第96話 帰還勇者の負け惜しみ
「修平くんって異世界でどんな感じだったの?」
「まさに勇者の中の勇者でしたね。もう最強です」
「へぇ、そんなに強かったんだ」
「教団の文献に残る歴代の名のある勇者と比べても、桁違いなレベルで圧倒的に強すぎることから、『絶対不敗の最強勇者』『女神アテナイの再来』と言われるほどだったんですよ」
かつての俺を語るリエナはどこか誇らしげだ。
「ふわぁ、本当にすごかったんだね。あ、そう言えば『絶対不敗の最強勇者』って呼び名に聞き覚えがあるかも。たしか文化祭の時に修平くんがポロっとそんなことを言ってたような?」
「あれ、意外ですね? 謙虚な勇者様がご自分の活躍を自慢するだなんて」
「い、いや、ちょっとな……そんなことより――」
俺はあまり触れたくない文化祭の話題から話を逸らそうとしたんだけど。
「あ、でもでも? 文化祭といえば、わたしミニ〇駆レースで修平くんに勝ったよね? しかも3連勝」
「えっ、まさか勇者様、負けたんですか?」
誇らしげな表情が一転、リエナがひどく驚いた顔を見せた。
「ま、まぁ……ちょっとな……いろいろあって……でもあれは遊びだったからノーカンだよノーカン」
そうは言いながらも、俺はあの時のまさかの敗北を思い出してしまい唇を噛んでしまう。
「そっかそっかぁ。だからあの時の修平くんは、妙に勝ち負けにこだわってたんだね。納得だし」
最後に腑に落ちたって顔をするハスミン。
1つの話題に俺たちはまさに三者三様の反応を示していた。
「まぁな……『オーフェルマウス』じゃ絶対に勝たないといけない状況でずっと戦ってたから、こっちの世界に帰ってきてからも勝つことにこだわっちゃったんだと思う」
「ふんふん、そういうことね」
「でも文化祭にハスミンに負けたおかげで、体育祭の時は勝ち負けよりもお祭り感を楽しもうって思えたんだ。だからあれはあれで俺にとってはいい経験だったんだよ。俺はあの時負けたおかげでやっと、負けることが許されない勇者っていう肩の荷を下ろすことができたんだから」
「あの、勇者様。ものすご~~~くいいことを言っていますけど、そんな悔しそうな顔かつ超早口で言ったらただの負け惜しみにしか聞こえませんよ?」
「負け惜しみじゃないもんっ!」
「あ、修平くんが幼児化した」
「わわっ、勇者様がこんな子供っぽい姿を見せるなんていつ以来でしょうか? よっぽど負けたのが悔しかったんですねぇ」
「くっ……! もうこの話はやめだやめ。あまりに非生産的だ。俺は未来志向で行きたい」
「はいはい、そうだね」
「ですねー」
ハスミンとリエナが視線を合わせると、くすくすと笑い出す。
――とまぁそんな感じで、ハスミンとリエナが帰る時間になるまで俺たちは尽きることなく楽しいおしゃべりを続けたのだった。
この先もきっと色んなことがあるだろう。
もしかしたらまた異世界絡みの事件も起こるかもしれない。
それでも俺の隣には最愛のハスミンがいて、リエナだってサポートしてくれるのだ。
なにより俺は異世界『オーフェルマウス』を救った『絶対不敗の最強勇者』なのだから。
だから心配する必要なんて何もない。
魔王カナンのせいでいったん中断してしまった新たな学校生活――リスクールを、俺はまた心行くまで楽しむんだ。
近いところじゃクリスマスや冬休みも控えている。
まだまだ俺のリスクールはこんなもんじゃないからな――!
・隣の席の美少女をナンパから助けたら、なぜかクラス委員を一緒にやることになった件
(旧題)
・『帰還勇者のRe:スクール(学園無双)』 勇者になり異世界を救った陰キャ、鋼メンタル&スキル持ちで地球に帰還し、学校カーストを無双下克上する。「魔王討伐と比べたら学校カーストとかヌルゲー過ぎる……」
(完)
アフターストーリーまでご愛読ありがとうございました。
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また当作品は第7回カクヨムコンテストに参加しています。
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なにとぞ~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
そして本作の外伝となる、
「隣の席の美少女をナンパから助けたら、なぜかクラス委員を一緒にやることになった件」~リエナIf~ 異世界を救って帰還したら聖女がついてきたので、同棲して甘々ラブコメしながら面倒をみようと思います。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859658511860
がスタートしました!
本来は異世界に残り負けヒロインルートをたどるはずのリエナが、最初の段階で着いてきてしまった「もしも」のストーリー。
つまりリエナがヒロインバージョンのリスクールです。
じれじれだった本編とは異なり、甘々同棲ラブコメになっております。
こちらもどうぞよろしくお願いいたします!(ぺこり
【書籍化】隣の席の美少女をナンパから助けたら、なぜかクラス委員を一緒にやることになった件【Web版】 マナシロカナタ🐈ねこたま25年春発売予定 @kanatan37
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