第16話意外なカンジョウ
「やっぱ、寂しいんだ、久代」
「はーあ?寂しかねぇって!アイツにそんなモン抱かねぇよ!」
「強がんなって〜ぇ!ホレホレぇ〜本音をさ〜あ」
浅原の怠い絡みを払うように左手をヒラヒラと振り、否定する。
俺が腐れ縁な奴にそんな感情を抱くわけがない。
フォークにスパゲッティを巻き付け、口に運び咀嚼する彼女は楽しそうだ。
彼女のからかいはタチが悪い。
周囲は俺と浅原の会話には関心がないようで昼食を楽しく摂っている。
「長い間一緒に居んだから、今日みてぇに居ねぇのはせいせいすらぁあ!毎日ダル絡みされりゃあウザっテェもんよ、ソレが居ねぇってのはぁ——」
「佳澄が居ないと?」
三分の一ほど減ったスパゲッティの皿にカチャン、とフォークを置いて、続きを促す彼女。
「——静か、だな……なんてちょっと湿っぽく感じたり、だな……」
「寂しいんじゃないですか。やっぱり……なんだかんだ言っておいて」
「ガラにもないこと言った気が……調子、狂うなぁ。今日は、どうかしてる。どうにかして、浅原」
彼女の返答は判りきっている筈なのに、お冷が注がれたプラスチック製のコップをテーブルに置いたままに掴んだ体勢で、彼女の口もとに視線をむける。
「しませんよ、私。
「そりゃそうだ。はぁー」
生徒でひしめきあう食堂の四人掛けのテーブルを挟んだ彼女に脱力した声でそう返した俺だった。
佳澄の声が校舎内の喧騒に混じってないだけで、こうもざわつくだなんてね。
ははっ、と乾いた自嘲が宙に漂い、食堂の喧騒に掻き消された。
バイト仲間の超絶美少女ではなく、その妹に迫られてる? 闇野ゆかい @kouyann
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