第4話

世の中に、足、腰、膝の悪い人は結構多いのである。お婆はどのお客にも言う事だが、そのお客にも「私を頼って来て下さるのは有難い事ですが、私はこの通りのただの婆でございます。大層な力を持っている訳ではございません。ですが、この婆の手、数珠で少しでも気持ちが楽になったり体が楽になったと思っていただけるように一生懸命やってみましょう。それで宜しいですか?」と断りを入れる。

ナミとて自分にそのような力が真実あるとは今も思っていない。

だがナミが思いの限り念じて念じて治療してやると誰もが嘘のように楽になったと喜んで帰って行くのだった。

その年配の女の人も我慢に我慢を重ねて来たのだが、お婆の噂を聞いて藁にも縋る思いで来たと言うのであった。

お婆はその人の膝や足や腰を手で優しく撫でさすった後、数珠をあてて口の中でお婆特有のお経をブツブツ唱えた。その間中、観音様に一心にお願いした。

それが終わると女の人に、静かに立ち上がって貰った。

女の人は嬉しそうに、大変楽になりましたと喜んだ。

だがお婆は、「これはいっときの気休めのようなものかも知れません。家に帰りましたら薬草を細かくしそれを潰してそれをどろどろにしたもので膝を包みなさい。決して冷やさぬようにする事をお勧めします。」と言って、とうがらしやよもぎ等の薬草の種類を教えた。

女の人は大変喜んで自分は清谷村のヤマサという家の者で、酒、醤油、味噌を扱っている家の女房ですと言った。

「最初にお座布団を出して下さったのはお孫さんですか?痛みに紛れて嬢ちゃんに“ありがとう”と言いませんでしたが感心なお子さんですネ。いくつにおなりですか?七歳?それなら同じ年頃ですネ。我が家にも二人の孫がいて七歳と九歳になります。手習いを教えたり行儀作法を教える方に来て頂いているのですが、遊びたいのが先でどうも身が入りません。」と言う。

お婆は、「この子もそういう年頃ですのでどこぞに通わせたいのですが、このように人里離れた場所におりますので簡単に習い事をさせてやる事も出来ずに悩んでおります。」とお婆は正直に言った。

するとその女の人は、私の家は部屋数も多く嬢ちゃん一人預かるのに手伝いの若い女子衆もいますから何の問題もありません。我が家に嬢ちゃんを預かって一緒に手習いや行儀作法を習わしてはいかがでしょうか?二人も三人も一緒ですから。」と言ってくれた。

ナミは心が動いた。

まだ幼い小波だが、同じ年頃の女の子と一緒に生活してみるのは良い事だと思った。

すぐに小波を呼び、隣の茶店のサワにも来て貰ってその話をした。

サワも年取った大人達しか知らない小波にとって同じ年頃の子と遊ぶ事は大事な事だと賛成した。

そして、「小波、このおばさんの家では小波と同じくらいのお嬢ちゃんが二人いらっしゃるんだって。小波はそこに遊びに行ってみたい?」と聞いた。

小波は少し考えてからコクリと頷いた。

女の人が、「おばさんと一緒に行きましょうネ。」と言うと、またコクリと頷いた。

サワもナミも小波をこのままではいけないと思っていたので、これがその糸口になるのではないかと思いきった。

二人は急いで小波の着替えを何枚か用意した。女の人の乗って来た荷馬車を待たせてあるので、それと一緒に小波を連れて行って貰う事にしたのだ。

ナミは荷馬車が出発するとき、「この子は駄々をこねるような子ではありませんが、元気がなかったり帰りたいと泣いたりしたらお手数ですが送り返していただけますか?」と頼んで一緒に連れて行って貰った。

あんまりにも突然な事で小波を送り出した後は急に家の中が淋しくなった。

猫のおカネさんも元気がなく淋し気な目をして一カ所に黙ってうずくまっている。

ナミもサワも淋しくって淋しくって仕方がない。あの小さな小波がどんなにこの家の光だったか。年寄りの自分達を明るく照らし温めてくれていたかがしみじみ解った。

だが、これは小波の為なのだ。

小波はこの場所しか知らない。

世間も女の子の遊びも全く知らない。

おしゃべり相手は年取った婆二人と猫のおカネさんだけ。これは小波にとっては良い事ではない。二人はそう思って淋しさに耐えた。

二日経ち、一週間経ち、半月経っても小波は帰って来ない。

ナミもサワもどうしたんだろう?と気が気じゃない。小波は向こうの家があまりにも楽しくなって帰りたくなくなったのじゃないだろうかと気をもんだ。

そしてとうとう一ヶ月が過ぎてしまった。

と思った次の日、

小波は荷馬車に揺られてあのおかみさんと一緒にしかも元気いっぱいで帰って来た。

「どうだった?楽しかった?」と聞くと、

「うん、楽しかった。いろんな事をしたの。お友達も出来た。」と嬉しそうに話した。

その様子におかみさんは笑いながら、自分の孫達ともすぐ仲良くなって楽しく遊んだり手習いをした事。小波ちゃんが真剣に手習いをするので自分の孫達も影響を受けて真面目に手習いをしてかえって良かった事。

小波ちゃんは賢くて受け答えもお辞儀もきちんとしているので、お師匠さんも感心していた事など笑いながら話してくれた。

「帰りたいと淋しそうにしていませんでしたか?」と聞くと、

「いいえ、ただ時々、今頃はお婆やサワ婆や猫のおカネさんが淋しがっているとこちらを心配していましたヨ。だから帰らなきゃいけないって…。」

おかみさんもお婆もそこで二人は笑ってしまった。それからはおかみさんが月に二回程の割合で膝の調子を見て貰いに来るのでその時に連れて行き、また次の半月後に連れ帰って貰う事にした。

つまり小波は月の半分を自分の家で暮らし、もう半分を向こうで友達と遊んだり手習い等の勉強をするという事である。それを暫らくお願いするという事で話を決めた。

ヤマサのおかみの膝は大層調子が良く喜んでくれた。

小波は手習いの道具や手本を抱えて帰って来た。こっちでも練習するのだという。

同じ年頃の女の子達と一緒に過ごした事がさぞ嬉しかったのだろう。自分の家に帰って眠る寝顔は大変満足そうな顔をしている。

猫のおカネさんは待っていたように小波の傍にぴったりついて離れない。

それもナミとサワの二人は笑いながら見ているのだった。

この一ヶ月でこの小波の存在が自分達にとって何と大きくかけがいのない存在か。ナミとサワはしみじみ思い知らされた。

小波は二人にとって夢であり希望であり、残り少ない命のいわば支えのようなものだった。

小波がいるからこそ夢も見れる。小波がいるからこそ明るい朝を迎える事が出来るのだ。

それから小波は月の半分半分を家と清谷村を行ったり来たり過ごすようになった。

小波のいない半月は淋しかったけれど、あと幾日で小波が帰って来ると指折り数える楽しみもまた格別のものだった。

小波は帰って来ると故郷に帰って来た喜びと二人のお婆と猫のおカネさんに会えた喜びを体いっぱいに表して甘える。

それでいて清谷村へ行く時もそれはそれで二人の遊び友達と会えるのが楽しみなようであった。

ナミはヤマサのおかみさんに小波を預かっていただく食費をのべたが、おかみさんは「お婆婆様にこの膝を治していただいて本当に感謝しております。そのお返しを小波ちゃんで少しでも出来るのならこちらこそ嬉しい限りです。うちの孫達も小波ちゃんが来てくれてからはそれをとても喜んでいるのです。小波ちゃんが里帰りしていなくなると、家の中はガランとして孫達だけでなく私共まであと何日でまた小波ちゃんが来ると指折り数えて楽しみに待っているくらいです。どうか気になさらずに親戚に預けると思って下さい。私も嬉しいのです。」

そう言ってくれるので甘える事にした。




ナミとサワはいつか毎朝、夜が明けるか明けない時刻に浜辺を歩くのが習慣になっていた。

まだお日様の出ないヒンヤリした砂浜は妙に鮮やかに昔を思い出させてくれる。

苦労ばっかりで大した楽しみもなかったように思えた娘時代もこうしてのんびり波打ち際を歩きながら二人で思い出せば、小さな可愛い思い出がいくらでも蘇って来るのだった。

時が経つと時間という水に洗われてみんな楽しく見えるものなのかも知れない。

それは今が十分幸せだからかも知れないが、二人は娘時代に帰ったようにコロコロ笑い合いながら浜に打ち寄せられる物を拾うのが楽しい習慣になっていた。

鮑を拾い、身を食べた後は貝殻をきれいに洗って貯めておくのも楽しみの一つであった。

細工師の弥吉がまた、そろそろ訪ねて来る時節でもあったからだ。

弥吉はあれから女房を貰い子も出来たという。

ナミの集める貝殻のせいだけでなく仕事の腕がいいのだろう。あれから何年経つだろう。

今では若い弟子を三人使っているという。

弥吉は自分がそういう立場になっても必ず年に一度はナミの所に顔を出す律儀な男だった。そして来るときは必ず自分の造った物を土産に持って来るのだった。

その裏や底には必ず“ふじ”と名を入れてあった。

この事を知っているのは、ナミとサワと弥吉の三人だけだった。

最初に小箱、次に櫛、その次に手鏡、その次は物を乗せるのももったいないような小ぶりのお盆。

あまりに美しい立派な作品に恐れ多くて申し訳なく思ったが、弥吉の真心をナミは有難く頂戴した。

その日もナミとサワは浜を歩きながら、そろそろ弥吉さんが見える頃だと話し合っていた。すると申し合わせたように弥吉がひょっこり顔を出した。

ナミは嬉しくて隣の茶店のサワにも来て貰って弥吉を温かくもてなした。

弥吉は親方らしい風格を見につけていた。

この頃では弟子達の腕も上がってきているので助かると言って、最近では大きな物を手掛けていると言った。

ナミとサワが用意してある貝殻を持って来て弥吉に差し出すと、弥吉は嬉しそうに顔をほころばせて「全てお婆婆様達のこの貝のお蔭です。今日はこのような物を持って来ました。」と言って立派なお椀二個と箸二膳を出した。

「お二人に使っていただこうと思いまして。」と言う。

二人は見事にキラキラ光るそのお椀と箸を手に取って飽かず眺めた。

こんな上等な物を頂けるなんて。死ぬ前にこんな豪華なお椀とお箸で頂けるなんて夢のようだと何度も何度もお礼を言って頂いた。

また来年、何か持って来ますという弥吉にナミは、

「フジの形見の物は十分に頂きました。そしてこの度も私達二人にこんな豪華なお土産を頂いてかえって心苦しい程です。これからはこのような気を遣わないで下さい。貝殻は私達婆が死ぬ迄集めますが、お土産の品はもう十分頂きましたのでお断りします。本当にありがとうございました。」と丁寧に断りを入れた。

弥吉は笑いながら帰って行った。

きっと忙しい身なのだろうに、親方自らがここまで出向いて来てくれて。

「弟子をよこせば済む事なのに律儀な人だネー。」

帰って行く後姿を見送りながらサワが言った。

その晩、二人はその螺鈿の七色に光り輝くお椀とお箸でおしるこをこさえて食べた。

甘いおしるこも美味しいが、キラキラ光るお箸で上品に餅を口に運びながら、私達まるで天子様の奥方か母上様にでもなったみたいだネ。こんな上等な物には誰でもがお目にかかれないからネ。本当に生きてて良かったネと言い合った。

食べ終わってきれいに洗い傷が付かないように布にくるんで仕舞う時サワが、

「私はもう十分、上等な気分を味わったヨ。ナミさん、これもフジの形見の一つにしようヨ。」と言った。

「そうかい?サワさんがそう言ってくれるならそうしよう。」

フジのキラキラ光る美しい形見がまた増えた。

次の年には若い弟子が二人やって来た。

親方が大名屋敷の姫様のお輿入れのお道具作りで忙しく代わりに来たと言う。

弟子の一人が大きな物を背負って来た。

「親方がくれぐれも宜しくと言っておりました。本当は自分で届けたいのだが申し訳ない。これを是非受け取って欲しいと言っていました。」

何重にも布でくるまれたその物は、御大家の姫様が輿入れに使うような段々のお道具箱だった。これは親方が弟子にはいっさい手を触れさせないで暇を見つけては作った物ですと弟子の一人が言った。

本当に立派な物だ。

ナミは驚いて声が出なかった。

後ろには“ふじ”と彫ってある。

ナミはこのお道具箱から立ち昇る美しい娘のフジの姿を確かに見たような気がした。

いつか小波がこれに自分の母親の姿を思い描く事だろう。

これはやがて小波の宝になるだろう。

「親方にはお礼の言葉もないくらい感謝していますと伝えて下さい。」

ナミは弟子の二人にありったけの貝殻を背負わせた上、茶店のサワにダンゴや大福をどっさり作って貰い二人の弟子に持たせて帰した。



月日はいつの間にか流れ、赤ん坊だった小波もスクスク成長し、ナミやサワが思った通りいやそれ以上に美しい娘に成長していった。

時々小波は聞く。

「お婆、私のお父様、お母様ってどんな人だったの?」

お婆は言う。

「小波のお父様には会った事がないんだヨ。だけどフジが好きになったんだ。それは立派な人だと思うヨ。小波、あんたのお母さんのフジはネ。それはそれはきれいだったヨ。母親の私から見ても見飽きない程きれいだった。小波はだだんだんフジに似て来たネ。フジが戻って来たような気がするヨ。」と言うと、小波はサワから貰った赤い小さな手鏡を覗き込んで自分の顔をしげしげと見る。

「どうして早く死んでしまったんだろう。ヤマサのおば様のように生きていてくれたらいいのに。会いたかったナー。」と独り言のように言った。

小波は淋しそうだ。きっと清谷村の二人の嬢ちゃんの母親を見て羨ましくなる事があるのだろう。

ナミは堪らずに、「小波、お母さんに会いたいのかい?お母さんは戻っては来ないけれど、小波が大きくなって年頃になったら渡そうと思ってとってあるフジの形見があるんだヨ。お前ももう十二才だ。まだ少し早いとは思うけれど見せてあげよう。」

ナミは奥から大切に仕舞ってあった大きな箱を持って来て蓋を取った。

中には白い布で何重にも大事にくるまれた螺鈿の一式が入っている。

物想う年頃になった小波は母に会いたいのだ。

母が恋しいのだ。母親の存在を感じたいのだ。ナミは静かに一つ一つ布をはいでその形見の品々を小波の前に置いて行った。

目の前に現れた螺鈿の輝く品々を目にして小波は胸に手を当てたまま何も言わずそれを見ている。まるでそこから立ち昇る母を見るように目を凝らしている。

「これがお母様の形見?」

「そうだヨ。これがフジのものだヨ。手に取って後ろや底を見てごらん。」

と言われて、小波は恐る恐るこの宝物を手に取って裏や底を見た。

見ると確かにつややかな黒漆に赤い字で“ふじ”と彫られている。

「何てきれいなの!」小波は感激している。

「ああ、フジはこの品々に相応しい美しい娘だったヨ。心も顔に負けずきれいだったヨ。お婆の宝物だったんだヨ。でもネ、それを全部小波が受け継いでいるんだヨ。フジが今生きていたらニッコリ笑ってお前にこれを見せただろうヨ。小波、母親がいないお前は不憫だが会いたくなったら鏡の中の自分を見るんだヨ。お前は驚く程だんだんフジに似て来た。それでも淋しかったらこの形見を見て母親を想うんだ。この品々の中にフジはいるからネ。そして母さんに相談したり話したい事があったらお墓の前に行って話しかけてごらん。きっとフジはいつでもお前を見守っていてくれるからネ。」

ナミはそう言いながらも目頭が熱くなった。

小波は形見の一つ一つを手に取り名前を確かめ、そっと撫でさすりながら、いつまでもいつまでもそこにいた。

ナミは小波を一人にしてその場を立った。


それからまた、一年程したある日、

いつものように小波は清谷村から帰って来た。そして近々、ヤマサの嬢様達がここに遊びに来るという。

上の姉娘もそろそろ年頃なので縁談もいくつかあるという。

大きく商売をしているので婿をとるらしい。もうそういう年頃になったのだ。

嫁入り前に一度、小波の故郷に遊びに来たいと言うのだった。

ナミもサワも喜んで精一杯のもてなしをしようと大忙しになった。

どんな嬢ちゃん達だろう。

小波と仲良くしてくれた人達だもの。きっと性格のいい嬢ちゃん達に違いない。

その三日後、荷馬車に揺られて二人の華やかなお客様がやって来た。

小波は喜んで喜んでつい三日前まで一緒だったのにまるで何年ぶりかに再会したようなはしゃぎぶりだった。ナミもサワも笑いながら出迎えた。

「上のお姉さまがハルさん、下の私と同い年のお友達がナツさん。」と小波は紹介した。

二人共、色白でおっとしりた娘さん達で、やはり膝の治療に来る祖母のヤマサのおかみによく似ている。

ハルとナツの二人の娘は手荷物を置くか置かないかに浜に行きたいと言う。

小波がいつも話して聞かせていたのだろう。

三人の若い娘達はキャーキャー声を出しながら浜へ出掛けて行った。

その様子を見ながら二人のナミとサワのお婆は、「私達にもあんな若い日はあったんだよネ。」

「そうだネ。あんなに呑気じゃなかったけれど、確かに若い日はあったヨ。」と言って笑い合った。

ハルとナツはハルの嫁入り前の大切な思い出作りのように一週間程、小波の家で過ごした。

毎日飽きもせず砂浜に降りて行って楽しそうに過ごした。

帰りにはいつもフジの墓に三人で手を合わせているようであった。

明日は二人が帰るという晩、小波が、

「お婆、ハルさんとナツさんにお母さんの形見を見せていい?」と言う。

「ああ、いいヨ。」と言って出して来て小波に預けた。

ナミはその場を離れて隣の部屋にいたら、

「ワー、きれい。何てステキなんでしょう。」という声が聞こえた。

「あっ、ほんとお母様のお名前が彫ってある。きっと素敵なお母様だったんでしょうネ。」

「こんな素敵なお道具箱なんですもの。小波さん、お母様はあなたに似た方だったんでしょう?小波さんはきれいだからお母様はきっときっとこのお道具箱のように美しい方だったんでしょうネ。」

そんな声が聞こえた。

それを聞きながらナミはまた目頭が熱くなり、それがあふれて来て仕様がなかった。

小波、そうだヨ。本当だヨ。お前のお母さんはきっと観音様に違いないんだからと心の中で思った。

やがて二人の嬢様達は満足して帰って行った。

これを機に向こう様も婿取りで大忙しになる訳だし、婿さんが入って来たら以前のようにはいかなくなるだろうし。

何と言っても皆、もう子供ではなく立派な娘に成長した。小波も以前のように清谷村に行って長く泊まる事はなくなった。

その代わり、下の妹娘のナツとは手紙を書いてやり取りをしているようだった。


小波はナミの手伝いをしながらも隣の茶店が忙しい時には一人前の助けとなって手伝いをした。

絣の着物に赤いたすきと前掛けのいでたちの小波は誰からも振り返って見られる娘になっていた。

サワはある日ナミに一大決心の相談をした。

「私達もう六十六歳だよネ。」とサワは言った。

「あれまあ、そうなるかネ。」とナミは言った。

「そうだヨ。私達同い年だからネ。世間ではもう死んでもおかしくない年頃だ。だけど私達二人共、こうしてピンピン生きている。ナミさんは人様のお役に立っているし、私は茶店で大忙しだ。小波ももう十六だ。すっかり美しい娘になった。」

ナミはそう言われて改めて考えた。

「そう言われればそうだネー。」

五十歳になるかならぬかで老婆のようになってここにやっと辿り着いたあの頃から十六年も経ったのだ。あっという間の十六年だった。あの時は本当に自分はあといくらも生きられぬと思って、どうせ死ぬなら海を見て死のうとここに来たのに何とあれから長く生きた事だろう。だが十六年も経ったのにあの頃と自分は少しも変っていないような気がする。むしろ体の調子はあの頃よりずっといい。ナミがのほほんとそんなことを考えていると、

サワの「私はネ。ここで思い切ってここにデンと大きな旅館を建てようと思うんだヨ。」という声が飛び込んで来た。

「えっ?」とサワの顔を見ると、

「大きな立派な旅館だヨ。」と言ってサワはニヤリと笑った。

「お金の事は心配いらないヨ。儲けたんだヨ、かなりネ。」と言ってまたニヤリと笑った。

「二人の女衆にはきちんと十分な給金を払ってるヨ。あこぎな商売をして来た訳でもない。だけどいつの間にかこんなに銭が貯まってしまったんだ。それで二・三年前から考えてはいたんだけどネ。ナミさんも私も今の所は大丈夫。だけどいつかは足腰が立たなくなる。私達丈夫と言ってもお化けじゃないからネ。そうなる前に思い切って建てようと思うんだヨ。どうせなら小波の先々の事を考えてデンとした大きな物をネ。」とサワは言った。

それを聞いているうちにナミの胸の中からムクムクやる気が湧いて来て立ちあがると奥から金箱を持って来た。

毎年、年の暮れにはまとまったものを村に寄付して来たが、それでも十六年間の間にはいつの間にかかなりの金が貯まっていた。

ナミに否やはなかった。

その金箱をサワの前に押し出すと、「全て頭のいいサワさんに任せるヨ!」と言った。

「アイヨ!」とサワが言った。

二人のお婆は五つも十も若返った気持ちで行動に移った。

というよりサワは凄かった。

長い間に茶店で顔見知りの増えた人脈を使い、すぐ旅館作りに取り掛かったのだ。

何人かの棟梁に渡りをつけその人達と話し合い、その中から信用出来ると思う頭に全てを任せ、費用も相談し、これだけの予算で部屋数いくつのがっちりした旅館が出来るかどうか全て任せるからやって欲しいと言ったのだ。

それに答えてサワの見込んだ通り、その頭はきっぷのいい男だった。

見込まれた頭は方々に手分けし声を掛け、材木屋大工達を集めた。

いろんな人達が方々から入れ代わり立ち代わり現れ、それに伴い家の前も増々賑わって来た。

そういう中で、あれヨあれヨという間に基礎ができ、あれヨあれヨという間に上棟式になった。上棟式には村の人達もお祝いに来た。

サワはこの時とばかりに人手を増やして料理を作り酒を振舞った。

今まで関わった大工達、またこれから関わる大工達、多勢の男達が集まって料理を食べながら酒を呑みかわして賑やかな酒盛りが続いた。ナミもサワもお婆達はお客になっていたが、手伝いに頼んだ女房達に混じって小波もきりりとたすき掛けで客達の間を縫って立ち働いた。

男達は誰もがこの美しい娘が二人のお婆達の孫と聞いて、「ホー、ヘー。」と驚き眺めた。

皆、誰もが旨い酒に酔った頃、「小波ちゃん。」と声を掛ける者がいた。

小波が振り向くと若い大工が小波を見て笑っている。

「俺の事覚えてる?」と聞くが小波には解らない。

「お婆婆様と小波ちゃんに足を治して貰った三郎だヨ。小波ちゃんは小さくて覚えていないかも知れないけど俺ははっきり覚えているヨ。」とまた笑った。

思い出した。思い出した。小波は思い出した。

あの時、三郎がいなくなってどんなに淋しかったか。小波はすっかり思い出した。

だけどあの時の子供の三郎と目の前の三郎は全く別人に見える。

目の前のその人は背が高く日に焼けて凛々しい若者だ。

「本当に三郎にいちゃん?」小波が聞くと、

「そうだヨ。あの三郎だヨ。」と言ってまた白い歯を見せて笑った。

小波は思わず頬を赤くした。

それを隠すようにお婆達二人がいる所に走って行くと二人に三郎の事を話した。

その様子を見て三郎は立ち上がり、お婆達の所にやって来て会釈をした。

「あの時の三郎ちゃんだって?」とナミが聞くと、

「はい、三郎です。あの時は本当にありがとうございました。」と言う。

ナミが思わず足に目をやると、

「この通りすっかり治りました。今では何ともありません。これもお婆婆様と小波ちゃんのお蔭です。」と言って深く頭を下げた。

ナミは背のスラリと高い立派な若者を見上げて、「大工さんになったんだネ。すっかり立派になって。どうか宜しくお願いしますヨ。」と言った。

サワ婆も三郎をシゲシゲと見上げ、「嫁さんいるのかい?」と聞いた。すると三郎は、

「いやいやまだ駆け出しで嫁さんなんて。」と頭を掻いて小波の方をチラリと見た。

小波はその目にぶつかるとまたパッと赤くなって俯いた。

猫のカネさんも三郎の事を覚えているのかどうか知れないが品定めするように三郎をじっと見ていた。

それからも旅館の工事は着々と進んで行った。三郎は朝来ると必ずお婆達の所に挨拶に来て、小波とも二言三言話してから仕事に取り掛かった。

だから毎日、三郎と小波は旅館が出来上がるまで会う事になった。

二人の様子を見て二人のお婆は話し合った。

サワが「あの三郎はいい若者だネ。」

「性格も良さそうだネ。」

「ああ、昔からいい子だヨ。」

「小波も様子を見ていると気に入っているようだ。」

「そうだネ。嫌いじゃない。むしろ好きなようだ。」

「どうだネ。小波の婿にいいじゃないか。」

「私もそう考えていたんだヨ。親もいい人達だしネ。」

二人のお婆の心は一致した。

いずれ小波には旅館が出来上がったら、どこかの性格の良い頼りになる若者を婿にと思っていたのだが、思わぬ所で再会した二人はまるで前々から約束でも交わしていたかのように心が通じ合っているように見える。

小波ももうじき十七歳になる。立派に一人前の女になった。

旅館は二階建ての客室が二十もある立派なものだ。

旅館の名前は“ふじ屋”に決めた。

富士屋や藤屋かと小波も入れて相談したが、小波がひらがなのふじ屋がいいと言った。

それでひらがなの母親の名と同じ“ふじ屋”に決まった。もちろんナミにもサワにも異存はなかった。

旅館は大きくどっしりした立派なものだった。

もうそろそろ完成も近いある日、朝、挨拶に来た三郎を呼び止めてお婆は言った。

「三郎、お婆は三郎のお父とお母にお願いしたい事があるんだヨ。近いうちにお婆がお願いしに行くからと伝えておいておくれ。」と言うと、

三郎は何だろうという顔をしたが、やがて俯いて頬を染めている小波を見て自分もポッと赤くなった。

お婆は旅館が出来上がって一段落したら荷馬車に乗って行こうと思っていたのだが、やがて旅館が完成して賑わっている所に三郎の父親と母親が訪ねて来た。

「三郎からお婆婆様が私らに何か頼み事があって来るという。本当に三郎はお婆婆様のお蔭で健康な丈夫な体になる事が出来ました。この御恩は決して忘れません。今日は三郎もこの旅館を建てるのに参加させていただいて、こう言っては笑われるかも知れませんが息子のいわば晴れの仕事を夫婦して見に行こうと出かけて参りました。お婆婆様、私達に出来る事は何でもします。どうぞ何なりとおっしゃって下さい。」

二人共、純朴ないい人達だ。この夫婦の息子なら間違いない。

ナミは正直に、三郎を小波の婿に欲しいと頼んだ。

夫婦は一瞬びっくりしお互い顔を見合わせた。

ナミは、「この話はまだ三郎さんにも小波にもしておりません。二人の様子を見ているとお互い憎からず思っているように見えるが三郎さんの気持ちがどうだか解りません。私達お婆二人は孫の小波に婿を取りいずれ若い夫婦にこの旅館を継いで貰いたいと思ってこの旅館を建てました。三郎さんは大工をして立派な腕を持っているし婿になるのは嫌だと言うかも知れません。この話は壊れても若い二人の傷にならないようにまず親同士の間で話し合いたいと思ったもので、そういう事ですから二人にはまだ話してません。家に帰って三郎さんと話し合って三郎さんの気持ちを確かめてから返事をして下さい。本当は私が何度もお前様方の家に出向いて頭を下げて、お願いしなければならない話ですが、この通り年寄りなもので失礼な形になってしまいました。申し訳ありません。今、小波にお茶を持って来させますので小波を見てやって下さい。」と言って、お婆は深く頭を下げた。

やがて小波がお茶を持って来た。

「小波、三郎さんのお父さん、お母さんだヨ。」

小波は恥ずかしそうに、「小波です。どうぞ宜しくお願いします。」と言うと静かに下がった。

その可憐で美しい小波を見ると、夫婦は呆気に取られて黙って見続けた。

二人はボーッとしながら三郎に話してから返事をすると言って帰って行った。

明くる日三郎が一人でやって来た。

旅館をあけて早々の事であちこちに案内を出した所からお祝いに来る人、物珍しく泊まりに来る客等で賑わっている中、小波に話があると言う。

呼び出された小波は緊張した顔をしていた。二人は黙って砂浜に降りて行った。

あの幼い頃、二人して貝殻を拾って遊んだ懐かしい砂浜だ。

三郎は小波の気持ちが知りたかったのだ。

お婆二人に認められていると両親からは聞いたが、肝心の小波が本当に自分の事を気に入っているのか確かめたかったのだ。

何せ十三年ぶりに見た小波はあまりにも美しく成長して三郎の目には眩しい程だった。

毎朝、お婆の所に挨拶に行って小波に会うのが楽しみだった。

この仕事は自分の腕を磨くいい機会になったが、それよりも小波に会うのが楽しく励みになった。正直、旅館が完成したらこうして小波に会えなくなると思うと三郎は淋しかったのだ。そんな時に両親からお婆の頼みを聞き、正直嬉しかった。もしや?という気持ちもあったがまさか俺なんかという気持ちもあった。

二人は砂浜を歩きながら心を確かめ合った。もちろん小波の心も三郎と同じだった。

もう三郎さんと毎日会えなくなると思うと幼い頃のあの別れの淋しさを思い出し、今はもっと苦しい辛い思いの淋しさを感じていたという。二人の気持ちは一緒だった。

三郎は小波の気持ちを確かめるとお婆達の所へ行った。

三郎はナミとサワの二人のお婆に「お婆婆様、お父、お母から話を聞きました。俺のような者を小波ちゃんの婿にと見込んで下さり本当に有難く思います。俺で良かったら小波ちゃんとお婆婆様達の力になって頑張りたいと思います。どうぞ宜しくお願いします。」と言った。

それで決まった。

忙しい最中だったが、善は急げと二人の婚礼はすぐに村の衆を招いて新しい旅館で盛大に行われた。

小波と三郎はいずれ旅館の主となるが、今暫くはサワの指導のもとに動き出した。

サワはそれは見事なものだった。

いつの間に根回ししたのか、方々から仲居の経験のある者や、板場の人間も腕のいい人柄のいい者を集めていた。

サワはその物達に三郎、小波夫婦をこの家の主人だと紹介し、若い夫婦を盛り立てて行って欲しいと皆に頼んだ。

サワはさすがに人を見る目は一級だとナミは感心してしまった。どの人間も気働きの出来る利口者揃いだったからだ。


このように若い夫婦も交えて旅館ふじ屋は漕ぎ出した。

大きな旅館がデンと建つと周りにいろんな店が集まって来た。

うどん屋、そば屋、寿司屋、みやげ物屋、履き物屋。小間物屋。等々

我も我もと店が両の道揃いに出来、人も集まり賑やかになって行く。

ずっと山を越えた所にある古い山寺への道も“ふじ屋”の向かい辺りから登って行けるように道が出来た。

そうなるとお参りの人々も集まるようになった。

これら全部、サワは見越していたのだろうか?

「大した人だヨ、サワさんは。」

今ではのんびりお茶を飲んでいる隣のサワを見てナミは感心する。

あれから更に十年月日が流れた。

ナミとサワは七十六歳になった。

旅館も茶店もみんな三郎と小波に任せて二人は自由の身になった。

ナミへの相談事も以前のように無理をしない事にし、名医と評判の医者に声を掛けて近くに来て貰った。

三郎と小波には五人の子が生まれた。

女、女、男、男、女の五人だがどの子も元気で可愛い。お婆二人はあんまり年をとっているので、三郎の両親が来て子供達の面倒を見てくれている。

小波は二十七歳になり三郎は三十歳になった。

二人は夫婦仲が良く、特に三郎の心の中には自分を励まし足を治してくれた幼い日の小波への感謝の気持ちが根付いている。

不思議な事に猫のおカネさんもまだ生きている。これも観音様がお遣わしになった猫なのだろうかとナミはそう思ったりする。

「私達いつ死んでもいい年だよネ。」

ナミとサワとおカネさんは三人になるといつもそう話して笑う。

何だか猫のおカネさんも笑っているように見える。

ネコもこんなに長生きすると笑うようになるのだろうか。

「三人一緒に死にたいネー。」

「そうだネー。」

「ツルルルルー。」

「そして、フジの墓に一緒に入れて貰うんだー。」

「いいネー、海の見える墓、最高だネー。」

「ツルルルー。」

「ああこの世に生まれて来て良かったヨ。」

「本当だ、本当だ。」

「いい人生だったネー。」

「ああ、本当にいい人生だった。」

「こんなに沢山、冥土のみやげ話が出来るとは思わなかったヨ。」

「そうだネー。」

「ツルルルルー。」

そんな事を話しながら二人と一匹は海に向かって日向ぼっこをしていたのだ。

その時「あれっ?あの海の向こうに見える島は何だろうネ。」とサワが言った。

ナミはじっと目を凝らす。日頃は霞のかかった目だが、水平線に確かに水色の島が見える。

「サワさん!あれが西国浄土なんだヨ、きっと。話には聞くが実は私も今まで見た事がなかったんだヨ。きっとあれが西国浄土なんだヨ。ああ、有難い。この目で見る事が出来るなんて。」とナミが興奮して叫んだ。

「そうかい、そうかい。あれが西国浄土かい。どんな所だろうネ。」

「この浜にもたまに見た事もないきれいな貝が流されてくるから、きっとそれはそれはきれいな所だろうサ。」

「行ってみたいネ。」

「ああ、私達は死んだらきっとあそこに向かうんだろうサ。」

「ああ、なかなか見る事の出来ないものを見れたって事は私達そろそろお迎えも近いかも知れないヨ。」

「いいヨ、いいヨ。いつお迎えが来てもいいヨ。もう思い残す事はないネ。」

「私もだヨ。」

猫のおカネさんも二人を代わる代わる見上げて、「ツルルルー。」と鳴いた。

二人と一匹は海と砂浜に向かって毎日語り合うのだった。


その日も天気の良い日だった。

空も海も青く砂浜に打ち寄せる波も緩やかで気持ちの良い昼だった。

もうじきお昼なので小波はいつもの所にお婆二人を呼びに行った。

浜と海を見渡せる高台のそこでいつものように海を眺めているお婆達の後姿があった。

二人肩と頭をつけて仲良しそうで小波は笑った。

「もうお昼ですから帰りなさったらいかがですか?」後ろから小波は声を掛けた。

だがいつもはニッコリ振り返る筈の二人は振り返らない。

あんまり気持ちがいいから眠っているのだろうか?

側に行ってまた声を掛けたがやはり眠ったままだ。

小波は笑いながら、「眠ってらっしゃるんですか?」と肩に手をかけた。

そして思わず息を呑んだ。

二人は実際眠るようにして亡くなっていた。

小波の体を悲しみが襲った。

「おカネさんお婆達が死んでしまったヨ。」

だが悲しい時はいつも慰めてくれる筈のおカネさんがいない。

小波は泣きながらおカネさんを呼んだ。

「おカネさーん。おカネさーん。」

だがいつも小波が呼ぶとどこからかツルルルーと現れるおカネさんも姿を消したままだった。

小波は大切なお婆達をいっぺんに失って泣きながらおカネさんを探し歩いたが、やはりおカネさんの姿はどこにもなかった。

ただお婆とサワ婆の間に挟まれるように白い小さなひるきが一個落ちていた。

波で幾日も幾日ももまれ、すっかり白く軽くなった小さなひるき。

だけどよく見るとそれは何だか子猫の形にも見えるような気がするのだった。

小波はそのひるきを拾ってそっと匂いを嗅いでみた。

懐かしいおカネさんのあの陽だまりの匂いがした。

これはきっとおカネさんだ!動物は死んだら人間とは一緒の墓に入れない。

だからおカネさんはひるきに姿を変えたんだネ。

小波は長い間、自分の傍にいてお婆達と一緒に自分を育ててくれた、あのおカネさんの事を思ってまた泣いた。

悲しくて悲しくていつまでも泣いた。

そしておカネさんはお母さんだったのかも知れない。死んだお母さんが猫に姿を変えて来てくれたのかも知れないと思った。


二人の小さなお婆はやがて一つの棺桶の中に仲良く納まった。

小波はその中に猫の形をしたひるきをそっと入れた。

その棺桶はフジの墓に無事納まった。

きっと今頃は三人一緒に居れて幸せだろうネ。

いっぺんに皆いなくなって淋しいけれど、今では小波には優しい夫と五人の子供達がいる。

それに忙しい旅館の仕事が待っている。

時には海を見て思い出して泣くかも知れないが、この悲しみはじき幸せな思い出に変わるだろう。

「お婆、サワ婆、おカネさん!ありがとう!本当に本当にありがとう!」と小波は叫んだ。

その時、深紅の夕焼けの空に二人と一匹が沈む夕日を目指して飛んで行くのが見えたような気がした。


おわり

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冥土のみやげ やまの かなた @genno-tei70

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