度はゴロウがその力を見せる時だ。

ゴロウの力がどれほどのものなのか、それをオレ自身の目で確かめたい。