第15話めざとい乙女

「恋愛映画かぁ……」

「恋愛がどうした?佳澄との間が進展でもしたの?」

「え、いやそういう……ってわぁ、びっくりしたぁ!驚かすなよ、浅原」

自然なトーンで訊かれて、つい返しそうになった俺だった。

登校し、所属するクラスの教室へと歩んでいた廊下の真ん中でいつのまにか隣に並び歩いている浅原に驚いた。

「いやぁ〜ごめんごめん。恋愛がどうのこうのって聞こえたからついってやつで。佳澄とじゃなきゃ誰と恋愛に発展したの、久代?」

「発展したなんて、決め付けることなくないか?あっと……恋愛映画を観に行こうって誘われて——」

「佳澄なんじゃないの、それ?でも……佳澄が……そっか、佳澄なわけないか、そういうの……」

訊いてから眉間に皺を作りボソボソと呟いて自身で納得したふうに落ち着く浅原。

「バイトの後輩なんだ……相手」

観念して……浅原に打ち明けることにした。

浅原が噂を流せるような性格たちではないことを理解しているので、潔ぎよく明かした。

「バイトの後輩ねー。ふぅーん……他校の生徒に、ときめいてたり……とか?」

「ときめくまでは……」

「ふぅ〜ん……久代がねぇ〜」

俺が彼女に見つめられていたのを逸らし、言い淀んだ反応で、察せられたらしい。

他人の恋愛コイバナが大好物だよな、第三者らってやつは。

呆れる。


財布の中に収まっている片割れの紙切れ——恋愛映画のペアチケットを脳内に浮かべながら、隣の浅原かのじょに苦笑を浮かべる。

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